小麦・小麦粉に係る基礎知識

小麦・小麦粉商品知識


小麦の特性はさまざま



 5億8千万トンの小麦が世界中で生産されているが、品種や気候風土によって小麦の特性はさまざまである。それぞれの小麦が持つ特性をどう活かしておいしい食べ物にするか、その特性をより使いやすいものに改良するかは、人類が長年取り組んできたテーマであり、今後の大きな課題でもある。


パンに向く小麦,菓子に向く小麦
 小麦には粒が硬い「硬質小麦」と軟らかい「軟質小麦」がある。硬質小麦では粒の内部がち密で,軟質小麦では粗く詰まった状態である。硬質小麦は軟質小麦より蛋白質が多い。
 硬質小麦でも品種や土壌,気象条件によって蛋白質の量に差があり,蛋白質が13%以上でグルテンの力が強く,その粘弾性のバランスが良いものは,食パンを作るのに向いている。硬質小麦でも,蛋白質がやや少なくグルテンもそれほど強くないものは「準硬質小麦」とも呼ばれ,菓子パンやフランスパンなどに加工される。中華めん用粉の製造には蛋白質が多い硬質小麦と少ない硬質小麦の両方が使われる。パスタ用のデュラム小麦も硬質小麦だが,他の小麦よりも粒がさらに硬い。
軟質小麦は一般に蛋白質が少なくグルテンがソフトだが,蛋白質の量は土壌や気象条件によって差がある。グルテンの力が弱い方が好ましい菓子やてんぷら用の粉を作るには,蛋白質が少ない軟質小麦が使われる。国内産小麦のほとんどは軟質小麦だが,軟質小麦としては蛋白質が多めのものが多い。これを「中間質小麦」と呼ぶこともある。

日本めんに向く小麦
 うどんやそうめんなどの日本めん用の小麦としては,蛋白質の量が10〜11%で,でんぷんの性質が良く,冴えたきれいな色のめんになるものが向いている。硬質か軟質かはめんの品質に直接は関係がない。でんぷんを熱と水で糊にした場合の性質がめんの食感を決める。西オーストラリア州産のめん用品種はこのような性質を備えている。国内産小麦も改良が徐々に進み,めんに適したでんぷんを持つ品種も開発されているが,色の点では改良の余地が大きい。

見た目が違う
 外皮に赤または赤褐色の色素を持つ「赤小麦」と,この色素がなくて白っぽい色合いの「白小麦」がある。赤小麦か白小麦かは品種によって決まるが,同じ赤小麦でも生育条件によって蛋白質が多いものは色が濃くなり,蛋白質が少ないと色が薄くて黄色っぽくなる。デュラム小麦は白小麦だが,蛋白質が多いとこはく色に見えるので,銘柄に「アンバー」という単語を付けている国もある。
 小麦粒の形は品種固有の性質なので,これで品種を識別することもできる。粒の大きさや重さには品種と生育条件の両方が影響を与える。粒が大きく,1粒の重量が重いものは製粉歩留りが高い。
 小麦粒をナイフで2つに切断したとき,断面が半透明のものを「硝子質粒」,白っぽく不透明なものを「粉状質粒」という。この差は品種によるところが大きく,硬質小麦が硝子質粒に,軟質小麦が粉状質粒になることが多いが,降雨量が多すぎると硝子質粒になるはずのものが粉状質粒になることがある。一般に硝子質粒は蛋白質が多い。粒を切断しないで外観で大まかに見分けることもできるので,アメリカでは銘柄仕分けに使っている。

栽培時期が違う
 秋に播種して夏に収穫するタイプが「冬小麦」,春に播いて秋に収穫するタイプが「春小麦」である。品種には秋播性と春播性があるが,育種での交配によって中間的な性質の小麦も多くなった。
 春小麦は生育期間が短いので,収量は冬小麦の3分の2くらいである。冬季の寒さが厳しいアメリカの北部,ヨーロッパやロシアの一部,カナダなどを除いて,冬小麦が作られている。アメリカのカリフォルニアやアリゾナ州では,メキシコ原産の春播性品種を冬小麦として栽培しているのが多い。オーストラリアの小麦は冬小麦だが,大部分の品種は春播性である。硬質小麦の場合,一般に春小麦の方が冬小麦より製パン適性が優れており,この差は蛋白質の一つであるグリアジンの性質の違いによる。

野生に近いものもある
 1小穂に稔実する粒数で「一粒系」「二粒系」「普通系」に分けられる。染色体数はこの順に14,28,42で,普通系が最も進化したものである。栽培されている小麦のほとんどは普通系で,その大部分は「普通小麦」または「パン小麦」と呼ばれるものである。同じ普通系の「クラブ小麦」は普通小麦から突然変異で出来たもので,アメリカ北西部,オーストラリア南部などで少量栽培されている。クラブ小麦は軟質の白小麦で,蛋白質が少なくその質もソフトなので,ケーキやクッキー用として評価が高い。
 デュラム小麦は二粒系に属し,「マカロニ小麦」とも呼ばれる。乾燥した気候の土地に適している。粒が非常に硬いので,粉にしないでセモリナ(ざらめ状のもの)を採取して利用している。黄色色素が多く,蛋白質は独特の性質なのでマカロニやスパゲティへの加工適性が高い。


取引は銘柄と等級で
 ほとんどの小麦生産国では取引に便利なように「銘柄」と「等級」を定めている。一定の地域で生産され,品質的な特徴がある範囲に入る品種の小麦に付ける商品名が銘柄である。例えば,「カナダ・ウエスタン・レッド・スプリング小麦」という銘柄は,カナダ西部地区産で品質が一定レベル以上のいくつかの赤色春小麦品種が混ざったものである。
 それをさらに小麦粒の物理的性状,被害の程度,小麦以外のものの混入量などによって,いくつかの等級に分けるか,一定品質基準以上か以下かに仕分けする。
 現在,日本で使われている小麦の銘柄,等級とその性状を表に示した。
(財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)



用途に合わせて小麦粉は作られる



 日本における小麦粉の主な用途は、パン、めん、菓子と家庭用だが,それぞれにいろいろなものがあって、多岐にわたっている。小麦粉は、それぞれの用途が必要とする品質特性を持つように作られているので、業務用では種類が非常に多い。


小麦粉にはいろいろな種類がある
 日本には、小麦粉についての定義や規格はない。小麦を粉砕、ふるい分けして作った、粒度が比較的細かいものが「小麦粉」である。小麦を粉砕、ふるい分けしたものでも、粒度が粗いものは「セモリナ」と呼ばれる。小麦を粉砕しただけで、ふるい分けしてないものは「小麦全粒粉」である。小麦全粒粉はそれの普及に努めたアメリカの医師の名前にちなんで、「グラハム粉」とも呼ばれる。
 小麦粉の品質は複雑なので、数値などでは分類しにくい。しかし、実用的には、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉という種類と、1等粉、2等粉、3等粉、末粉(すえこ)などの等級の組合せで大まかに分類される。「強力1等粉」とか「中力2等粉」のように呼ぶことが多い。




原料小麦の使い分けと組合せから
 小麦粉の用途を必要とするグルテンの力によって大きく4つに分け、それらに対応するように、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉が作られている。強力粉は蛋白質の量が多く、グルテンの力も強い。準強力粉は強力粉に準ずる蛋白質の量とグルテンの力を備えている。薄力粉は蛋白質の量が少なく、グルテンの力も弱い。中力粉は強力粉と薄力粉の中間だが、やや薄力粉寄りである。これらは大きな分類だが、それぞれに分類される小麦粉にも、蛋白質の量やグルテンの性状が微妙に異なるものが数多くある。
 それらの小麦粉を作り出せる品質の原料小麦を選び、単独又は配合して製粉が行われる。小麦は産地や銘柄、等級によって蛋白質の量とその質が異なり、グルテンの力に差がある。アメリカ、カナダ、オーストラリアからグルテンの力が異なる数種類の小麦を輸入し、国内産小麦と共に、用途によって図に示すように使い分けしている。使用する小麦の種類と配合率が、小麦粉の品質を決める。蛋白質の量の目安は、強力粉が11.5〜13.0%、準強力粉が10.5〜12.5%、中力粉は7.5〜10.5%、薄力粉は6.5〜9.0%である。
 食パン用には主としてグルテンの力が強い強力粉が使われるが、菓子パンには準強力粉も使われる。フランスパン用粉のグルテンの力は準強力粉に近いが、小麦の配合に工夫をして本場のものに近づけている。中華めん用は準強力粉である。日本めん用にはグルテンの力が中庸な中力粉が適しており、和菓子の一部にも中力粉は使われる。グルテンの量の少なさと質のソフトさを必要とする多くの菓子や調理用には、薄力粉が向けられる。スパゲティやマカロニなどのパスタには、デュラム小麦からのセモリナが使われる。
 家庭用粉の大部分は料理、クッキー、手打ちうどんなどに幅広く使える薄力粉である。パンや餃子の皮用には、強力粉又はパン用粉がある。ケーキ用には用途が広い薄力粉のほかに、蛋白質の量がより少なくてケーキへの適性が高い薄力粉や、菓子用又はケーキ用小麦粉が市販されている。手打ちうどんには用途が広い薄力粉が向いているが、うどん用粉と銘打った製品もある。 


(表)小麦粉の種類、等級と品質、主な用途

等 級 1等粉 2等粉 3等粉 末粉
灰分量 0.3〜0.4% 0.5 %前後 1.0 %前後 2〜3%
強 力 粉 パ ン
(11.5〜12.5)
パ ン
(12.0〜13.0)
グルテンおよびデンプン  
準強力粉 パ ン
(11.0〜12.0)
中華めん
(10.5〜11.5)
パ ン
(11.5〜12.5)
グルテンおよびデンプン

合 板
飼 料
中力粉 ゆでめん・乾めん
(8.0〜9.0)
菓 子
(7.5〜8.5)
オールパーパス
(9.5〜10.5)
菓 子
(9.0〜10.0)
   
薄力粉 菓 子
(6.5〜8.0)
菓 子
オールパーパス
(8.0〜9.0)
   

(注)1、

( )内はタンパク質含有量(%)
   2、 用途欄には、小麦粉が使用される量からみて、代表的なもののみを記載してあり、これ以外にも多くの用途がある。例えば、グルテンおよびデンプンの製造には強力や準強力の3等粉のほかに、それらの2等粉も使われている。

製粉工程での採り分けも品質作りに重要
 強力粉や薄力粉などの用途に合わせて配合された小麦は、ロールで粉砕され、ふるい機でふるわれて、ピュリファイヤーという機械で純化される過程を経ると、品質が異なる30〜40もの粉に分かれる。これらの粉を用途が必要とする品質特性を持つように組合せて3〜4等級の粉にまとめる。まとめ方によって特徴がある小麦粉が作られるが、一般的には、比較的色がきれいな小麦粒の中心部に近い部分の粉を集めたものが1等粉になる。以下、2等粉、3等粉、末粉などが採り分けられていくが、順次、胚乳の周辺部に近いところの粉になる。特殊な用途を除いて、2等粉以上が食品に加工される。
 上位等級の粉は灰分量が少なく、色もきれいだが、下位等級になるほど灰分量が多くなり、色も少しずつくすみが増す。灰分量の目安は、1等粉が0.3〜0.4%,2等粉が0.5%前後,3等粉が1.0%前後、末粉2〜3%だが、必ずしも灰分量によらないで小麦粉の総合的な品質特性で分類することが多い。特別な品質のものを「特等粉」といったり、1等粉の中でやや灰分が多めのものを「準1等粉」と呼んだりすることがあるから、等級はあくまでも便宜的なものである。小麦粉の種類、等級と品質、主な用途を表に示した。
 日本で市販されている小麦粉の約96%は業務用である。25 kg紙袋詰めで販売されるか、ばらでタンクローリー車に積まれて小麦粉二次加工工場へ届けられる。家庭用粉は500g又は1kgが紙またはポリ袋に包装されている。


(図)小麦粉の種類と原料小麦の銘柄


(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)



使いやすい小麦は…



小麦は農産物である。品種の選択、栽培管理、天候、および収種後の品質管理によって品質に大きな差が出る。しかし、小麦の品質が小麦粉の品質に与える影響は大きいので、製粉企業は、それらの中から使用目的に適った品質の小麦を入手するべく、最大限の努力をしている。製粉用の小麦に求められる品質をまとめてみた。


まず、安全な小麦であること
 どの農産物でも同じことだが、食べて安全な小麦であることが必須条件である。日本が小麦を輸入している3国(アメリカ・カナダ・オーストラリア)では乾燥地帯で小麦が作られており、農薬散布の必要がほとんどないし、小麦の水分が低いので、通常は収穫後に殺虫処理する必要もない。そういう意味では、小麦は農作物の中でも最も安全なはずのものである。
しかし、念には念を入れたい。海外および国内の小麦生産や流通段階で、有害な農薬や殺虫剤を絶対使っていただきたくないし、問題がないことを確認してから出荷していただきたい。それらの小麦を買う政府や製粉会社でも、残留農薬などが基準値以下であり、安全であることを確認してから、安心して使用したい。
赤かびなどによる小麦粒の汚染も困るので、畑での充分な管理が必要である。また、不幸にしてかびなどに汚染されたら、収穫後にきちんと仕分けし、食用ルートには販売しないようにして欲しい。



挽きやすくて、良い粉を多く採れる小麦であること

 どの小麦にも、製粉しやすくて、上級粉の採取率が高いこと、つまり、製粉性の良さが求められる。胚乳が冴えたきれいな色合いをしており、軽く挽いたときに、皮と胚乳が離れやすく、粉砕した粉のふるい抜けが良いことが、好まれる小麦の条件である。
 製粉性が良い小麦は、品種に由来するところが大きいが、生育条件や収穫以降の取扱いによっても作られる。製粉性が良い小麦品種を播くことが最も重要である。その上で、健全な充実した粒で、しかも粒揃いが良い小麦が求められる。天候による被害や病虫害を受けた小麦粒は、挽きにくいし、きれいな粉を採りにくい。きょう雑物を多く含むものや、異物を含むものも好ましくない。また、水分が高すぎるのは良くない。13.5%を上回るものは、流通や貯蔵中に変質しやすいし、かびが繁殖する原因にもなる。水分が多いと製粉前の調質も理想的な状態にはなりにくいので、製粉性に悪影響が出る。

おいしい加工品ができること
 二次加工性はさらに重要である。小麦粉はさまざまな用途に使われ、それぞれの用途によって要求される品質特性が違うから、原料の小麦に求められる二次加工性も非常に複雑である。しかし、製粉工場での原料小麦の使い方や小麦粉の採り分け方からして、小麦をあまり細かい用途に分けては使いにくい。
 日本の場合、小麦が主用途であるパン、中華めん、日本めん、菓子、パスタのどれかに向く優れた適性を持っていれば、そのどれかの小麦粉製造で主原料にすることができる。どの用途にも中途半端にしか向かないような品質の小麦は配合用としてしか使えないから、二次加工性という点では商品価値が低い。また、二次加工性がロット間やロット内で変動する小麦も、製品の品質にばらつきを生じ易いので主原料になりにくい。
 小麦の二次加工性には、小麦粉の使いやすさと製品の出来上がりの両面がある。使いやすさは、生地がつくりやすいか、生地が取扱いやすく機械への適合性があるかであり、製品の出来上がりには、歩留りと品質の両面がある。
 各用途別の小麦に求められる品質特性を表1に示した。

好まれない小麦
 以上のことから、どういう小麦が好まれないかを表2にまとめてみた。これらに該当しない、使いやすい小麦が生産、流通されることを願いたい。


表1 小麦粉の用途からみた小麦に求められる品質特性

小麦粉の用途 小麦粉に求められる特性 小麦に求められる特性
パン用
1、 吸水が良い
2、 生地をつくりやすく、取扱いやすくて、機械への適度の耐性がある
3、 体積が大きくておいしいパンを、歩留り良くつくれる
1、 蛋白質の量が多く、グルテンの質が強靭だが伸展性に富む
2、 でんぷんの特性がパンに向いている
3、 α一アミラーゼ、蛋白分解酵素の活性が低い
中華めん用
1、 めんの食感が適度の弾力に富み、ゆで伸びが遅い
2、 生めんが冴えた色合いで、ホシが少なく、経時的な変色が少ない
1、 硬質系の小麦で、適量の蛋自質を含む
2、 めんに向く性質のでんぷんを持つ
3、 胚乳の色が冴えた明るい色で、経時変色が少ない
4、 α一アミラーゼ活性が低い
日本めん用
1、 ソフトだが弾力があって、滑らかな食感のめんができる
2、 冴えた、きれいな色のめんができる
3、 ゆで上げ時間が適度で、ゆで伸びしにくいめんができる
1、 中庸の質のグルテンを持つ軟質ないし中間質の小麦
2、 小麦の蛋白質の量が10〜11%
3、 めんに向く性質のでんぷんを持つ
4、 胚乳の色が冴えた明るい色
5、 α一アミラーゼ活性が低い
菓子用
1、 体積が大きく、きめ細かくてソフトな内相のケーキができる
2、 よく広がり、口溶けが良いクッキーができる
1、 蛋白質の量が少なくて、その質がソフト
2、 でんぷんの糊化特性が菓子に向いている
3、 α一アミラーゼ活性が低く、アミログラム粘度が正常

表2 好まれない小麦

分類 好まれない内容
安全性
1、 残留農薬、その他の有害物質を基準値を上回って含むもの
2、 かびに汚染されたもの
健全度
1、 きょう雑物を多く含むもの
2、 麦角粒、黒穂病粒、その他の異物を含むもの
3、 熱損粒、発芽粒、異臭麦、かび粒、虫害粒、着色粒を含むもの
4、 他銘柄粒、萎縮粒、未熟粒、砕粒、軽度の被害粒を多く含むもの
5、 α一アミラーセ活性が強いもの(低アミロのもの)
製粉性
1、 皮が厚く、胚乳から離れにくいもの
2、 胚乳の粉砕物のふるい抜けが悪いもの
3、 粒の大きさ、重さ、硬度が不揃いなもの
4、 胚乳の色が灰色っぽく、くすんでいるもの
5、 灰分が高いもの
6、 水分が高いもの
二次加工性
1、 中途半端な性状で、適した主用途がないもの
2、 小麦粉の生地性状がべたつくなど、好ましくないもの
3、 その小麦の主用途で、良い二次加工製品ができにくいもの



(財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)



小麦粉はこんな性質を持っている



 小麦粉にはいろいろな性質がある。淡いクリーム色で、粒子は細かい。でんぷんが主成分だが、そのほかにもいろいろな成分を含んでいる。水と熱で3つの異なる状態になるほか、使う上で都合がいい性質をいくつか持っている魅力的な食品材料である。

淡いクリーム色
 日本の小麦粉は無漂白なので、自然のままの淡いクリーム色である。小麦の産地や種類によって、クリーム色から白っぽいものまで、僅かだが色合いが違う。このクリーム色はカロチノイド系の色素によるもので、色素が比較的多いデュラム小麦のセモリナは黄色く見える。1等粉はきれいな淡いクリーム色だが、下位等級の粉ほど少しくすみがあり、僅かに褐色を帯びた色合いである。

粒子が細かい
 通常の小麦粉の粒子はとても細かく、直径が150ミクロン以下である。ただし、大きい粒と小さい粒が混ざっていて、種類によっても違うが、半分くらいは35ミクロンより小さい。薄力粉が最も細かく、強力粉や準強力粉はやや粗めである。中力粉はその中間か、やや細かめである。薄力粉の原料小麦は粒が軟らかいので粉砕すると細かい粉になりやすく、強力粉の原料小麦は硬いので細かくなりにくい。粒子が細かいほど光が当たると乱反射する率が高いから、白く見える。そのため、薄力粉の方が強力粉よりも白く見えるが、加工すると粒度の影響がなくなり、小麦粉本来の色がでる。

こんな成分が含まれる
 小麦粉の成分の一例を表に示した。種類や等級によって少し差があるが、1〜2等粉には炭水化物が70〜78%、たんぱく質が6〜14%、脂質が2%前後、灰分が0.3〜0.6%、水分が14〜15%含まれている。炭水化物の大部分はでんぷんである。でんぷんの量は、薄力粉が一番多く、中力粉、準強力粉、強力粉の順に少なくなる。同じ種類の小麦粉では、1等粉が最も多く、下級粉になるほど少ない。でんぷんは水が充分にある状態で加熱すると、60℃近辺で糊になり始め、85℃を越えるあたりですべてのでんぷんが糊になるので、加工上重要である。栄養面でも大切な役割を果たす。食物繊維も1等粉クラスで2.5〜2.8%含まれ、水溶性と不溶性の比率は半々ないし水溶性が少なめである。
 たんぱく質はその大部分がグルテンになるので、重要である。薄力粉は少なく、中力粉、準強力粉、強力粉の順に多く含まれる。脂質は少ないが、パン粉や菓子づくりで重要な働きをする。小麦粉を条件が悪いところに長く置くと、脂質が微妙に変化する。水分の量は原料小麦の水分と製粉しやすくするために加える水の量で自然に決まる。薄力粉や中力粉の水分は、強力粉や準強力粉の水分より0.5%ほど少なめで、季節的にも夏の方が冬より少なめである。硬い小麦や寒い季節には多めの水を含ませるのでこのような差がでる。量は多くないがビタミンやミネラル類も含まれる。

水と熱で化ける
 小麦粉は、加える液体の量によって3つの異なる状態になる性質があり、バターと炒めるとルーになるので、いろいろな食品加工や調理に使える。
生地になる・・・・小麦粉100に対して60〜70の水を加えてよくこねると、つきたての餅より少し硬めの、軟らかいのに弾力がある「生地」になる。機械でうどんをつくる場合のように、小麦粉100に対して30〜33の水を加えてかき混ぜるとソボロ状の生地にもなる。
バッターになる・・・・ケーキや天ぷらをつくるときには、小麦粉に対して水や卵などの液体を2倍くらい加えて、こね過ぎないように混ぜ、トロッとした状態の「バッター」と呼ばれる軟らかい「ねり生地」にする。
糊になる・・・・小麦粉に対して5〜20倍の水を加えてよくかき混ぜると、バッターより粘りがなく薄くてサラッとしたものになる。鍋で混ぜながら加熱すると、薄い糊になる。
ルーになる・・・・小麦粉に溶かしたバターを加えてフライパンで炒ると、ルーになる。

こんな性質もある
他の粉体と混ざりやすい・・・・小麦粉に粉末状のものを加えてふるいで何回かふるうと、よく混ざる。他の小麦粉や違う穀物の粉をたくさん混ぜることもできるし、砂糖のような他の材料や、ビタミン、ミネラルのような微量のものも均一に添加しやすい。この性質を使うと、異なる性質の小麦粉を混ぜて特徴ある品質の小麦粉をつくったり、いろいろな原材料をすべて混ぜた「プレミックス」をつくることができる。学校給食用の小麦粉にはビタミンB1とB2が添加されている。
水気があるものに付着しやすい・・・・肉や魚のように表面に水気があるものに付着しやすいので、ムニエルをつくるのに使える。手打ちうどんの打ち粉として表面にまぶすのも、うどんの表面が湿っているからである。
においを吸着しやすい・・・・良いにおいも悪いにおいも直ぐに吸う。この性質を使ってフレーバーを付けることができる。異臭があるものを近くに置くと、それが移る危険もある。
顆粒状にもなる・・・・特殊な加工によって、ざらざらの顆粒状にすることができる。加工コストがかかるが、細かい粉末だと使いにくい場合には、この技術を活用できる。

(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)


表. 小麦粉の成分 (一例) (%)
種類 等 級 水 分 たんぱく質 脂 質 炭水化物 灰 分
薄 力 1等粉 14.0 8.0 1.7 75.9 0.4
2等粉 14.0 8.8 2.1 74.6 0.5
中 力 1等粉 14.0 9.0 1.8 74.8 0.4
2等粉 14.0 9.7 2.1 73.7 0.5
強 力 1等粉 14.5 11.7 1.8 71.6 0.4
2等粉 14.5 12.4 2.1 70.5 0.5
五訂 日本食品標準成分表 (科学技術庁資源調査会編) より抜粋
            



めん用粉に求められる品質特性


 めん類は、原料として使う小麦粉の特性からみると、日本めん、中華めん、即席めん、パスタ、日本そばに大別できる。日本そば以外は原材料のほとんどが小麦粉なので、製造方法と共に小麦粉の品質が、めん類の食味や食感をつくり出すのに重要な役割を果たしている。日本めん用の小麦粉では、グルテンと共に、でんぷんの性状が重要である。

日本めん用粉
 日本めんは、太さによってそうめん、ひやむぎ、うどん、ひらめんに大きく分類され、流通形態によって生茹でめんと乾めんがある。これらの用途に合わせて品質に特徴を持たせた小麦粉が市販されているが、それらに共通して求められる品質特性は、(1).ソフトだが弾力があって、滑らかな食感のめんができる、(2).冴えた、きれいな色のめんができる、(3).茹で上げ時間が適度で、茹で伸びしにくいめんができる、の3点に要約される。
 最近の研究で、小麦粉中のでんぷんの性状がめんの食感形成に重要な役割を果たしていることが分かった。でんぷんは糊化温度が低めで、膨潤度が高いものがよく、アミロース含量がやや低いものがこの特性を備えている場合が多い。
 日本めんは、もともと国内産小麦から挽いた粉でつくられていたが、現在は日本めん用に開発された品種が主体の西オーストラリア州産のASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト)小麦が主原料である。積出港でも日本向けに特別に調製されて出荷されるこのASW小麦は、(1).グルテンの質が中庸、(2).たんぱく質の量が10〜11%、(3).胚乳の色が冴えた明るい色、(4).でんぷんの性状がめんに向く、という好ましい特性を備えている。国内産小麦は品種や産地によって差が大きく、総じて粉の色にくすみがあり、食感も現在の消費者の好みには今一歩のものが多いので、国内産小麦の粉であることを売りものにする場合を除いて、配合原料として使われている。

中華めん用粉
 中華めん用粉からは、生中華めん、蒸し中華めん、餃子、ワンタンなどがつくられる。これらは種類が多い上に、製法がさまざまであり、いろいろな食べ方がされている。
 そのため、主原料の小麦粉に求められる品質にもかなりの幅があるが、中華めん用の小麦粉に共通して求められる品質特性は、(1).茹でためんが特有のしっかりしたコシがある食感で、丼の中でのゆで伸びが遅いこと、(2).生めんが冴えた色合いで、ホシが少なく、経時的な変色が少ないことである。
 中華めん特有の食感をつくり出すために、硬質系の小麦が原料として使われる。めんの種類によって小麦粉に求められるたんぱく質の量が異なり、図のように10.5%から12.0%くらいまで幅があるので、たんぱく質レベルが異なる2〜4種類の小麦を配合して小麦粉がつくられる。
 こね水に「かん水」を添加することによって、中華めんらしい食味、食感になるほか、小麦粉と反応してめんをおいしそうな黄色にする。生中華めんでは、製めんしてから消費されるまでの1日ほどの間に、かん水が小麦粉に作用してめんの黄色が少しずつ変化する(変色する)。冴えた、きれいな色の胚乳を持つ小麦を原料として使い、製粉方法を工夫し、歩留まりを調節することによって、めんがきれいな色に仕上がり、経時変色が少ない小麦粉をつくることができる。


即席めん用粉
 即席めんメーカー各社から特徴ある製品が数多く市販されており、それらの原料として使う小麦粉に求められる品質特性もさまざまである。
 即席ラーメン用には硬質系小麦の粉が主に使われるが、熱湯で戻しやすくするために、軟質系の小麦の粉を少し配合することもある。小麦粉のたんぱく質の量も中華めん用粉よりやや低いものが使われることが多い。
 製めん直後に熱加工処理が行われるので、生中華めんの場合のような変色の問題はない。このため、小麦粉の色に対する要求度も生中華めん用粉の場合ほどデリケートではない。
 日本めんタイプの即席めんには日本めん用粉が使われ、求められる品質特性も日本めんの場合とほぼ同じである。

パスタ用セモリナ
 マカロニ、スパゲティなどのパスタの製造にはデュラムセモリナを使う。純度ができるだけ高いセモリナが求められ、ふすま片や黒いスペックが混入しているものは、製品の外観を損なうので嫌われる。
 デュラム小麦はパスタ用のセモリナをつくるのだけに使われる。そのたんぱく質は他の小麦よりもグルテニンを多く含むので、粘りが強いグルテンになり、パスタ独特の食感をつくりやすい。胚乳の黄色色素が多い点も、パスタ製造用としては都合がよい。

(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)



おいしいパンをつくりやすい小麦粉

 パンについて原料の小麦粉に求められる特性からみると、角形または山形の食パン、糖分と油脂を多く配合する菓子パン、あまり大きく膨らませないで焼くバゲットやロールパン、膨らませないチャパティなどの平焼きパン、蒸気で加熱する蒸しパンなどに分けられる。おいしいパンは製パン技術でつくられるが、主原料である小麦粉もパンの製造や品質づくりでは中心的な役割を果たしており、グルテンの量と性状が重要である。

食パン用粉
 「食パン」は生地を焼き型に入れて角形または山形に焼き上げた食事用のパンである。イギリスとアメリカの影響を受けて発展した日本の食パンは、その名称も独特で英語には訳しにくいが、カナダやアメリカ産のパン用として優れた硬質小麦を使って、世界でも特殊と思えるほどきめが細かくてソフトで弾力のある日本人が好む食感のパンになった。
 食パン用の小麦粉に求められる品質特性は、(1)吸水が良い、(2)生地をつくりやすく、出来た生地が取り扱いやすくて、適度の弾力がある、(3)体積が大きくておいしいパンを歩留り良くつくれる、の3点に要約される。
 小麦粉の中のグルテンになる蛋白質の量と質が食パンの場合には特に重要であることは以前から分かっていたが、最近の研究で、グルテニンの分子構造が製パン性に大きな影響を与えることが示された。新しい知見に基づいて、グルテンになる蛋白質の量とグルテニンの分子構造に重点を置いたパン用小麦の育種に弾みがかかっている。
 食パン用の小麦粉は、カナダから輸入する「カナダ・ウェスタン・レッド・スプリング小麦」のNo.1等級で、蛋白質の量が13.5%以上のものを主原料にして製造されている。この小麦は世界でも最も製パン性が優れていると評価が高く、品質管理が行き届いているので安心して使うことができる。アメリカから輸入する「ダーク・ノーザン・スプリング小麦」または「ノーザン・スプリング小麦」のNo.2以上の等級で、蛋白質の量が14.0%以上のものも、カナダの小麦に近い製パン性を備えているので、配合して使われている。蛋白質の量や質を調整するために、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター小麦を少量配合することも多い。
 これらの小麦を配合した原料を挽砕して得られる灰分が0.3〜0.4%台の「強力1等粉」と呼ばれる小麦粉が食パンに使われる。小麦粒の胚乳の中のパンづくりに適した部分を集めた粉であり、蛋白質の量は12%程度である。
 蛋白質の他にも、でん粉の性質、でん粉を分解するα-アミラーゼの活性、蛋白質分解酵素の活性、ロール粉砕によって生ずる損傷でん粉の量が、吸水、生地の状態、パンの出来に影響する。
 
菓子パン用粉
 糖分や油脂などの材料を生地に多く配合するタイプのあんパン、クリームパン、ジャムパン、メロンパンなどの日本で生まれた菓子パンや、デニッシュペストリー、ブリオシュ、クロワッサンなどの欧米から伝えられた菓子パンには種類が多く、いろいろな食べ方がされている。
 これらの菓子パンをつくるのに使う小麦粉は、食パン用粉ほどのグルテンの力を必要としないし、色も食パンの場合ほど白くなくてもよい場合が多い。食パン用粉を製粉する場合よりもアメリカ産のハード・レッド・ウィンター小麦を多めに配合して蛋白質の量を少し減らした準強力粉や、強力の2等粉が使われるが、つくる製品によって粉を使い分けたり、配合したりする。

フランスパン用粉
 バゲット、パリジャン、バタール、ブールなどのフランスパンは小麦粉、イースト、食塩、水だけでつくられ、あっさりした味とパリッとした外皮の食感を楽しむパンである。糖分や油脂を使わないから、小麦粉の品質を活かしたパンだとも言える。
 本場のフランスでは、中間質系統で蛋白質の量が多めの小麦から挽いた灰分が多めの粉が使われている。微妙な品質が求められるので、日本では「フランスパン専用粉」として市販されているものが多い。蛋白質の量は準強力粉クラスだが、原料小麦の配合や挽き方を工夫することによって、本場と同じようなパンが出来るような小麦粉がつくられている。また、日本では焼きたてを食べないで、少し時間が経ってからオーブントースターなどで加熱して食べることも多いので、そういう食べ方をしても本場のものに近いパンを楽しめるように蛋白質の量を多めに調整した専用粉もつくられている。

その他のパン用粉
 チャパティやナンなどの平焼きパンは、中力または準強力粉からつくることができる。どんな食感のものをつくるかによって、小麦粉を選択し、必要に応じて混ぜればよい。灰分が0.5%台の2等粉で十分である。
 蒸しパン類はつくる製品によって小麦粉を選ぶ必要がある。肉まんやあんまんでは色の白さが求められるので、1等粉がよく、強力粉に薄力粉を混ぜる場合が多い。普通の蒸しパンは準強力粉または中力粉でつくられる。


(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)




小麦粉からはさまざまな菓子がつくられる


 日本には世界中の菓子があり、その種類は多い。外国から導入されたものも多く、本場の菓子そっくりのものがある一方で、日本人に合うようにつくり変えられたものもある。それらの中で小麦粉を原料にしてつくられる菓子も多岐にわたっており、私たちの生活に潤いを与えてくれている。菓子用にはたんぱく質の量が少なく、グルテンの質がソフトな薄力粉が向いているが、製品によって要求される品質特性が微妙に異なる。

しっとりさの長崎かすてら、ソフトなケーキ
 菓子の中で小麦粉を原料にしてつくられる主なものを拾い出し、分類してみると、表のようになった。焼きもの、揚げもの、および生菓子に大きく分けることができ、それぞれに和風と洋風のものがあり、一部に中華風の菓子もある。
 「長崎かすてら」は、薄力粉の中でも特にたんぱく質の量が少なめのソフトな質の小麦粉でつくられる。業務用には「かすてら専用粉」も市販されている。高級感があって、しっとりした食べ口のかすてらは日本独特のものである。卵や砂糖をたくさん入れて、独特の製法でつくる。つくるのには熟練を要し、つくり方と技術によって出来上がるかすてらの味に大きな差が生ずる。
 ケーキにも、たんぱく質の量が少なく、ソフトな質の薄力粉が向いている。ケーキの種類によって、原材料の配合やつくり方が違い、使う小麦粉の品質によってケーキの出来具合が微妙に変わる。「スポンジケーキ」のつくり方の一つとしては、卵100に対して、砂糖70〜80、水20〜25、バターか乳化剤3〜4を加えて泡立て、50〜60の小麦粉を加えて短時間で混ぜてバッターをつくる。焼き型の内側に紙を敷き、バッターを流し入れて、180℃のオーブンで30分間焼く。仕上げをすると出来上がる。「レイヤーケーキ」、「ショートケーキ」、「ファンシーケーキ」などは、スポンジケーキを加工したものである。また、スポンジケーキの技術は「ロールケーキ」にも応用されている。

まんじゅうは味の芸術品
 「栗まんじゅう」、「かすてらまんじゅう」、「唐まんじゅう」、「どら焼き」など、まんじゅうは種類が多い。つくり方で分けると、「焼きもの」と「蒸しもの」がある。前述の4つのまんじゅうは、いずれも焼きもので、庶民的な食べものの「今川焼き」、「回転焼き」、「たい焼き」なども「焼きもの」の仲間である。薄力粉か菓子用の中力1〜2等粉が使われる。日本以外のアジア諸国にも焼きまんじゅうはあり、「月餅」はその代表的なものである。
 「酒まんじゅう」、「蒸しまんじゅう」、「小麦まんじゅう」、「温泉まんじゅう」などと呼ばれるものは「蒸しもの」で、昔から家庭でもよくつくられ、観光地のみやげ品や地方の名産品として味や形に工夫がこらされ、いろいろな名前が付けられている。これらにも、酒種などを使って発酵によってつくるものと、膨剤の力で膨らませるものがある。

ビスケットは菓子の代表格
 日本では、ビスケットを「ハード・ビスケット」と「ソフト・ビスケット」に分けている。ソフト・ビスケットの方が砂糖やショートニングの配合割合が多いが、その中でも特に配合割合が多いものだけを分けて、「クッキー」と呼んでいる。ソフト・ビスケットには薄力の1等粉クラスの小麦粉が向いている。クッキーもほぼ同じだが、中力粉が使われることもある。ハード・ビスケットに使われる小麦粉はメーカーや製品によってさまざまで、薄力または中力の1〜2等粉が使われる。中国風のクッキーには、西洋から伝来したものとは違う独特の食感、風味がある。
 「クラッカー」には、アメリカ・タイプの「ソーダ・クラッカー」とイギリス・タイプの「クリーム・クラッカー」があるが、日本ではソーダ・クラッカーが多い。
 その他にも、「佐賀ボーロ」、「そばボーロ」、「瓦せんべい」、「南部せんべい」、「ウェハース」、「ケーキドーナツ」、「イーストドーナツ」、「かりんとう」、「シュークリーム」、「パイ」、「バウムクーヘン」、「トルテ」など、小麦粉を原料にした菓子は多い。

菓子用小麦に求められる品質特性は
 菓子の種類は多く、用途によって原料の小麦に要求される品質特性には差があるが、それらは、(1)体積が大きく、きめ細かくてソフトな内相のケーキができる、(2)よく広がって口溶けが良いクッキーができる、の2点で代表できる。そのような製品ができるためには、小麦が(1)たんぱく質の量が少なくてその質がソフトで、(2)でん粉の糊化特性が菓子に向いており、(3)α-アミラーゼ活性が低くてアミログラム粘度が正常でなければならない。
 日本では、アメリカ産のウェスタン・ホワイト小麦が菓子用粉にはなくてはならない原料小麦である。その理由は、この小麦が日本の菓子類の製造に好都合な加工適性を備えているからである。ウェスタン・ホワイト小麦はソフト・ホワイト小麦とホワイト・クラブ小麦を混合してつくられるが、ホワイト・クラブ小麦の方がソフト・ホワイト小麦よりも製菓適性が優れているので、ホワイト・クラブ小麦の混合率が高くて安定していることが望ましい。


表 日本での小麦粉菓子のいろいろ

大分類
中分類
代表的な菓子の名称
焼きもの ビスケット類 ハード・ビスケット
ソフト・ビスケット
クッキー
クラッカー
焼きもの(小もの) 佐賀ボーロ
そばボーロ
せんべい類 瓦せんべい
南部せんべい
ウェハース ウェハース
揚げもの ドーナツ類 ケーキ・ドーナツ
イースト・ドーナツ
油菓 かりんとう
生菓子 焼きまんじゅう 栗まんじゅう
唐まんじゅう
どらやき
今川焼き・たいやき
蒸しまんじゅう 酒まんじゅう
蒸しまんじゅう
カステラ 長崎カステラ
ケーキ類 スポンジケーキ
バターケーキ
ワッフル
ホットケーキ
シュークリーム
パイ
バウムクーヘン
中華 蒸しまんじゅう あんまんじゅう
肉まんじゅう

(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)



栄養面での小麦粉の役割



 私たちは毎日、かなりの量の小麦粉加工品を食べている。それらは体温の保持や活動のエネルギーになると共に、成長したり、健康な状態を増進、維持するための栄養源でもある。
栄養的に優れたいろいろな食品をおいしく口へ運びやすくする役目もする。小麦胚芽、ふすま、全粒紛なども栄養的に注目されている。


食べる量が多いから
 平成14年度の統計(農林水産省・食料需給表)によると、日本人1人が1年に食べた小麦粉の量は平均で31.9kgであり、1日に平均87g食べたことになる。同じ年度に供給された食料(必ずしも全量食べたわけではないが)を1人・1日当たりの熱量に換算すると2,599kcalで、そのうち321kcalが小麦粉として供給された。このように小麦粉の摂取量は多く、しかもさまざまな形でほぼ毎日食べるので、栄養面で重要な意味を持っている。

エネルギーや栄養源として
 小麦粉の主な栄養成分を表に示した。最大の成分は70%以上の炭水化物で、その大部分はでんぷんである。たんぱく質も7〜13% 含まれ、少量だが脂質もある。これら3大栄養素が全部エネルギーとして使われるとすると、小麦粉100gは366〜369kcalになる計算である。炭水化物は主にエネルギー源として利用される。たんぱく質はエネルギー源としても使われるが、体組織になるほか、酵素やホルモンの材料になったり、栄養素を運搬する。脂質はエネルギー源であると共に、細胞を構成する成分にもなる。たんぱく質や脂質を摂り過ぎると、肥満になったり、生活習慣病になりやすい。栄養素のバランスが重要で、各栄養素を熱量に換算した比率で見た場合に、炭水化物が全体の60%程度であることが望ましいと考えられる。日本人の熱量に換算した平均の炭水化物摂取比率は低下気味で、平成14年度には57.8%だったが、これ以下にはしない方がよい。炭水化物が主成分である小麦粉食品を適度においしく食べて、炭水化物の比率の低下を食い止めたいものである。小麦粉食品を食べることによってある程度の満腹感が得られるので、たんぱく質や脂質が 主体の食品を食べ過ぎないようにすることもできる。
 小麦粉は植物性たんぱく質源としても重要である。制限アミノ酸であるリジンが少ないが、他の良質な動物性食品との組合せで食べることが多いので、栄養価が高い状態で摂取することができる。小麦粉中の脂質、ミネラル、ビタミンの量は多くないが、食べる量が多いのでそれぞれ栄養面での役割を果たしている。

栄養素の運び屋でもある
 パン、めん、菓子などの小麦粉食品は、それだけを食べてもおいしい。さらに、ハンバーガー、サンドイッチ、ホットドッグ、その他の調理パンのように副食と組み合わせて食べるパンは、現代のライフスタイルともマッチしている。具がバランス良く入ったラーメンやうどんもある。お好み焼きでも小麦粉が重要である。チャパティやナンのような平焼きパンは、副食を口に運ぶための巧みな器だといえる。フランス料理ではパンは主役ではないが料理の引き立て役で、パンがまずいと料理の魅力は低下する。モーニング・トーストやテーブル・ロールは、牛乳や卵と味わう。このように、小麦粉食品は、良質のたんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンなどを豊富に含む副食を、楽しみながらおいしく口へ運ぶ役目を果たす場合が多く、この意味でもバランスがとれた栄養に貢献している。

食物繊維源として
 小麦粉には食物繊維が2.5〜2.8%含まれている。そのうち不溶性のものは1.3〜1.6%、コレステロールの状態の改善に効果があるとされる水溶性のものは1.2%ほどである。このことから、日本人は1日に小麦粉から平均で約2.4gの食物繊維(うち水溶性のものは約1g)を摂取していることになる。

全粒粉とふすま
 全粒紛を用いたり、小麦粉にふすまを配合して焼いたパンやビスケットが市販されている。これらはでんぷんが主体であるとともに、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどを多く含んでいる。ただし、繊維質は食味を損ない、加工性を落としやすいので、おいしく食べられるように技術面での工夫がされている。全粒紛には約11%の食物繊維が含まれる。ICC(国際穀物科学技術協会)は、いろいろな食物繊維源の中で小麦ふすまが人体に合うことを認めている。

小麦胚芽は栄養の宝庫
 表に示されているように、焙焼小麦胚芽の成分の約3分の1はたんぱく質で、必須アミノ酸のリジンやロイシンを多く含んでいる。脂肪も11%強含まれており、脂肪酸の約半分は不飽和脂肪酸のリノール酸で、細胞膜成分として重要なほか、血中コレステロールを低下する作用もある。食物繊維も約14%ある。ビタミンEが多いことも特徴で、中でも生理活性が強いα-トコフェロールを多く含んでいる。B群、特に一般の食品に少ないB1とB6が多い。リン、カリウム、マグネシウムのどのミネラルも多い。


(表)小麦粉と小麦胚芽の主な栄養成分

可食部100g当たり
 















食 物 繊 維 ミネラル ビタミン














E B
1
B
2
kcal mg/100g mg/100g
  薄力1等粉
    2等粉
368
369
14.0
14.0
8.0
8.8
1.7
2.1
75.9
74.6
0.4
0.5
1.2
1.2
1.3
1.5
2.5
2.7
120
150
12
30
70
90
0.3
1.2
0.13
0.24
0.03
0.09
  中力1等粉
    2等粉
368
369
14.0
14.0
9.0
9.7
1.8
2.1
74.8
73.7
0.4
0.5
1.2
1.2
1.6
1.7
2.8
2.9
100
130
18
26
74
93
0.3
1.0
0.12
0.26
0.05
0.07
  強力1等粉
    2等粉
366
367
14.5
14.5
11.7
12.4
1.8
2.1
71.6
70.5
0.4
0.5
1.2
1.2
1.5
1.6
2.7
2.8
80
100
23
36
75
100
0.3
0.6
0.10
0.15
0.07
0.08
  全粒粉   328 14.5 12.8 2.9 68.2 1.6 1.5 9.7 11.2 330 140 310 1.2 0.34 0.33
  焙焼小麦胚芽 426 3.6 32.0 11.6 48.3 4.5 0.7 13.6 14.3 1100 310 1100 32.6 1.82 1.24

資料: 科学技術庁資源調査会編 「五訂日本食品標準成分表」 から抜粋

(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)




小麦粉の用途は広い



 日本では小麦粉の約86%がパン、めん、および菓子に加工されているが、そのほかにも小麦粉はいろいろな用途で活躍している。それらの一部を見ることにしよう。


小麦粉は台所の必需品
 南蛮料理に起源を持つ「天ぷら」は、今では代表的な日本料理の一つである。種に合わせた衣と油から、おいしい天ぷらが作られる。ボウルに卵を割りほぐし、冷水を加えて混ぜて卵水にし、薄力粉を混ぜて衣用のバッターをつくる。蛋白質の量が少ない上質の薄力粉を選び、ふるって加え、太めのさい箸で手早くサックリと混ぜて、グルテンが出過ぎないようにすることと、温度が上がらないようにすることが、おいしさへのポイントである。バッターを作りやすいようにあらかじめ調製した「天ぷら粉」を使うと、より簡単においしい天ぷらを作ることができる。
 表面に小麦粉などをまぶして揚げる「から揚げ」や、パン粉を使う「フライ」も、手軽に作れる料理である。作りやすいように調製した「から揚げ粉」や「竜田揚げ粉」も市販されている。パン粉は業務用と家庭用を合わせると年に約17万トンも作られている。パン粉用に特別に焼いたパンを砕いて乾燥したものだが、乾燥の程度と状態によって生パン粉、ソフトパン粉、ドライパン粉の3種類がある。「カツレツ」、「串カツ」、「コロッケ」、「カキフライ」、「ムニエル」などにも小麦粉は使われる。「お好み焼き」でも小麦粉は重要な役割を果たしており、作りやすいように調製した「お好み焼き粉」を使うこともできる。
 小麦粉をほぼ同じ量のバターと炒めると、香ばしい「ルー」ができる。炒める程度によって色合いを変えることができ、味付けして料理用のソースなどにする。「カレーライス」にも小麦粉のルーが使われる。「すいとん」は、小麦粉を水とこねて、ゆでたものである。
 家庭でもパン、うどん、ケーキ、クッキーなどを作ることが多い。作るものに合う小麦粉を選ぶことが重要だが、用途によってはあらかじめ他の原材料を配合して調製したプレミックス粉を使うこともできる。

フラワーペースト
 パンや菓子に小麦粉が入ったペースト状のもの(フラワーペースト)を入れたり、表面に塗布することが多い。小麦粉、でん粉を主原料にして、砂糖、油脂、粉乳、卵等を加えて加熱殺菌した「フラワーペーストミルク」、チョコレート(又はカカオ)、小麦粉、でん粉を主原料にして、砂糖、油脂、粉乳等を加えて加熱殺菌した「フラワーペーストチョコレート」、ナッツ類とその加工品を主原料にして、砂糖、油脂、小麦粉等を加えて加熱殺菌した「フラワーペーストピーナッツ」があり、年に約7万トンも生産されている

麩は伝統的な植物性たんぱく食品
 「麩」は、小麦グルテンの特性を活かした日本独特の伝統的な植物性たんぱく食品である。ほとんどが「焼麩」の形で市販されているが、一部に「生麩」もある。焼麩は産地によって特徴があり、作り方も違う。有名なものには、山形県の東根や長井、新潟県などの「車麩」、新潟県の「白玉麩」、山形県庄内地方の「庄内麩」(板麩ともいう)、京都の「京小町麩」、「花麩」などがある。
 強力粉と水をこねた生地から水ででんぷんを洗い流してグルテンを採り出し、このグルテン100に対して小麦粉50〜100と膨剤を少し加えてよくこねる。加える小麦粉の種類や量は焼麩の種類や品質によって異なり、「金魚麩」のように グルテンだけで作るものもある。生地を一定の重量に分割し、しばらくねかせてから成形して専用のかまで焼くと、大きく膨らんだ焼麩が出来上がる。味付けして煮たり、すまし汁や味噌汁に入れることもでき、すき焼き等のなべ物にも使える。
グルテンにもち米の粉を混ぜ、こねて蒸したものが「生麩」で、よもぎや粟を入れたり、着色したりしたものもある。懐石料理の煮物などに使われる。

でんぷんとグルテンに分けて
 2等粉や3等粉を水とこねて生地にし、水洗でグルテンとでん粉を分離することが工業的に行われている。小麦でん粉の生産量は最盛期の半分くらいに減ったが、今でも年に約3万トン生産されている。小麦でん粉は、繊維、紙、段ボールの接着やサイジング、水産練り製品の粘着と食感向上、菓子の加工性向上、医薬品への配合などに幅広く利用される。
 グルテンは、麩に加工されるほかに、活性を保つように乾燥して、畜肉ソーセージや水産練り製品に加えたり、パンやめんの品質改良剤としても使われる。

ベニヤ板の接着にも小麦粉
 合板(ベニヤ板)の製造では、尿素樹脂などの樹脂に小麦粉(末粉)を加え、混ぜてどろどろの状態にした糊を使う。薄く平らに切った板の間にローラーを使ってこの糊を平均的に塗布し、重ね合わせて加熱して接着する。末粉を混ぜると、糊がちょうど良い粘り具合になり、ある程度の厚みに薄く広げて塗ることができる。1等粉や2等粉では糊がさらさらになって塗りにくく、食用にならない末粉が最も適している。その他にも、末粉は飼料に使われ、特に仔牛の人工乳用の原料として需要がある。


(一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)