子供たちの小麦・小麦粉コーナー

みんなの小麦粉研究室

第5回
小麦粉の科学


弾力性、粘着性を持つ小麦粉特有のたんぱく質

 小麦粉をボウルに空け、水を少しずつ足しながら、こねてみよう。最初、指の間にだまができ、とても扱いにくい。だが、しばらくすると、全体はなじみはじめ、やがて不思議な粘りと弾力に富んだ塊となる。うどんやラーメンの素材などに なる生地の誕生だ。
 では、出来た生地を水を入れたボウルにつけて「水洗い」していくとどうなるか。
 生地玉はどんどん小さくなる。最後には、かんだ後のチューインガムのように、小さな玉が指先に残っているはずだ。水に溶けない。これこそ小麦粉食品に独特の粘弾性をもたらす、たんぱく質「グルテン」なのである。
 小麦粉は数種類のたんぱく質を含んでいるが、その約85%は「グルテニン」と「グリアジン」(両者はほぼ同量)である。「グルテニン」は弾力性をあらわし、「グリアジン」は粘り気をあらわすという2種類のたんぱく質が結びつくことによって、小麦粉特有のグルテンは生まれる。この結合がよいほど、粉の中の粘弾性の性質も強くなる。となれば、歯応えも増すというものだ。
 日本でケーキに使われる薄力粉、うどんやそうめん向きの中力粉、ラーメンやパン、ギョーザの皮に用いる強力粉と並べたら、グルテンは後者になるほど多い。ソフトで柔らかいケーキは、ギョーザの皮用の強力粉で作ったら、フワフワ感を出すのが難しいことは誰でも想像がつくだろう。
 さらに、スパゲッティなどに適したデュラム小麦―イタリア、フランス、スペイン、トルコ、アメリカ、カナダ、北アフリカなどで取れ、マカロニ小麦とも呼ばれる―に至っては、一般的には製粉粒度の粗いセモリナ粉にして使用するため、グルテンが出来にくいので、イースト菌を入れて発酵させようとしても、膨らまない。
 なお、小麦と並ぶ3大穀物の仲間であるコメ、トウモロコシはグルテンとなる成分を含んでいない。また同じ麦類でも、大麦のたんぱく質は、同じようにねってもパサパサになるだけで、つながらない。
 粉食を堪能する、これこそ小麦の魅力なのである。
 

日本の「パンの祖」は西洋砲術家
 わが国が黒船に揺れた江戸末期。戦乱の気配も漂い、各藩は簡便な兵糧としてパンに目をつけ、開発に乗り出す。伊豆韮山に住む江戸幕府の世襲代官、江川太郎左衛門もその一人。西洋砲術家・民政家として知られ、品川・台場に反射炉を設置して大砲を鋳造したが、一方で、長崎・出島からパン職人を招き、韮山にパン焼きかまを作ってパン焼きを始めた。小麦粉の選び方、焼き方など苦労を重ねたらしく、「パンの祖」と呼ばれるようになった。まさに、必要は発明の母━━。

 


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