子供たちの小麦・小麦粉コーナー

みんなの小麦粉研究室

第20回
小麦粉の加工学

文化財も守る小麦粉
 小麦粉食品は世界中の食卓を飾る。穀物の王様といってよいだろう。人類には命の綱の食料だ。しかし、口に入れる以外にも薬にも混ぜたり、日本の美術を支えたりと用途は広い。そう、アートも、である。
 まず、料理の話から。
 たいがいの日本人なら、懐石料理や精進料理があることは知っているだろう。これに欠かせない麩は小麦粉で作られている。
 真っ白な小麦粉をボウルにあけ、水や少量の塩を加え、こねてみよう。はじめはダマになり、指にこびリついて具合は悪い。うどん打ち体験を学習する小中学校をみると、最初に子どもたちが音を上げるのがこの段階。でも、こねるうちに全体はなじみ、粘りと弾力、伸展性を増していく。うどんやラーメンなどの生地に近くなる。
 次にこの生地を水を入れたボウルにつけ、水洗いしてみよう。ボウルはみるみる白濁していく。洗うほど生地は小さくなる。最後に、かんだ後のチューイングガムのように、白い玉が残っているはずだ。水に溶けない。これこそ小麦粉食品に独特の食感をもたらす、たんぱく質「グルテン」である。
 グルテンは弾力性をもつ「グルテニン」、粘り気を左右する「グリアジン」という2種類のたんぱく質が結びついてできる。粉の中のグルテンになるたんぱく質の量が多くて、その二つのたんぱく質の結びつきが強いほど、食べたときのコシも強くなる。
 この白い部分はふつう「麩まんじゅう」にし、「生麩」や「焼き麩」にも加工できる。とくに麩は日本料理に大事な素材だ。
 では、白濁して流れ出したでんぷんは捨てるのか。それはもったいない。でんぷんが沈殿したものを「正麩」、あるいは「生麩糊」といい、掛け軸や巻物、書画、屏風などの表具(表装)に重宝された伝統の接着剤なのである。文化財の修復には欠かせぬ材料で、日本絵画の修復にも役立つ。また、合板の接着剤にも使われる。
 小麦粉の用途には、人の意表を突くところがある。

  
和魂漢才・和魂洋才
 カステラは別名「南蛮菓子」。ポルトガル人が16世紀に長崎へ伝えたのが始まりという。やがて京都へ、江戸へと広がる間に、小麦粉(グルテン含有量の一番少ない薄力粉)に卵、砂糖、水あめを加えて焼き、しっとりとした日本人好みの風味に変わっていったといわれる。そういえば、奈良時代から平安時代にかけ中国から渡来した「唐菓子」も時を経るにつれ、そうめんなどへと変貌していったらしいから、日本人は昔から自己流改造名人なのだろう。



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