子供たちの小麦・小麦粉コーナー

みんなの小麦粉研究室

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小麦粉学T

世界でもっとも食卓をにぎわすもの―それは家族のはずむ会話、そして小麦粉。粉食ゆえ自在に姿を変え、舌と目を楽しませてくれる。さまざまな用途とともに、その魅力を5回にわたり紹介していこう。まずは、グルテンの王者・強力粉から。


パワーあふれる強力粉
 日本でも世界でも、小麦粉の最大用途はパンである。「パンを食らう人間ども」。古代ギリシャの詩人ホメロス(紀元前9〜8世紀)が叙事詩『オデュッセイア』でこう表現して3000年近く。そのころ文明の象徴だったパンと人との関係は、いまなお深い。
 小麦粉は主に、強力粉、中力粉、薄力粉と3分類される。このうちパンに一番マッチするのは、硬質小麦からとる強力粉だ。
 小麦には、コメやトウモロコシなど他の主要穀物にはない2種類のたんぱく質が含まれている。弾力に富むものの伸びにくい「グルテニン」、粘着力が強くて伸びやすい「グリアジン」がそれ。小麦粉に水を加えて練ると、この二つは合わさって「グルテン」を形成していく。グルテンの含有量やその強弱は小麦の品種や粉の種類によって微妙に違うのだが、だいたいの量は強力粉で約12%、中間質小麦をひいた中力粉は約9%、軟質小麦からえる薄力粉なら約8%となる。もっともグルテンパワーにあふれているのが強力粉である。
 なぜ、それが重宝なのか。パン生地(ドウ)はイースト菌の発酵(炭酸ガス)によって膨らむ。もし生地の弾力性が弱いと、風船がパンクするように破れてしまう。それでは、ふんわりと香ばしく焼き上がらない。
 中華メンやギョウザの皮、ピザなども強力粉でつくる。これらの醸し出す独特の歯ざわり、シコシコ感も弾力性がもとなのだ。
 ところで、小麦のルーツは、チグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア(ギリシャ語で「川の間」の意)地方という。この肥沃な三日月地帯で約1万年前、人類は野生の小麦に出会った。麦粒を焼いたり煮たりしながら、古代人はやがて粉食へたどりつく。粉を水で練っただけの「平焼きパン」から始めたと専門家はみる。発酵パンは紀元前3500〜3000年ごろ、古代エジプトで生まれたといわれる。
 人類はながい時をかけて小麦粉のよさをつかみ、用途を広げてきた。  (次回は中力粉)

  
ミニ製粉史
 石器時代、人類は野生の穀類を石片でつぶした。やがて、石をすり合わせる往復運動を思いつく。紀元前3000年ごろの古代エジプト王墓の副葬品や遺跡壁画には、女性や奴隷が平らな石の「サドルカーン」(サドルは「鞍」、カーンは「うす」)上で石片を前後させて製粉し、パンに焼く工程が残されている。硬い外皮(ふすま)を除き、胚芽、でんぷんとたんぱく質の詰まった栄養たっぷりの胚乳などを取り出すのはマンパワー頼みだった。


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