子供たちの小麦・小麦粉コーナー

みんなの小麦粉研究室

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粉学について考える




天ぷらとケーキ
 舌の先でとろける甘いケーキ。薄力粉である。パンやラーメンに向く強力粉、主にうどんに使われる中力粉と同じ小麦粉の仲間であることを一瞬忘れてしまいそうなやわらかさだ。小麦粉の魅力は、まさにこの多様性にあるといってよいかもしれない。
 小麦の特徴は一度粉にして食べることだ。調理は粉を生地にするところから始まる。小麦粉にたいする水の量により、水分が50%前後なら「ドウ」、その数倍の量で溶いたものを「バッター」という。当然ながら、バッターはトロリとし、流動性は高い。
 二つの生地の違いは、小麦粉独特のたんぱく質グルテンをどのくらい形成するかによっている。パンや麺は、グルテンをたくさん含む強力粉や中力粉をしっかり練り、粘弾性を引き出し、パン生地を膨らませ、コシのある麺にする方がおいしくなる。
 反対に、バッターはグルテンの少ない薄力粉を使う。ケーキなどを焼くとき、ゆっくり水で溶く。また、油脂やバターを加えるのだが、これらもグルテン形成を抑える働きがある。むろんケーキを膨らませるにはある程度のグルテンは必要なのだが、もしケーキやカステラ、マフィンなどに麺のような歯ごたえがあったら、口や舌は戸惑うことだろう。粉の性質、調理法、素材の組み合わせにハーモニーを発見した先人の知恵には、改めて感心させられる。
 たんぱく質の量が少なく、グルテンの質がソフトな薄力粉は、ケーキや天ぷらに向いている。
 もちろん良質の薄力粉であることは欠かせない。ケーキ作りで、大切なのは、オーブンでよく膨らみ、冷却後もあまり収縮せず、キメ細かくソフトな食感のケーキができる小麦粉即ち薄力粉が求められる。
 南蛮料理に起源を持つ「天ぷら」も薄力粉で作るのが最適である。霜柱を踏んだときのようなサクサクした衣も、「やわらかい粉」の食感そのものと言ってよいだろう。バッターを作りやすいようにあらかじめ調整した「天ぷら粉」を使うと、より簡単においしい天ぷらを作ることができる。
 それにしても、薄力粉は繊細である。         (次回は「パスタとグラタン」)

  
小麦粉はいつ日本に来たか
 小麦は約1万年前にメソポタミア地方で見つかり、シルクロードなどを経てアジアへ伝わった。日本における栽培は弥生時代とされるが、粉食は奈良時代に中国から入った唐菓子が最初らしい。当時は貴族階級や宗教儀式など用途は限られていたが、水田裏作として広がり、そうめん、うどん、冷麦など郷土の食文化として各地に定着していく。


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