子供たちの小麦・小麦粉コーナー

みんなの小麦粉研究室

44

小麦粉の不思議Ⅳ

 みんなが好んで食べるマカロニやスパゲッティはデュラム・セモリナから作られる。それはデュラム小麦を粗挽きしたものだ。なぜこんなにも好かれ、食べられるのだろう。


イタリアのマンマの味は世界に

 「パスタでも作って、もうけんかはやめようよ」。イタリア人は仲直りするとき、しばしばこう言うとか(池上俊一著『パスタでたどるイタリア史』岩波ジュニア新書)。家庭料理であるこの国民食をおいしくゆでてくれるマンマ(母)の深い愛情と味を思い浮かべ、寛容な心をということらしい。まさにパスタは偉大なり、だ。
 そのルーツは中国説、ギリシャ説、アラブ説と入り乱れ、定まらない。初めは小麦粉を水で練り、焼いたり揚げたりして板状(ラザーニェ)で食べていたとみられる。その後、「こねたもの」(伊・独語)を意味するパスタが庶民の味として定着し出すのは12~13世紀、地中海へ長靴のように突き出たイタリアから、という点では異論はない。
 折しも文化革新の風を予感させつつあった12世紀ルネサンス(再生)期で地中海沿岸はパスタにぴったりのデュラム小麦の主産地であった。
 デュラム小麦は「マカロニ小麦」とも呼ばれる。いくぶん黄色みがかった粒は大きく、硬く、半透明のガラス質。小麦粉にしかないたんぱく質グルテンをたくさん含みパン用小麦と同様、硬質小麦の一種で、乾燥地でよく育つ。グルテンは結合力が強く、適度の伸展性がある。その粗挽き粉(「セモリナ」という)は腰の強いアルデンテ(「歯ごたえがある」の意)の食感を生む。
 加えてスパゲッティ(ロングパスタ)などに和える具やソースの多様さは比類ない。肉、魚、野菜などいずれともマッチする。とくに大航海時代(15~17世紀)、ヨーロッパへもたらされた南米アンデス高地原産の赤いトマトは、パスタに風味と彩り、滋養を添えた。19~20世紀にイタリアで確立された押し出し式の乾燥めん製造技術と相まって、世界中へ広がっていく。
 日本へは文明開化の明治時代、マカロニ(ショートパスタ)の形でスープ素材として到来した。いまや明太子、タラコ、高菜、そして納豆まで使って作られている和風パスタのレシピは豊富だ。
 さらに近年、新たな効能も。砂糖や果物に多い単糖・二糖類のもつ肥満作用に対し、それとは異なる複合糖質(でんぷん質)ゆえのヘルシー効果がひとつ。また国際的な市民マラソン大会の前の食事会では、エネルギーの源であるグリコーゲンを取るのにパスタなどを食べているようです。                           
                                       

 <意外に古い小麦とのつきあい>
 人類が小麦を食べはじめて1万年以上といわれている。日本でも弥生式文化の中末期ごろには小麦や大麦が畑で作られており、このころから麦をなんらかの形で食べていた。4世紀の大和政権の時代には、玄米と共に麦、粟、稗などの穀類も主食にしていたようだ。
 さらに8世紀になると、朝廷が小麦や大麦などを畑で作ることを奨励しており、万葉集にも「小麦」という文字が出てくる。
 どんな形で食べていたかは別にして、日本人と小麦の付き合いは、かなり古いといえる。


  *今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。