小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


トルコ国旗に似せて作ったのが起源のクロワッサン

 「クロワッサン」は三日月の形をしていて、フレッシュバターの香りとサクッとした食感が特徴のフランスを代表するパンの一つです。発祥の地はフランスだと思われが ちですが、そうではないようです。
 1683年、オーストリアの首都、ウィーンの街はオスマン・トルコの大軍に3ヶ月も包囲されて、緊張状態にありました。ある日の真夜中のことでした。町のあるパン屋さんが、いつものように翌朝に間に合うようにとパンの生地を手でこねていますと、地面の下の遠くの方から妙な物音が響くように聞こえてきました。不審に思って、守備の軍営に走って行き、そのことを伝えました。
 なかなか落ちないウィーンの守りの固さに手を焼いたトルコ軍が、トンネルを掘って市内に侵入しようとしていたのでした。静かな真夜中に仕事を始めるパン屋さんの習慣が、ウィーンの街を危機から救ったのでした。このことを記念してウィーンのパ ン屋さんたちは、トルコ国旗の三日月紋様に似せた形のパンを作ったそうで、これがクロワッサンの原型と言われています。その100年ほど後、オーストリア皇女でフランスに嫁いだのちのマリー・アントワネットがパン職人と共にその製法をフランスに 伝えました。



デュラム・セモリナって何?

 スパゲティの袋に「デュラム・セモリナから作った」とか「原料はデュラム・セモリナ」などと書いてあるのがあります。
 デュラムというのは小麦の種類の一つです。現在、世界中で栽培されている小麦のほとんどが「普通系小麦」に分類され、細胞の染色体の数が42あるタイプで「普通 小麦(別名、パン小麦)」と「クラブ小麦」がこれに属します。一方、染色体の数が28しかない小麦は、1つの小穂に2粒しか稔実しませんので「二粒系小麦」、染色体の数が14しかない小麦は、1つの小穂に1粒しか稔実しませんので「一粒系小麦」と呼ばれます。こちらは普通系小麦に比べると、やや原始的な小麦です。
 二粒系小麦の中で唯一、多量に栽培されているのが「デュラム小麦」です。「マカロニ小麦」という別名があるように、マカロニやスパゲティ用に生まれてきたような小麦です。乾燥した土地での栽培に適しており、パスタの普及と共に、地中海沿岸、トルコ、旧ソ連地域、中央アジア、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンなど、広く栽培されるようになりました。小麦の粒が非常に硬いので、普通系の小麦のように製粉工程で細かい粉にしないで、粗い粒状のままで採り出して利用しています。この粗いざらめ状のものを「セモリナ」と呼びます。デュラム小麦から採った セモリナということで、「デュラム・セモリナ」と呼びます。
 デュラム・セモリナはキサントフィルという黄色色素を多く含み、粘る性質の独特なたんぱく質を含んでいますので、美味しいマカロニやスパゲティを作るのに適しています。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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