小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


サンドイッチをお茶で

 18世紀のイギリスにジョン・モンタギュー・サンドイッチという貴族がいました。この人はバクチが大好きで、ゲームをやりながら食べられるようにと、召使に命じて、上等の薄切りしたパンにローストビーフを挟んだものを作らせました。これが「サンドイッチ」という呼び名の起源のようです。その後、名探偵のシャーロック・ホームズも、犯人捜しがうまく進展しない時などに、サンドイッチをパクついたと記されています。
 クローズドサンドイッチ、ロールサンドイッチ、クラブサンドイッチ、オープンサンドイッチ、カナッペなど、いろいろな種類があります。ハンバーガーもサンドイッチの一種だと言えます。
 イギリスには、「サンドイッチをお茶で」という言葉があります。イギリスの家庭に夕方招かれて、サンドイッチを中心にした軽い料理つきの食事をご馳走になったら、ちょっと要注意です。サンドイッチをいただいた後にケーキとお茶が出ますが、お茶を飲んでからもう一度サンドイッチをつまむのは、エチケット違反のようです。「サンドイッチをお茶で」というのは、行儀知らずという意味だそうです。



グルテンはパンの鉄筋

 小麦粉に適量の水を加えてよくこねると、「小麦粉生地(ドウ)」と呼ばれるものになります。この生地を水の中でもみほぐすと、白いでんぷんが出てきます。新しい水で何回ももむように洗うと、ぶよぶよしてふやけた塊が残ります。これが「グルテン」です。ふわふわしていますが、引っ張るとかなりの弾力があります。手のひらに乗せて、中心部や表面の水分を絞り出すと、べたべたとくっつくようになって、チューインガムをかんだときの状態に似たものになります。こうやって小麦粉から取り出したグルテンは、粘りと弾力の両方の性質を備えたおもしろい物質です。
 小麦粉の中にはグルテニンとグリアジンというたんぱく質が多く含まれています。小麦粉に水を加えてこねていくと、この2つのたんぱく質が結びついて、グルテンが作られるのです。
 パン作りでは、生地の中にできたグルテンが次第に薄い膜になり、気泡を包み込みながら、網目のような繊維状になります。イーストが発酵して出した炭酸ガスとアルコールはグルテンとでんぷんで出来ている生地を押し広げる働きをして、膨らませます。生地がオーブンに入って熱が加わると、最後のガスが出て、よく伸びたパンに仕上がります。グルテンの網目状の組織は熱によって変性して固くなり、パンの中にしっかりした骨組みが出来たようになります。パンが冷めても小さく縮まないのは、鉄筋コンクリートに例えますと、グルテンが「鉄筋」の役割を果たしているからです。もちろん、でんぷんはコンクリートの役割をしています。グルテンとでんぷんがそれぞれの役割を果たしていますので、ふんわりと膨らんだ、おいしいパンができるのです。
 ですから、パンを作るときには、たんぱく質の量が多くて、その質が良い小麦粉を選んで使うようにします。
 めん類に独特の歯応えのある食感を与えるのも、グルテンの働きによるものです。
 小麦のほかにもいろいろな穀物がありますが、それのどれにもグルテニンとグリアジンというたんぱく質が揃っていませんから、グルテンができません。グルテンが出来るのは、小麦粉だけが持つ素晴らしい特性なのです。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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