小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

そうめんは細さと味の芸術品

 海外旅行に出かける日本人の多くがまず食べたくなるのは、「めん類」のようです。暑い夏の日の冷えたそうめんの喉越しの良さ、寒い冬にフーフー言いながら食べる鍋焼きうどんの味わいは、日本独特のものです。そこでは、滑らかで、軟らかいけれど弾力のある独特の食感のめんが、つゆや具との組合せの中で生きています。

  ラーメンやパスタに対して、日本に昔からあるうどんやそうめんなどは「日本めん」と総称されています。日本めんにもいろいろな太さのものがあり、細い方から、「そうめん」、「ひやむぎ」、「うどん」、「ひらめん」と呼ばれます。その太さは裁断する時に使う切刃の「番手」で決まります。切刃の30 mm幅の部分から等分に切り出されるめんの本数を「番手」と言い、日本工業規格(JIS)で定められています。例えば、10番の切刃を使うと、幅が3mmのめんが10本出てきます。ひらめんは4〜6 番、うどんは8〜16番、ひやむぎは18〜24番、そうめんは26番以上で切ります。従っ て、1本のめんの幅は、そうめんが1.00〜1.15 mm、ひやむぎが1.25〜1.67mm、うどんが1.88〜3.75 mm、ひらめんが5.00〜7.50mmという計算になります。

  ひやむぎとそうめんの厚さは、幅とほぼ同じか、やや薄めです。ゆでうどんでは厚さと幅がほぼ同じか、やや厚さの方が薄めですが、うどんを乾めんにする場合には、厚さを幅の1/4〜3/4くらいにします。ひらめんでは厚さが1.2〜2mm程度です。ひらめん以外では、丸刃を使って切る断面が丸形のめんもあります。手延べそうめんはロールや切刃を使わないで手で何回も繰り返し延ばして細くしていきますが、26番の切刃で切る以上の均一な細さに仕上がります。



農林10号は緑の革命の立役者だった

 最近、国内産小麦の品種改良が精力的に行われていますが、かなり以前にも地道な育種が行われていました。昭和10年にデビューした「農林10号」という小麦は、背丈が低く、多肥にも強くて倒伏せず、収量が高い品種でしたが、日本ではなぜかあまり注目されず、普及もしませんでした。

 第二次世界大戦後に、日本の小麦品種がたくさんアメリカへ渡りましたが、アメリカの育種家たちはこれらの中から農林10号に注目しました。1961年にワシントン州 で、これを一方の親とした背丈が低くて倒伏しにくい有名な「ゲインズ」という菓子用白小麦の新品種が生まれました。その後、その遺伝子がメキシコの国際トウモロコシ・小麦研究所へ持ち込まれて、それを材料にしたいくつかの新しい小麦品種が作られました。

  さらに、これらの新品種はインド、パキスタンなどへ持ち込まれて幅広く栽培されるようになり、その地域の小麦生産量の増加に大きく貢献し、「緑の革命」と賞賛されました。このプロジェクトの成功によってメキシコの研究所のボーローグ博士はノーベル賞を受賞しました。このような大事業を達成できた陰の立役者が日本で開発された農林10号だったことはあまり知られていませんが、それが持つ特性を見逃さなかったボーローグ博士らのけい眼はさすがだと思われます。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。