小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


チャパティは平焼きパンの代表

 インドなどの暑い国々では、チャパティを主食にしている人々が多くいます。小麦の全粒粉か、小麦からふすまを5%くらい除いた「アタ」と呼ばれる粉で作ります。これらの粉に微温湯を加えて手でこねて生地を作り、少しねかせてから薄く広げて鉄板の上で焼きます。柔らかいせんべい状のものです。これを適当な大きさにちぎり、親指と2本の指で料理を包み、挟むようにして口へ運びます。発酵をしていませんが、世界ではこれもパンの仲間に入れて、「平焼きパン」と呼んでいます。
 インドあたりで生産される小麦はたんぱく質の量が多くなく、発酵パンには向きませんが、平焼きパンなら特に問題なく作れるようです。暑い所では発酵パンは作りにくいということもあります。先祖代々の生活の知恵が生んだ食べ方といえるでしょう。しかし、良質のチャパティを作るには、軟質系統で、ややたんぱく質の量が多めの小麦からの粉が適しているといわれています。
 チャパティを油揚げしたポーリィ、植物油を生地中に畳み込み、鉄板上で焼くパラタもあります。イラクなどのナンは、手製の発酵剤を入れ、粘土製のかまで焼く発酵パンです。



小麦胚芽は栄養の宝庫

 小麦の粒は、粉になる「胚乳」、ふすまになる「皮」と、生命の源である「胚芽」から出来ています。胚芽は粒全体の約2%だけですが、「栄養の宝庫」だといわれています。そこから芽が出て次の世代が生まれますので、生命の維持に必要な五大栄養素を豊富にバランス良く含んでいるほかに、ビタミンやミネラルも豊富にあります。

 小麦胚芽成分の約4分の1はたんぱく質で、必須アミノ酸のリジンやロイシンを多く含んでいます。胚芽中に2〜3%含まれている繊維には、血中コレステロールを低下させる作用や、腸がんを抑制する作用も認められています。ビタミンEとB群(特に、B1とB6)を多く含んでいます。脂質も10%くらい含まれていて、脂肪酸の約半分は栄養的に価値が高い不飽和のリノール酸です。

 胚芽は生のままでは変質が早いので、新鮮な生胚芽を加熱処理するか、脱脂したものが、粒状か、粉末状で、気密容器に真空包装したり、窒素充填して市販されています。香ばしい風味と軽い食味感がありますので、そのまま食べてもよく、卵焼き、オートミールなどの料理に加えることもできます。ジュースや味噌汁に入れてもよく、パン、ビスケット、クッキーなどに加えた胚芽入り製品も好評です。

 最近注目されている胚芽油は、胚芽から抽出します。必須脂肪酸で不飽和のリノール酸とビタミンE、特に、生理活性が強いα‐トコフェロールを多く含んでいます。リノール酸は細胞膜成分として重要なほか、血中コレステロールを低下させる作用があり、さらに、体内で一種のホルモンに変わって、広範な生理作用に関与します。リノール酸は酸化されやすいのですが、胚芽油中にあるα‐トコフェロールがそれを防ぎます。ビタミンEはこのような抗酸化作用のほかに、貧血を防ぐ働きや、ホルモンの分泌を促し、体内の機能を調整する働きがあり、体内の酸素消費を有効にコントロールし、筋肉の持久力を増加させるといわれています。

 胚芽油は、カプセルで包んだもののほか、ドレッシングなどの料理用も市販されています。医薬品の原料としても使われます。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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