小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

パンとビール

 ドイツには,「ビールは液体のパン」ということばがあります。ビール好きな人が多いこの国のことですから,うなずけます。一方,火が良く通ったヨーロッパのパンは,ビールのつまみとしてもなかなかの美味です。
 紀元前3千年ころの暑い季節のエジプトでのことでした。いつものように小麦全粒粉と水をこねて生地を作りましたが,どういうわけか,すぐにオーブンで焼かないで,放って置いたのだそうです。なにしろ気温が高いところですから,間もなく生地はぶくぶくと大きく膨らんでしまいました。ところが,それをオーブンで焼くと,それまで食べていたのよりもやわらかくておいしいパンが出来ました。これが発酵パンの始まりだといわれています。
 このような発酵パンをちぎって,水に浸して発酵させたものをビールとして飲んだり,そのビールからパン種(だね)を作って,パンを焼くことも行われていました。
 このように,昔も今も,パンとビールは密接な関係にあるのです。



うどん粉とメリケン粉

 江戸時代以前から,国内産小麦から挽いた粉は,うどんやそうめんに加工されていましたので,「うどん粉」と呼ばれて親しまれてきました。
 一方,明治時代の後半になって,アメリカ産のたんぱく質の量が多い小麦粉が輸入され,食パンなどの原料として使われるようになりました。この粉は,それまで使っていた国内産のうどん粉とは品質や用途がかなり違うこともあって,「メリケン粉」と呼ばれて区別されるようになりました。「メリケン」というのは,「アメリカの」という意味の英語の「アメリカン」から生まれたことばです。

 小麦粉の形で輸入することがほとんどなくなった今日では,うどん粉やメリケン粉のような言葉は意味がなくなりましたので,これらすべてを「小麦粉」と呼ぶのが適当です。今でも,何となくこれらのことばが愛称として使われることがあります。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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