小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

ドーナツの穴はなぜ開いているの?

 小麦粉から作るオランダの円形の揚げ菓子で真ん中にクルミをのせたものがありますが,これが英語の「ドー(生地)ナッツ(クルミ)」の起源のようです。イギリスの清教徒たちがメイフラワー号でアメリカ新大陸へ渡る途中に,オランダに立ち寄りました。彼らはそこでこの菓子の作り方を覚えたようです。アメリカへ渡ってからは,クルミが手に入らなかったため,それを使う代わりに真ん中に穴を開けて油で揚げたと伝えられています。
ドーナツの穴の起源については,もう一つの説があります。19世紀中ごろのアメリカに,グレゴリーという名前の船長がいました。彼が子供のころ,母親が油で菓子を揚げてくれましたが,中心部まで火が通っていませんでしたので,一計を案じて真ん中をくり抜いて揚げてもらったのが始まりだとも言われています。
真ん中に穴を開けて油で揚げたこの伝統的なドーナツから,さまざまなタイプのドーナツが生まれました。大きく分けると,膨剤で膨らませるタイプのケーキドーナツと,イーストを使って膨らませるイーストドーナツがあります。形,色,味,表面の飾りつけ,内部の詰め物などに変化を持たせた多種類のドーナツがドーナツショップに並んでいて,私たちを楽しませてくれます。



●パンは硬質小麦から

 小麦は世界中で最も多く作られている作物です。現在,1年間に5億8千万トンも生産され,世界中の人たちが小麦を挽いて出来た小麦粉を食べています。一口に小麦といっても,栽培される土地の気候風土や播く品種によって,性質がかなり違います。
小麦は大きく硬質(ハード)小麦と軟質(ソフト)小麦に分けられます。文字通り,粒の硬さが違います。硬質小麦の粒の内部ではでんぷんやたんぱく質が比較的密に詰まった状態になっていますが,軟質小麦ではそれほど密には詰まっていません。こういう粒内部での成分の詰まり具合の差は遺伝的なものですので,播く品種を選ぶことによって作り分けることができますが,硬質小麦の栽培に適した土地と軟質小麦に適した土地があります。アメリカの中央北部からカナダにかけては,世界で最も優れた硬質小麦の産地です。
硬質小麦は一般にたんぱく質の量が多く,生地にした時に力が強いのでパンや中華めん用に使われます。軟質小麦はたんぱく質の量が少なくその質がソフトなので,菓子やめん(うどん)の原料になります。
硬質小麦でもたんぱく質の量があまり多くないものを,準硬質(セミハード)小麦と呼ぶことがあります。日本の小麦のほとんどは軟質系統ですが,たんぱく質の量が通常の軟質小麦よりやや多めですので,中間質小麦と呼ぶことも多いようです。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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