小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

日本生まれのあんパン
 明治5年(1872年)に東京の銀座で,今の木村屋総本店の創始者,木村安兵衛が,「あんパン」を売り出しました。日本古来の酒種によって発酵させた小麦粉生地であずきあんを包み,オーブンで焼いたものでした。珍しさとおいしさが大変な人気を呼び,買い求めようとする人たちで銀座通りには行列ができたそうです。
 「へそパン」という愛称があったそうですが,真ん中を少しくぼませたり,そこに塩漬けした八重桜の花を乗せたりしたほか,つぶしあん入りのパンには表面にケシの実をつけるなど,形や味に特徴を持たせました。今でも,この伝統は守られています。
 明治30年代の終りころになって,同じ木村屋から「ジャムパン」が,東京・本郷にあった中村屋(現在の新宿中村屋)から「クリームパン」が登場しました。西洋と東洋のものを巧みに融和させてできたあんパンは,日本人の知恵が生んだ傑作と言えましょう。パリなど,海外でも人気が出ていますし,日本でもそのおいしさが見直されて,いろいろと工夫を凝らした製品が売られています。



麩は伝統的な植物性たんぱく食品

 「焼麩」や「生麩」は,小麦のグルテンが持っている特性を上手に活用した日本の伝統的な植物性たんぱく食品です。
 焼麩は,産地によって形や食感に特徴があり,作り方も違います。いろいろなものがある中で,山形県の東根や長井,新潟県などで作られている「車麩」,新潟県の「白玉麩」,山形県の庄内地方名産の「庄内麩」(「板麩」とも言います),京都の「京小町麩」,「花麩」などが有名です。
 強力小麦粉と水をこねてできた生地を水洗いして,グルテンだけを採り出します。このグルテン100に対して,小麦粉を50〜100と膨剤を少し加えてよくこね,焼麩用の生地を作ります。加える小麦粉の種類や量は,焼麩の種類や品質によって変えます。もっと多くの小麦粉を加えることもありますし,「金魚麩」のように小麦粉を加えないでグルテンだけで作るものもあります。
 生地を一定の重量に分け,しばらくねかせてから,水に漬けます。これを成形して専用のかまで焼くと,大きく膨らんだ焼麩が出来上がります。
 味付けして煮たり,すまし汁や味噌汁に入れることもできます。料理の付け合せとしても使えます。おいしさ,使いやすさに加えて,植物性たんぱく質を多く含む食品だという栄養的な価値がありますので,食事の中でもっと活用したいものです。
 小麦粉から採り出したグルテンに少し加工したものが,「生麩」と呼ばれて,日本料理屋などで使われます。生麩にもいろいろあり,グルテンに小麦粉かもち粉を少し入れ,それにアワ,ソバ,ヨモギなどを混ぜた「京生麩」,生グルテンをゆで,冷水で冷やした「津島麩」(大徳寺麩)などが代表的なものです。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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