小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

室町時代からの「めん」
 めんは日本で生まれたものではなく、中国から伝来した小麦粉食品です。飛鳥朝時代に伝来したと推定されていますので、今から千年以上も前から、日本人は「めん」を食べていたことになります。
 中国からの伝来食品の中にあった索餅(むぎなわ)は「麦縄」とも書き、小麦粉と米粉に塩水を加えてこね、縄のように細かくねじったものでした。そうめんやひやむぎの原形と考えられています。
 室町時代の「庭訓往来(ていきんおうらい)」という書物には、饂飩(うどん)、素麺(そうめん)、基子麺(きしめん)などの名前が登場しています。このころにめん類は日本独自のものに育っていったようで、この時代の饂飩が現在のうどんの元祖と考えられています。製法も、基本的には現在のうどんのそれとほぼ同じです。
 しかし、この頃までのうどん類は公家や武家が仏事の集会などに使ったやや特殊な食べもので、庶民の食べものになったのは江戸時代からです。その後も、庶民的な小麦粉食品としてめん類は発展を続けました。



バゲットの魅力は焼きたて

 棒や杖というフランス語の意味のとおり、バゲットは細長い形をした代表的なフランスパンです。材料は準強力クラスの小麦粉、食塩、イースト、水だけで、表皮のパリッとした食感や香ばしさ、中身のサクッとした味わいが特徴です。オーブンの中で良く膨らむように、表面にナイフで切り込み(クープ)をいくつか入れてあります。
 フランス都市部の家庭では、ブーランジェリーと総称される手作りのベーカリーから焼きたてのバゲットを買ってきて食べる習慣があります。3〜4cmに切って料理に付け合せて食べることが多いようですが、砂糖や油脂が入っていないさっぱりした味ですので、料理の引き立て役として最適です。
 最近のフランスでは、手づくりベーカリーが減って、大きな工場でつくったバゲットの冷凍生地が使われるようになっています。スーパーマーケット内のパン店でこの冷凍生地から焼いたパンを消費者が買って帰るケースが増えています。バゲットのように砂糖や油脂が入っていない冷凍生地で手づくりと同じ食感のパンをつくるのには、かなりの技術を必要としますので、消費者が食べるバゲットの品質が以前とは微妙に違っていることが多いようです。そのためか、フランス人が食べるバゲットの消費量は減り気味です。
 日本では、バゲットの人気は上昇中です。フランスのように焼きたてが消費される場合には、本場と同じようなたんぱく質含有量が少なめの小麦粉が使われ、少し時間が経ってから消費される場合には、たんぱく質含有量が多めの小麦粉が使われるなど、日本独特の工夫がされています。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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