小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


小麦には赤と白がある

<赤小麦> <白小麦> <デュラム小麦>

 小麦は外皮の色合いによって、「赤(レッド)小麦」と「白(ホワイト)小麦」に分類されます。外皮に赤又は赤褐色系統の色素を多く持つものが赤小麦ですが、「赤」と言っても実際の色は褐色です。一方、この色素が少なくて黄白色の色合いのものが白小麦です。このような外皮の色合いはそれぞれの品種に特有のものです。
 同じ赤小麦品種でも、生育期の後半に雨量が少なくて、強い日照や高温が続きますと、濃い褐色になりやすく、このようなものを「ダーク」と呼んで仕分けすることも行われています。逆に、雨量が多いと粒の中にでんぷんが十分に形成され、外皮の色も淡い褐色になりやすいですから、そのようなものを「イエロー」と呼ぶことがあります。一般に、硬質小麦の場合には、たんぱく質の量が多いダークな色合いの小麦の方が、たんぱく質の量が少なめのイエローな色合いの小麦よりも、パンへの適性が高いと言えます。一方、軟質小麦では、同じ黄白色でも褐色を帯びたような色合いになりますと、たんぱく質の量が多くなる傾向があるため、菓子用としては好まれません。
 パスタに使うデュラム小麦はほとんどの品種が白小麦ですが、たんぱく質の量が多いと琥珀色に見えますので、その色を表わすのに「アンバー」という言葉が使われます。
 オーストラリアの小麦はすべて白小麦です。北アメリカ大陸の小麦は、デュラム小麦と太平洋岸北西部の3州およびミシガン州の白小麦を除いて、大部分が赤小麦です。日本の小麦はすべて赤小麦です。
 製粉しやすくて、粉になる胚乳の色がきれいなら、外皮の色が赤でも白でもあまり関係ないようですが、めん用のようにきれいな明るい色が珍重される用途では、白小麦の方がやや有利です。オーストラリアの小麦がアジアのめん用として評価が高いのは、でんぷんの性質がめんに向いていることのほかに、白小麦であることも関係があります。そのため、アメリカやカナダでもアジアのめん市場向けの硬質白小麦の育種が盛んです。インドやパキスタンのように皮を少し除いただけの全粒紛に近い小麦粉を常食にしているところでは、皮の色合いが淡い方が焼き上がったチャパティやナンがきれいに見えますので、好まれます。
 外皮の色は見ればわかりますので、検査や取引に使われています。慣れると、外皮の色合いの微妙な濃淡からたんぱく質の量を推定することもできます。


神に捧げるパン

 古代ギリシャ時代には、天変地異や戦の時に、神に牛などの生き物を捧げていましたが、紀元前2000年ごろの古代エジプト人は牛やカバなどをかたどったパンを作り、祭壇に供えました。古代エジプト人は死後の世界をかたく信じており、彼らにとってパンは大切な死後の食料でしたので、お墓には必ずパンを埋葬したようです。
 ただし、パンといっても小麦全粒紛と水をこねたものをオーブンで焼いただけの無発酵パンでした。当時は、酵母(イースト)を使わないのが清浄だと考えられていたようです。
 パンとキリスト教との関係も深いものがあります。イエスが最後の晩さんで、テーブルかけの上にじかに置かれたパンを取り上げ、祝福して分割し、「取れ、これは私のからだである」と言ったと伝えられています。このときのパンは、丸くて、十文字の割れ目が入っていたと推定されます。
 ヨーロッパの田舎に行くと、パンにまつわるいろいろな習慣が残っていますし、何か行事があるとパンを捧げることも多いようです。結婚式の後で、新婚ほやほやのカップルに焼きたてのパンをあげたり、葬式や新しい司教が着任したときなどにも、パンが供えられます。ナイフでパンに十字架を刻んで、感謝の祈りを捧げてから食べる家庭もあるといいます。
 ドイツの一部の地方では、かなり以前から、キリスト教の聖日になると、その聖日の行事の模様を図柄にして彫った木版をパン生地に押してパンを焼き、それを食べて、祈りを捧げています。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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