小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

シューはキャベツ
 人気の洋菓子「シュークリーム」は、フランス語ではchou la crmeです。chouはキャベツを意味し、形が似ているところから名付けられました。つまり、キャベツの形をしたクリーム入りの菓子です。アメリカではcream puffともいいます。シュー生地を天板の上に絞り出し、焼き上げてから切れ目を入れてカスタードクリームか泡立てた生クリームを詰めます。
 シュークリームでは皮が命です。水とバターを火にかけ、湯が沸騰してバターが完全に溶けてから、小麦粉を混ぜてシュー生地を作ります。これを少し冷ましてから卵を加えて天火で焼きます。
 シュー生地作りには、2つの重要なポイントがあります。第一は、生地の中で小麦粉のグルテンが形成され過ぎないようにすることです。バターを完全に溶かしておくと、小麦粉とバターがなじんで、滑らかで適度なグルテンを形成しやすくなります。第2は、軟らかく、ふっくらと焼き上げるために、小麦粉中のでんぷんを十分に糊化させる必要があります。小麦粉を加えるときの温度が低いと、生地の温度も低くなり小麦粉中のでんぷんが十分に糊化できませんので、良い形に焼き上がりません。生地が冷めすぎないうちに絞り出して焼くことも、糊化したでんぷんを生かすうえに必要です。
 小麦粉は薄力粉と強力粉を混ぜて使うのが一般的で、さっくりした食べ口にするのには薄力粉を、大きく膨らませるのには強力粉をそれぞれ増やして使います。


春小麦と冬小麦

 小麦は栽培する時期によって、春小麦と冬小麦に分類できます。秋に種を播いて次の夏に収穫するタイプを「冬小麦」、春に播いて秋に収穫するタイプを「春小麦」と呼んでいます。
 世界の小麦の大部分が冬小麦として栽培されています。春小麦として栽培しますと、畑での生育期間が短いこともあって、単位面積当たりの収穫量が冬小麦の場合の3分の2くらいになります。そのため、冬季の寒さが特に厳しい地域を除いて、冬小麦として栽培されています。春小麦として小麦を栽培しているのは、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、およびCISの北部、カナダや北海道の一部などの限られた地域だけです。
 たんぱく質の量が多い硬質のパン用小麦の場合、現在市場に出回っているものを見ますと、一般に、春小麦の方が冬小麦より製パン性が優れています。特に、日本の食パンのようにグルテンが持つ力をフルに活かしてパンを作る場合には、その差がはっきり出て、春小麦の方が良いパンを作りやすいといえます。このような差は、たんぱく質の一つであるグリアジンの性質の差によるもののようです。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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