小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

セルフライジング・フラワーはプレミックスの元祖
 独立戦争(1775〜76年)当時のアメリカでは、 パンやパンケーキを家庭で毎日焼くのが当たりまえでした。       そのアメリカで、小麦に少量のベーキングパウダーを混ぜた便利な粉が考案されたのは1848年のようで、やがて南東部で販売されるようになりました。ベーキングパウダーを買い、量ったり、混ぜたりする手間が省けますし、上手にできやすいため、爆発的に流行しました。
 これが「セルフライジング・フラワー」と呼ばれるもので、菓子などをつくるのに便利なように、あらかじめ小麦粉に膨材(ベーキングパウダー)を混ぜたものです。和訳すると、「膨材入り粉」というところです。
 長い間、主として南東部で販売されていましたが、1955年〜1965年ころから北部や西部の主な都市でも買えるようになりました。
 アメリカ合衆国の食品定義によりますと、「小麦粉、重炭酸ナトリウム(いわゆる重曹)に、酸性反応物質(リン酸1カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム・ナトリウムなど)の1種類以上をよく混ぜたもので、食塩も添加される」と記載されています。配合の一例としては、小麦粉100に対して、重炭酸ナトリウム1.375、リン酸アルミニウム・ナトリウム1.75、および食塩2.25を加えたものがあります。
 このセルフライジング・フラワーは日本では普及しませんでしたが、現在、どこのスーパーマーケットや食料品店でも数多くの種類が販売されているホットケーキミックス、天ぷら粉などのプリペアードミックス(プレミックス)の元祖と言えるものです。栄養強化セルフライジング・フラワーにはビタミンB群、鉄、カルシウムなどが添加されています。


洋菓子の名前いろいろ

 江戸時代後期にフランス人などが伝えた洋菓子は、100年以上の年月を経て日本人の食生活に溶け込み、なくてはならないものになりました。しかし、伝来の経緯と商品の性質から、それらの名前は外国語に由来するものがほとんどです。
 栗のピューレをのせた「モンブラン」は、フランスから伝えられたケーキです。イタリアとフランスの国境にあるアルプス最高峰のモンブラン山から名付けられ、フランス語でモンは山、ブランは白を意味します。
 「ミルフィーユ」はフランスから来たパイ菓子で、パイにカスタードクリームなどを挟んだものです。フランス語でミルは千、フィーユは葉や紙片を意味し、薄い層がたくさん重なっていることを示します。
 結婚式の引き出物にも使われる「バウムクーヘン」はドイツに古くから伝わる祝い菓子です。鉄の棒に菓子の生地を巻きつけて回転しながら焼き、幾層にも焼き重ねするため、切り口が樹木の年輪に似た形になっています。ドイツ語でバウムは樹木を、クーヘンは菓子を意味します。
 「パルミエ」はシュロの葉形をした甘いクッキーで、パリの名物の一つです。フランス語でパルミエはヤシ(椰子)という意味です。
 オーストリア・ウィーンのオペラ座の隣にあるザッハーホテル横の店に行くと、有名な「ザッハートルテ」を買うことができます。ウィーン会議(1832年)の時の宰相だったメッテルニヒがエドワード・ザッハーに命じて作らせたのが始まりと言われています。
 「サバラン」は発酵した生地をリング型に焼き上げ、ラム酒入りシロップをしみ込ませたケーキです。フランスの美食家だったブリア・サバランにちなんで名付けられました。
 貝殻状の型に入れて焼き上げた「マドレーヌ」はフランスのバターケーキの一種です。小麦粉に卵、砂糖、バターなどを多く配合してつくります。考案者のマドレーヌ・ポルミエの名前をとったようです。
 「シャルロット」は型の内側にビスケットやパンを張りつけ、果物・クリームなどを詰めたフランス料理のデザートです。シャルロット王妃の名前が付いています。
 「パウンドケーキ」は小麦粉、砂糖、卵、バターをそれぞれ1ポンド(パウンド)混合してつくったことから、ワンパウンドケーキと呼ぶ代わりに、短縮形で呼ばれるようになりました。イギリスでよく食べられています。生地にレーズンを混ぜ、ケーキの表面をチェリー、アンゼリカ、プラム、レモンピーなどで飾ったものが多いようです。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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