小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

マフィン売りのベルの音
 イギリスの田舎で生まれたイングリッシュ・マフィンは、朝食やティータイムに食べられる大衆的なパンです。イギリスの街頭では、今でも、マフィン売りが鳴らすベルの音が聞こえることがあります。
 小麦粉に、イーストかベーキングパウダー、砂糖、食塩を加える単純な配合でつくるのが基本ですが、バターやミルクを加えるなど、さまざまな配合やトッピングを楽しむことができます。丸めた生地をマフィン用の焼き型にのせて焼きます。
 膨らみは小さいですが、内部の気泡が大きいことが特徴です。ナイフで横から2枚に切り開いて、バター、ジャム、マーマレード、ハム、ベーコンなどをはさみ、温かいうちに食べるのがおいしいようです。
 スナックにも、家庭での食事にも向き、いろいろなバリエーションが可能なマフィンは、アメリカに渡って人気がでました。アメリカのものは配合がリッチで、種類が多く、生地をカップ型に入れてオーブンで焼きます。ブルーベリーを入れたマフィンも人気商品の一つです。日本でも好んで食べられるようになりました。


アメリカで注目されている小麦全粒粉

  「アメリカ人のための食事ガイドライン」の2005年版が、1月12日に合衆国農務省と保健・福祉省から公表されました。このガイドラインは5年ごとに改訂されており、前回の2000年版は、食べた方がよい食品の種類と量をピラミッドの形で分かりやすく示したことで知られています。
 アメリカでは、肥満の人がますます増え、深刻な社会問題になっています。そのため、今回の改訂版では、エネルギー摂取量の管理と好ましい食品をバランスよく食べることに重点を置き、さらに積極的に運動量を増やすよう勧告しています。
 運動量については、日常的な活動のほかに、1時間に4.8〜6.4キロメートルの速さで、1日に2.4〜4.8キロメートル以上歩くことに相当する運動をすることを勧めています。その上で、性別、年齢別、運動量別のカロリー必要量を示し、カロリーを摂り過ぎないように警告しています。
 また、食べてほしい食品グループとして、果物、野菜、および穀物を挙げ、1日に食べるべき量を示しています。穀物については、カロリー必要量が2,000キロカロリーの人は6オンス、最高の3,200キロカロリーの人は10オンスです。さらに、その半分は小麦全粒粉などの全粒穀物製品を食べ、残りの半分はビタミンなどをエンリッチした穀物(小麦粉など)を食べるように勧告しています。
 アメリカでは野菜などから食物繊維を摂りにくいので、穀物をエネルギー源としてだけでなく、食物繊維源として見ざるを得ない状況のようです。食事ガイドラインによりますと、小麦全粒粉100グラムには12.2グラムの食物繊維、405ミリグラムのカリウム、138ミリグラムのマグネシウム、34.0ミリグラムのカルシウムなどが含まれています。
 「小麦全粒粉」というのは、文字通り小麦全粒を粉にしたものです。かなり前の話ですが、アメリカ南部でGrahamさんという医師が、小麦全粒粉が健康に良いと言って、その普及に努めました。その後、この医師の名前にちなんで、小麦全粒粉のことを「グラハム粉」とも呼ぶようになりました。
 粗く砕いたもの、小麦粉の中に大きめの皮が混ざっているもの、特殊な粉砕をして全体を粉状にしたものなどをつくることができます。小麦の種類を変えて、パン用や菓子用に向くようにした全粒粉もあります。ただし、日本でも、アメリカでも、まだ需要が少ないので、どこででも買えるほど普及していません。
 また、全粒粉でつくったパンなどは、普通の小麦粉からの製品に比べると食感が異なります。さらに、加工しにくいため、かなりの技術的な工夫が必要です。アメリカの人たちが、今回改訂された食事ガイドラインに沿って小麦全粒粉のパンなどをもっと食べるようになるのか、今後の動きに注目したいところです。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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