小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


小麦の銘柄と品種は違う
<硬質小麦>  <軟質小麦> <中間質小麦>

 「ホクシン」や「農林61号」は、国内で作られている小麦の代表的な品種の名前です。人類は長い年月をかけて小麦の品種改良を行い、優れた農業特性と使いやすい品質特性を備えた品種を数多く作り出してきました。遺伝的な形質が同じ一群の小麦を「品種」と呼んで、名前を付け、遺伝形質が異なる他の小麦と区別しています。
 同一品種の小麦を限られた範囲の土地で栽培すれば、同じような品質の小麦が出来ますので、国内のように産地から製粉会社が遠くない場合には、産地を限定し、品種名を指定して小麦を買うのが一般的です。大量生産のアメリカでも、収穫期に製粉会社の担当者が農村を回って、品種と品質を確認して買付けているのをよく見かけます。製粉会社は買った小麦の品質をよく調べた上で、目的の小麦粉を作れるよう、配合して使います。
 しかし、国際的に何万トンという大量な小麦が動く場合には、そういうわけにはいきません。特定の産地の小麦をスポット買いする場合は別ですが、通常は、安定した品質の小麦が継続的に大量に供給される必要があります。また、用途によって必要な小麦の品質が異なりますので、取引に際しては、どういう特性の小麦かがおおよそ分かる必要もあります。
 そのため、ほとんどの小麦生産国では、取引に便利なように「銘柄」と「等級」で仕分けしています。銘柄は、一定の地域で生産され、品質的な特徴がある範囲に入る品種の小麦の集合体に付けられる名称です。つまり、銘柄には品質が似ているいくつもの品種が混ぜられています。銘柄によって、どういう品質特性の小麦か、どういう用途に向くのかが、おおよそ分かります。小麦輸出国では、植物学的な分類、生産や品質上の特徴、生産地域名などを示す単語の中から2〜3語を組合わせて銘柄にしている場合が多いようです。
 例えば、パン用として最も優れていると評価されている「カナダ・ウエスタン・レッド・スプリング小麦」という銘柄は、カナダ西部地区産の赤色春小麦という意味です。アメリカの「ハード・レッド・スプリング小麦」という銘柄は、硬質赤色春小麦であることを、「ハード・レッド・ウインター小麦」は硬質赤色冬小麦であることを示しています。パスタ用小麦の銘柄の中には「デュラム」という単語が入っていますが、この場合はデュラムという小麦の種を表す普通名をそのまま用いています。アメリカのワシントン州とオレゴン州に生産され、菓子用として評価が高い「ホワイト・クラブ小麦」というのも、同じく小麦の種を表す「クラブ」という普通名と白色という単語を組合わせています。
 「オーストラリア・プライム・ハード小麦」や「カナダ・エキストラ・ストロング小麦」には「プライム」や「エキストラ」という単語が使われており、硬質小麦の中でも特に硬質であることを示しています。「オーストラリア・ヌードル小麦」は「ヌードル」という単語でめん用という用途をはっきり明示しています。銘柄ではありませんが、ドイツでは品質によって品種をグループ分けしていますし、日本では、強力小麦と普通小麦に分けています。
 各銘柄は、さらにいくつかの等級に分けられるか、一定品質基準以上か、以下かに仕分けされます。このような等級や基準は、その小麦の品位を示すもので、小麦粒の物理的性状がどの程度なのか、どの程度の被害を受けているのか、小麦以外のものがどのくらい混入しているのかなどによって格付けされます。アメリカでは5等級に、日本では2等級に分け、オーストラリアでは一定基準の上下に分けています。


アメリカでは粉トルティーヤがブームに
  トウモロコシを粗挽きした粉で生地を作り、鉄板の上で薄く焼いたトルティーは、メキシコなどの中央アメリカで広く食べられています。トウモロコシを石灰水に浸漬し、軽く煮てから粗挽きしたものを使うのが、本来の製法です。
 一方で、小麦の産地のメキシコ北部では、小麦粉から作る「粉トルティーヤ」が食べられており、その消費はメキシコ中部の都会へも広がっています。一層で、無発酵の平焼きパンです。
 配合は簡単で、本場での一例を示しますと、小麦粉100、ショートニング12、塩1.5〜2、及び水約40です。これらを混ぜて生地にし、20〜30gずつに分割します。室温で10〜15分間ねかし、ロールを使うか、圧して、直径が12〜15cmの平らな円盤状にします。厚さはさまざまで、0.2〜0.5cmの幅があります。これを約200℃のホットグリルかホットプレート上で15〜20秒間焼き、ひっくり返して10〜15秒間焼きます。 焼きたてを布に包んで食卓に出し、肉や野菜などの料理を包むか、料理の下に敷いて食べます。
 タコスには、トルティーヤに肉、ソーセージ、野菜などを挟んだものと、トルティーヤで肉、野菜、チーズなどを包んで油で揚げたものがあります。
 メキシコ系の移民が増えたアメリカ南部では、トウモロコシのトルティーヤではなく、粉トルティーヤやそれで作ったタコスが売れ筋商品になっており、移民だけでなく白人や黒人も食べるようになりました。穀物としてのトウモロコシをあまり食べないアメリカらしいエスニック食品の導入の仕方だといえます。本来、トルティーヤは作ったその日に食べるのが普通でしたが、アメリカでは工業的に生産され、冷凍して日持ちを良くしたもの、いろいろなフレーバーや味付けしたものが市販されています。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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