小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


小麦1粒は0.03〜0.04グラム
 

 小麦は文字通り小さな粒です。流通している小麦の1粒平均の重さは0.03〜0.04グラムのものが最も多く、ほとんどが0.03〜0.045グラムの範囲に入ります。

 1粒の重さは品種によって差がありますが、土壌の種類や状態、生育中の気象条件、および施肥の仕方の影響も受けます。重さは粒の大きさと深い関係がありますが、胚乳内部の組織の密度や水分の量によっても差が出ますので、1粒の重さを測ることによって、その小麦粒がどんな品質かをある程度推測することも可能です。

 ただし、1粒の重さで表すと小さい数字になって不便ですから、実用的には千粒平均の重さ、すなわち「千粒重」として表示しています。20〜25グラムの小麦粒の重さを正確に測り、その粒数を数えて、千粒の重さ(グラム)に換算します。デュラム小麦はその他の小麦より千粒重の値が大きめです。

 小麦粒の比重は1.25〜1.45です。比重からは、小麦粒内部が充実しているかどうかを推測できます。しかし、比重を測るのは面倒ですので、測定しやすい「容積重」で代用しています。容積重とは、きょう雑物を除いた小麦粒を一定の容量の容器に定められた方法で流し入れたときの重量のことで、「かさ比重」と呼べるものです。流通している小麦の容積重は73〜85キログラム/ヘクトリットルで、中でも多いのは77〜83キログラム/ヘクトリットルのものです。容積重は数値が大きいほど、粒の内部がよく充実しており、製粉性が良いと推測されます。


 
手延そうめんの厄とは?


提供:兵庫県手延素麺協同組合

提供:兵庫県手延素麺協同組合

 手延そうめんは昔から寒い季節に作られ、木箱に詰められて、梅雨を越してから出荷されるのが一般的でした。こうすることによって油臭さが消え、シャキッとした食感のめんになります。このように手延そうめんを貯蔵して梅雨時を越させること、あるいは梅雨時を越すことによっておいしさが増すことを「厄(やく)」と呼んでいます。

 手延そうめん作りは小麦粉、食塩、水を混ぜて生地にするところから始まります。機械による製めんに比べて小麦粉に対して水(45〜50%)と食塩(5〜6%)を多く加えるのが特徴です。十分にこねた生地を丸くし、包丁で直径5〜10センチメートルの太さの長い帯状のものにします。これに撚りをかけながら引き延ばし、付着と乾燥を防ぐために綿実油を表面に塗って、桶の中に渦状に重ねて巻き込みます。これを数時間ねかせた後に引き延ばすことを数回繰り返すことによって、鉛筆の太さくらいにします。これを2本の竿(細竹)に8の字にあやがけし、二つ折りして室箱に入れ、ねかします。その間に、竿の一方を固定し、もう一方を手で引いてめん線を細くすることを数回行って、細くします。最後に、屋外の乾燥台に移し、長い箸でほぐしながら竿の間の長さを順に広げてゆき、1.3ミリメートル以下の太さにします。乾燥後、一定の長さに切断し、箱に入れます。

 以前は、これらの工程のすべてを手や足で行っていましたが、かなり機械化が進んでいます。また、油を使う量を減らして、代わりにでんぷんで付着を防ぐことも行われています。

 厄によって、手延そうめんの硬さが増します。小麦粉中のグルテンになるたん白質、中でも生地に弾力を与えるグルテニンが厄を経ることによって、硬さを増すからです。そして、ぬった油は厄によって加水分解し、脂肪酸の一部がたん白質に結びつくため、この傾向が強まることが分かっています。同時に油臭さもなくなります。

  厄に似た現象はすべてのめん類で起こり、貯蔵することによって、めんの硬さが増す傾向があります。このことはうどんやひらめんなどの太いめんではマイナスですが、細いそうめんでは良い食感になります。まだ、日本中で小麦が作られていたころ、瀬戸内海や九州などの手延そうめんの産地で作られていた小麦はたん白質の量があまり多くないために、厄によって少し硬めの食感にする必要があったと思われます。外国からのいろいろな種類の良質な小麦を使えるようになった現在では、必ずしも厄を必要としない場合もあります。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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