小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


小麦はどのくらい貯蔵しておけるの?

 新米は美味しいですが、古米や古々米になると味が落ちると言われています。そのため、できるだけ品質的な変化を起こさないような米の貯蔵法が研究されています。
 小麦の場合は事情が違います。収穫して間もない小麦、いわゆる「新麦」はパンなどに加工しにくいため、あまり好まれません。むしろ、収穫してから数か月経った小麦の方が良く、完全な状態で貯蔵されていれば、ある程度長い期間経過したものでも問題なく使えます。
 商品としての価値を落とすことなく、どのくらいの期間貯蔵できるのでしょうか?貯蔵設備がさまざまで、気温が場所によって違いますから一般論ではまとめにくいのですが、小麦の水分が11〜12%またはそれ以下で、風雨に耐えられる倉庫に入れられており、虫やねずみの被害を受けず、外部から水が入ったり、高湿度にならなければ、たいていのところで2〜3年貯蔵しても問題ありません。
 しかし、小麦は呼吸していますので、貯蔵中に微妙な変化は起こっています。アメリカでかなり以前に行われた実験では、20年間で呼吸のために重量が1%減少したそうです。また、19〜33年間貯蔵した実験では、小麦粉の外皮がもろくなり、パンを焼いてみると、大きさはそう変りませんが、内相がやや劣っていました。このような長期間貯蔵することは普通では考えられないことですが、小麦といえども長い年月の間には、少し劣化していくことを示しています。
  小麦の貯蔵に直接影響する要因は、@虫、Aかび、B水分、およびC温度の4つです。中でも水分と温度が、小麦を安全に貯蔵できる期間を決めるといってもいいくらいです。小麦粒の水分は特に重要で、13.5%以下であることが必要であり、12%以下が望ましいレベルです。温度は低い方が望ましいことは言うまでもありません。

 


塩はパンづくりでとても重要

 パンづくりでの塩の添加量は、小麦粉に対して食パンやバゲットでは、1.5〜2.5%、菓子パン類では0.5〜1.5%、クロワッサンでは1〜2%というように製品の種類によって少し差があります。一般に、欧州風の砂糖や油脂の配合が少ない(リーンな)パンの場合には塩を少なくし、糖の配合量が多い日本式の菓子パンでは糖の量が増えるに従って塩の量を減らしています。ショートニングや乳製品を多く配合する欧州式菓子パンでは、それらの配合量が増すにしたがって、塩の量も多くします。
 製パン性が優れている小麦粉を使う場合には塩はやや少なめでよいのですが、灰分が多い小麦粉には多めに配合します。発酵時間を長くする場合には塩はやや多めがよいようです。また、雑菌繁殖防止の目的で、夏期には塩の量をやや多めにし、冬期には少なめにすることもあります。仕込み水が軟質の場合も硬質の水よりやや多くします。
 パンづくりでの塩の役割は次の4つがあります。
(1)生地をひきしめる
 塩は生地中のグルテンの物理的性質を変化させます。配合量が適量の場合には生地をひきしめて、ダレにくくします。塩の配合量を増しますと、吸水率が低下し、生地をこねるのに要する時間が長くなります。また。生地がひきしまりますので、形が整った、弾力に富み、肌触りの良いパンになりやすいと言えます。
 塩を加えない生地は、粘着性が強くてダレやすく、しまりがなくて、オーブンでの膨らみも良くありません。力強さがないため、製品の内相の膜が厚くなり、食感も悪くなります。
(2)パンの味を整える
 穀粉、塩以外の材料が多いリッチな配合のパンでは、塩は砂糖の甘みを引き立てるなど、他の材料の味を引き立てます。それらが少ないリーンな配合のパンでは、発酵パンに自然の香りを生み出させる効果があります。塩が配合されていないパンは、物足りない味です。
(3)発酵を適度に調節する
 浸透作用によって生地中の酵母の発酵をおさえて、発酵速度を適度に調節します。小麦粉重量に対して塩が1〜2%の場合は発酵を調節する程度ですが、2.5%を超えると著しくガス発生を押さえ込み、5%を超えると酵母の発酵を阻害し、パンの味を損ないます。このため、酵母を用いた通常のパンでは食塩を3%以上使用することはありません。
(4)雑菌の繁殖を抑える
 浸透作用によって雑菌の繁殖を抑え、酵母にする発酵を助けますので、結果的にパン本来の香りが増すことになります。
 また、塩は、小麦粉中に存在するたんぱく質分解酵素の作用や少量の発酵阻害物質の効果を抑えて、正常な発酵をさせる働きもします。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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