小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


世界一多い日本の小麦粉の種類

  日本では、世界のどの国にも見られないほど多種類の小麦粉が、パン工場やめん工場などで使われる「業務用」として市販されています。日本で製造販売されている小麦粉の96%がこういう業務用で、スーパーマーケットや食料品店などを通じて家庭で直接使われるのは全体の4%ほどにすぎません。大きい製粉会社では業務用の小麦粉を数百種類も製造販売しています。
 なぜ、このようにいろいろな小麦粉があるのでしょうか? まず、日本には小麦粉からつくられる食品の種類がとても多くて、それぞれをつくるのに適した小麦粉が要求されるからです。うどんのような伝統的な小麦粉食品の他に、世界中からいろいろな小麦粉食品が導入されてきました。これらの中には、本場と同じ形や食べ口のものもありますが、日本人の嗜好に合うようにアレンジされた独特の食品も数多く生まれています。例えば、一口にパンといっても、日本独特の食パン、イギリスパン、フランスパン、デニッシュペストリー、あんパンなどなど、パンを昔から食べている国でも見られないほどの種類の多さです。
 その上、日本人の嗜好はとてもデリケートで、食品に微妙なおいしさを求めます。消費者に喜んで食べていただける食品をつくるために、食品会社は加工の仕方をいろいろと工夫していますが、それをつくるのに適した品質の小麦粉も必要です。日本の製粉会社の多くが、もてる技術や設備をフルに生かして、お客さまから出される複雑な要求にこまめに対応し、たくさんの小麦粉がつくられるようになったともいえます。
 これらの小麦粉をつくるのにはいろいろな種類、品質の原料小麦が必要ですが、その大部分をアメリカ、カナダ、オーストラリアから安定して輸入でき、少量ですが国内で生産される小麦と使い分けたり、混ぜることによって、非常に多くの特徴ある品質の小麦粉をつくることができています。
 日本には小麦粉の分類について定めたものはありません。小麦粉は化学分析値などでは分類しにくいものです。しかし、だれが聞いてもおおよそどういう品質のものかが分からないと困りますから、一般的には、「種類」と「等級」の組合せで分類されています。
 種類というのは、「強力粉」、「中力粉」、「薄力粉」という分け方で、原料の小麦を使い分けたり、配合することによってつくられています。強力粉は、含まれているたんぱく質の量が多く、水を加えてこねたときに生地の中に出来るグルテンの量も多くて、力が強い小麦粉です。ですから、強力粉の生地はとても弾力があります。中力粉、薄力粉の順にたんぱく質の量が少なくなり、グルテンの力も弱くなります。薄力粉の生地を手で引っ張ってみますと、強力粉の生地に比べてかなり弾力が弱いことがわかります。強力粉より少したんぱく質の量が少なめの小麦粉を「準強力粉」と呼んでいます。
 同じ種類の小麦粉、例えば強力粉や薄力粉の中でも、いろいろなものがつくられていて、品質に幅があります。たんぱく質の量で見ますと、強力粉では11.5〜13%、準強力粉で10.5〜12.5%、中力粉では7.5〜10.5%、薄力粉では6.5〜9%くらいです。種類の間で少しずつ重なっていますが、たんぱく質の量が同じでもその質が違い、グルテンの力は差があります。
 強力粉や薄力粉をつくるために配合した原料小麦を製粉工程で挽く過程で、「1等粉」、「2等粉」、「3等粉」、「末粉」のような等級に分けます。上位等級の粉ほど、小麦粉の中に含まれる灰分(粉を高温で焼いたとき、後に残る灰。粉に含まれているミネラル)の量が少なく、色もきれいです。いつもこの4つに分けるわけではありませんが、外国でこんな細かいことをやっているところはありません。
 「等級」というのは便宜上のものにすぎません。灰分量の目安は、1等粉が0.3〜0.4%、2等粉が約0.5%、3等粉が約1.0%、末粉は2〜3%です。しかし、灰分が多くても品質が良い小麦粉もありますから、灰分の量だけでなく、その小麦粉の総合的な品質で等級を分けることも多いのです。
 この他に、1等粉の中でも特別の品質のものを「特等粉」、少し灰分が多めのものを「準1等粉」と呼ぶこともあります。小麦粉を使う上での適性としては上位等級のものが一番適しているとは言えないこともありますので、どういう特性が必要かによって小麦粉を選びたいものです。
 このように種類と等級の組合せで分類しますと、「強力2等粉」とか「薄力1等粉」のように呼ぶことができます。パンをつくるのには、強力と準強力の2等粉以上が使われます。準強力1等粉は中華めん(ラーメン)をつくるのにも使われます。うどんやそうめんは、中力1等粉でつくられます。ケーキのような菓子や上等の天ぷらには薄力1等粉が適していますが、まんじゅうやたい焼きなどの日本的な菓子には中力粉も使われます。用途から見て。「パン用粉」、「めん用粉」、「菓子用粉」と呼ぶこともあります。
 これらの業務用の小麦粉は普通の食料品売り場には並んでいません。業務用以外で必要な場合には、製粉会社にご相談いただくとよいでしょう。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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