小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今ではなくてはならない食品材料となりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。


クグロフもクリスマス用
 中央が空洞になっている釣り鐘型のふっくらした「クグロフ」は、郷土色豊かな、菓子に近いパンです。ライン川をさかのぼった山岳地帯にあるフランスのアルザス地方では「クグロフ」、オーストリアのクーゲルホッフ地方では「クーゲルホップフ」と呼んでいます。
 昔から、この地方ではクリスマスなどのお祝いのときに食べられていました。ルイ15世に娘を嫁がせたポーランド王、スタニスラス・レクチンスキが大好きで、クグロフにラムシロップをかけて食べていました。今では、ポピュラーなパンになって、庶民の朝食やおやつに食べられています。
 生地を斜めの方向のひだがある、やや深い鉢のような形をした陶製の型に入れて焼きます。焼き型のひだは、キリストの降誕を祝うためにベツレヘムに向かった3人の王が越えた14の谷を表すとも言われています。



ビスケットとクッキーはどこが違うの?
 「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」の施行規則に、ビスケット類のうち、とくに「手作り風の外観を有し、かつ、糖分、脂肪分の合計が重量百分比で40%以上」などの条件を満たしているものを、「クッキー」と表示することが出来ると規定されています。
 全国ビスケット協会は、ビスケットをハードビスケットとソフトビスケットの2つに大きく分けています。カリッとした硬い食感のものがハードビスケットで、サクっとした軟らかいのがソフトビスケットです。ソフトビスケットが上に書いた条件を満たしていれば、「クッキー」と呼ぶことができるということです。
 ハードビスケットとクッキーの違いをもう少し詳しく見ましょう。ハードビスケットでは、たんぱく質がやや多めの薄力小麦粉か中力小麦粉を用い、砂糖、バター、ショートニング、多めの牛乳や水を加えて、充分時間をかけてよく練り、グルテンの力を活かした軟らかくてよく伸びる生地にします。クッキーでは、砂糖、バター、卵を多く用い、牛乳や水を少なくしてつくったクリームに、たんぱく質が少なく、グルテンの質がソフトな薄力小麦粉を加えて、練る時間も短めにして生地にします。クッキーの生地ではグルテンの形成が抑えられていますので、あまり粘らず、サラッとしています。
 ハードビスケットでは、生地をロールで伸ばし、折りたたんで層にして、また、伸ばしてから、針がついたカッターで小さな穴が出来るようにして製品の形に打ち抜きます。オーブンの中でこの穴から水分やガスが出て、ひび割れを防ぎます。クッキーの生地は軟らかいので、水分やガスが抜けやすいため、穴をあける必要がありませんし、焼くと自然に浮いた形に仕上がります。
 ビスケットの語源は、ラテン語の biscoctum panem(二度焼いたパン)だそうです。焼いたパンを一度オーブンの外に出して水分を均一にしてから、もう一度焼いて低水分(5%以下)にした保存性が良い食べものという意味です。16世紀のヨーロッパの宮廷でビスケットづくりが盛んでした。その後、保存食として航海や戦争での携帯食として利用されました。一方では、副材料をたくさん入れた嗜好品的な甘いものが生れ、イギリスでのティータイムなどに食べられるようになりました。
 日本には、16世紀にポルトガル人が南蛮菓子の一つとして持ち込みましたので、ポルトガル語の biscouto から「ビスコウト」または「ビスカウト」と呼ばれました。江戸時代の中期になると、オランダ語の biscuit の日本語読みの「ビスコイト」に替わり、現在では英語の biscuit からの日本語であるビスケットが使われています。
  日本のビスケットに相当するものすべてを、アメリカではクッキーと呼びます。また、アメリカでビスケットというのは、中に詰め物をした焼き物のことです。フランスのビスキュイは日本のスポンジケーキを指し、国によって呼び名や考え方が異なります。

(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)

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