小麦・小麦粉に係る話題

話題のバスケット

 小麦粉は人類の長い歴史の中で人々の生活と共にさまざまな発展をし、今では、なくてはならない食品素材になりました。この欄では、原料の小麦から加工品になって消費者の方々に食べていただくまでの幅広い小麦粉の世界をいろいろな角度から取り上げ、楽しく、ご参考になる話題として皆様にお届けします。

ベーグルは茹でて焼いたパン 

 1970年代の初め、ニューヨークの街角にはベーグルを売る屋台が出店しており、主としてユダヤ系の市民がベーグルを買い求めていました。彼らはこのやや硬くて食いちぎり難いようなパンを、朝食やブランチ(休日などに朝昼兼用で食べる食事)に好んで食べていました。当時は、一部の人が食べる特殊なパンでした。
 1980年代後半になって、この地味な存在だったベーグルが脚光を浴びるようになりました。ファミリーレストラン・チェーンに乗って、ベーグルサンドイッチがアメリカ全土に広まって行きました。国内線の旅客機でもベーグルが出るようになり、大きなホテルでも販売する所が増えました。ほんの一部の人たちが食べるエスニックフードだったベーグルが、アメリカ人の食べものになったのです。
 日本にも渡ってきました。日本人にも食べやすいように食感に少し改良が加えられたベーグルは、ここでも市民権を得つつあります。
 ベーグルは多くのパンの中でも作り方が特殊です。小麦粉が主体の生地を発酵し、リングドーナツのような丸い形に成形して、茹でてから焼くパンです。茹でますから、表面はカリッとしていますが、内部は密でモチッとした食感になります。
  小麦全粒粉やライ麦粉をベースにしたもの、レーズン、ブルーベリー、クランベリーなどを配合したもの、ニンニク、タマネギ、ゴマ、プンパーニッケルなどで味付けしたものなど、種類が多くなっています。バターやジャムを塗って食べるほかに、ハムや野菜を挟んでサンドイッチにしてもおいしく食べられます。油脂の配合率が低いので、健康イメージもあります。

小麦粉煎餅のいろいろ
 煎餅(せんべい)には小麦粉を原料にしたものと、米粉を原料にしたものがあります。関東ではその両方を「煎餅」と呼んでいますが、関西では小麦粉を原料にしたものを「煎餅」、米粉を原料にしたものを「おかき」と呼んで、区別しています。
  奈良時代に、唐菓子(からがし、またはからくだもの)の一つとして小麦粉麺(めん)を煎ったものが中国から伝えられ、江戸時代に日本独特の煎餅に発展しました。
  小麦粉煎餅にも、瓦、亀の甲、栗、鯛、ショウガ、南部、ピーナッツ煎餅など、多くの種類があります。
  煎餅には薄力または中力小麦粉が使われます。瓦煎餅では、これに卵、砂糖、少量の水、膨張剤などを配合して流動性がある生地を作り、瓦型に流し込んで焼きます。実物大の瓦の大きさに焼いたものが名物ですが、小さいものが一般的になり、名産品として売られています。牛乳を配合することもあります。
  南部煎餅は、三戸、八戸、盛岡などの旧南部藩でつくられてきました。かつては、ソバ粉、オオムギ粉、ヒエやアワの粉などを各家庭で焼いた保存食だったようで、凶作の年の大事な食糧でした。携行食や野戦食としても使われたようです。明治時代になって、小麦粉を使うようになりました。
小麦粉、塩、膨剤、および水だけの配合で作るのが基本です。作り方はさまざまですが、一例としては、捏ねた生地を直径3〜4 cmの棒状に伸ばし、2〜3 cmの長さに切断してから、麺棒で平らに伸ばして、型に入れて焼きます。
 素朴な香味を味わうことができる青森県南部や岩手県の名産品として発展しました。八戸煎餅、津軽煎餅など地域によっていろいろな呼び名がありますが、ほぼ同系統です。最近は、黒ゴマ入り、ピーナッツ入りなどが主流になっています。チョコレート入り、カレー入りなどのバラエティもあります。
 どの煎餅も、配合する材料の種類や量、製品の形、トッピングやサンドに工夫を凝らした商品が多数あって、市場を賑わしています。


(一般財団法人製粉振興会参与 農学博士 長尾精一)


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