小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「餃子」のようなもの その1

ひらの あさか

中国のお正月「春節」
 中国で旧暦の正月を春節と呼び、端午節、中秋節と並んで、中国の大切な年中行事となっている。この三つの行事は「三大節」と呼ばれているが、なかでも春節は、とりわけ一大行事で中国の休日として、年間を通して一番長い休みとなっています。都会に働いている家族が故郷へ帰る。ちょうど日本の帰省と同じで、里帰りをして親類を訪問したりして過ごす。
 正月を迎えるにあたって、縁起物を新たに飾りつける習慣がある。色合いは、赤と金色を使う。よく知られているものに、「福到」がある。家の門や扉に「福」という字を逆さに貼る。これは、中国語で「福倒」と「福到」とが同じ発音だからで、福が逆さ「倒」、福が到来「到」。つまり「福来る(ふくきたる)」という意味になるのです。また、「春」を逆さまに貼って「春来る」。豊かなことば遊びとなっているわけです。このほかに、縁起のいい四文字「金玉満堂」、「大富大貴」、「恭賀新禧」、「出入平安」や、中国の十二支に関する四文字言葉「馬到成功」、「龍馬精神」、「宝馬献瑞」など、その年の干支にちなんだものを扉に貼ります。
 また外玄関に左右に貼られる「春聯(しゅんれん)」。これは、赤い紙に書いた対句で、人々の願 いを込めた内容になっており、漢詩から引用されたものや、自分で創作した春聯を貼る人もいる。代表的なものに「天増歳月人増壽」歳月も増せば人々には壽も増す。「春満乾坤福満門」天下には春一色、家々には福が一杯など新しい年にふさわしい、おめでたい文句が書かれている。


春節に欠かせないものとは
 中国北部の地域では、大晦日になると一家総出で餃子づくりがはじまる。中国でも日本と同様に正月三が日には、火を使った料理をしない習慣がある。なので、ちょうど日本人がおせち料理やお雑煮を食べるように中国では餃子を食べて新年を祝うのである。
 さて、日本で餃子といえば焼餃子(鍋貼餃子)を指すが、中国で餃子といえば水餃子。広東など南方では蒸餃子が一般的です。正月に食べる餃子は、白菜、もやし、干し豆腐、キクラゲ、春雨などを入れたさっぱりとした味の胃腸にやさしいもので、肉を入れないことも多い。皮づくりは、小麦粉をよく練ってから棒状にして、打ち粉をまぶしてのばし、2cmくらいに切って、団子状に丸め、のし棒でのばし、そのまん中に具を入れて包む。
 鍋貼餃子は、その字の如く鍋に貼りつけるという意味があり、実は水餃子が残ったところを焼いたもので、お客さまに出したりすると残りものを出したとして礼を失しかねないという説もある。焼餃子、揚餃子は、ともに残りものを再生する苦肉の策でありましたが、進化していまや日本の大衆食として欠かすことのできないものとなり、定著しています。


縁起かつぎとしての餃子

 年の始めに食べられる中国の餃子には、いろいろな思いが込められている。まずは、三日月形をした餃子の形だが、これは中国最後の王朝まで流通していた「元宝銀」という馬蹄形の銀貨と形がよく似ているところから、これを食べることによって、金運にめぐまれるというところから大いに好まれたという。また、正月に食べられる餃子の中に、ひとつだけ小銭をひそませておき、この餃子をひき当てた人はその一年を幸福に過ごせるといわれていた。そして、餃子という名前については、今となっては一人っ子政策がすすめられている中国だが、かつては多子、つまり子孫繁栄を願う意味で餃子のジヤオズという読み方が、子供を授かる「交子」と同じ発音だったため、餃子を食べると子宝にめぐまれると信じられていたからである。


水餃子の代表的な食べ方                
 皮は手づくりでも市販のものでも結構です。具には、豚ひき肉、みじん切りにした白莱、しょうが、長ねぎを合わせ、塩、しょうゆ、コショウ、ごま油、酒少々を加えて練る。これを皮に包み、口をしっかり閉じる。大鍋に湯を沸かし、沸騰したら水餃子を入れ、くっつかないようにかきまわしながらゆで、5〜6分ぐらいして、水餃子が浮上ってきたら、差し水をする。再度浮上ってきたら、ひき上げてお皿にのせて、しょうゆと酢を小皿に注いでいただきます。皮の中からたっぷりとした肉汁が口の中に広がり得もいわれぬおいしさです。


もうひとつの餃子「ペルメニ」
 ロシアの食生活を表わした名著「パンと塩」に、〈発酵させないヌードルやラヴィオリのような、練り粉の皮に具を包み込んだ水餃子は、16世紀に、おそらくはタタール人から伝わったと言われている。たぶんヴォルガ中流域の非スラブ系民族の間では長い間一般的であったと思われる。〉とある。
 ロシア人が愛してやまない料理「ペリメニ」ペルメイニとも呼ぶロシア風餃子は、ウラル山脈の西の都市であるペルミから生まれた料理だという。ペルメニは、ロシア各地でみられる。アルメニア「ペルメニ」小麦粉の薄い皮をつくり、中に羊肉のひき肉、玉ねぎ、トマトを細かく刻んで、塩、コショウを入れて合わせてから包む。形は円盤状で2枚の皮を合わせて、ふちをしっかりとおさえ、ゆでて食べる。ウクライナ「ワレーニキ」具には、カッテージチーズに砂糖、卵を加えて練る。皮は、小麦粉に卵、バター、ミルクを加えて練り、生地を丸くして、そこへ具を入れ、餃子と同じ半月形にして包み、塩を加えて沸騰させたたっぷりの湯でゆであげ、水気を切って器に入れ、バターとサワークリームをかけよくまぶして食べる。ウズベク「マントゥイ」は蒸して仕上げる。羊肉のひき肉に玉ねぎのみじん切り、塩、コショウ、キャラウェイなどを皮に包み、蒸してから粉状の赤唐辛子をかけて食べる。トルクメンの「バルィク・バレク」は、具は魚を使い、卵、玉ねぎ、パセリをみじん切りし、塩、唐辛子、カルダモンを入れ、皮に包んで蒸す。
(食文家)
参考文献
「餃子の発想術」鮎川精一・雄鶏社
「パンと塩」P.E.F.スミス・D.クリスチャン・訳/鈴木健夫ほか 平凡社
「亡命ロシア料理」P.ワイリ・A.ゲニス・訳/沼野充義ほか 未知谷
「世界の食べもの」37・41・61巻 朝日新聞社


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