小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「パンのあるしあわせ」残ったパンを使う

ひらの あさか

パンのことわざ
com po evinho,anda-se caminho.
ポルトガルのことわざは、直訳すると「パンとぶどう酒で、人は道を歩く」ですが、転じて、歩くためには腹ごしらえが必要。つまり「腹がへっては戦ができない」に通じることわざになるわけです。
 きわめつけは、La soupe fait le soldat. フランスのことわざ「スープは兵士をつくる」粗末でも栄養のある食べものは、強い人間をつくるという意味で、転じて「腹がへっては戦ができない」となる。その昔、スープはフランス軍の野戦食として用いられていたようで、このスープは単に、さらっとしたスープではなく、パンに野菜などの具の入ったスープをかけた、日本でいうならば、さしずめ「ぶっかけめし」のパンバージョンのようなものだったようである。


食べるスープ
 ひところニューヨークから日本にも進出した食べるスープの店がありますが、スープの元祖は、パンとたくさんの具の入った家庭料理であったようで、soupeフランス語のスープがその語源。現在でも「パンにスープを注ぐ」という表現があるくらいで、パンのないスープはなく、穀物なきスープはないといわれ、元来スープとは、薄切りパンに野菜のゆで汁を浸して食べるもので、スープとパンは切っても切れないあいだがらだったようである。
 「オニオングラタンスープ」食べるスープの代表格は、まず2cmくらいに切ったフランスパン(バケット)、玉ねぎは薄切りにして、バターでアメ色になるまで根気よく妙め、そこへ白ワインを入れ、コンソメスープ、ローリエを加えて30分煮る。バケットは軽く焼いておき、耐熱の容器に入れ、スープを注いでチーズをのせて、オーブンでグリュイエールチーズが溶けるまで焼いて、パセリのみじん切りを添える。
 「レバークネーデルスープ」は、オーストリアの名物スープ。クネーデルとは、お団子料理という意味。牛レバーは細かくたたいて、水を加えてふやかしたパンの水気を切ってから、卵を加え、フードプロセッサーにかける。玉ねぎとパセリは、みじん切りにしてバターで妙め、粗熱をとってからレバーと食パンを合わせたものとまぜ、塩とコショウを加えてこねて、団子状にまとめる。この団子をコンソメスープで20分ほど煮たら出来あがり。
 「パンの入ったポトフー」フランス語でポトフーとは、火にかけた鍋という意味。肉や野菜を長時間かけてじっくり煮込んだポトフーはフランスの代表的な家庭料理です。豚バラ肉かたまりは、食べやすい大きさに切り、玉ねぎ、にんじん、セロリは粗く切って、肉と一緒に煮込み、コンソメ、塩、コショウで味を整える。スープができたら、食べる分のスープにパンを浸してひと煮立ちさせ、好みでパルメザンチーズをすりおろし上にかける。


びしょぬれのスープ
 tremp comme une soupe スープのようにぬれた=びしょぬれのスープ。これはフランス語ですが、イスラム語源のびしょぬれのパンの意味を表わすのが、スペインの「ガスパチョ」。もちろんパンを使います。きゅうり、トマト、玉ねぎ、ピーマン、にんにくは粗く切って、ほぐしたパンと水、ワインビネガー、塩を合わせてミキサーでまぜ合わせ、オリーブオイル、トマトペーストを加え、さらにまぜ合わせ、冷蔵庫でよく冷やしてから、好みでクルトンなどをちらして食べる。


パンを使った料理
 「カルトッフェルクレーセ」は、ドイツの料理。平たくいうと「じゃがいも団子」。パンは、さいの目に切って、玉ねぎはみじん切り、フライパンにバターをたっぷりひいて、玉ねぎを妙め、透明になったところでさいの目に切ったパンを加え、きつね色になるまでバターを加えつつ妙める。じゃがいもはゆでてマッシュポテトをつくり、そこへ卵、小麦粉に塩、コショウ、ナツメッグ(粉)を加え、合わせた生地をつくる。この生地に妙めたパンを包んで団子状にする。干いたパンを粗めにすりおろし、バターで妙める。湯を沸かして団子 を入れて浮き上がったら、水気を切り皿にのせて、上に妙めたパン粉をかけて食べる。
 「パンくずのパスタ」イタリアトスカーナの古くからあるパスタ。水分の抜けたパンは小さくちぎってから、ビニールに入れ麺棒などでたたいてさらに細くくだく。フライパンにオリーブオイルをたっぷりと入れ、つぷしたにんにく、パンを焦さないよう妙め、火からおろして、ぺ一パタオルで油を切る。さらにフラィパンにオリーブオイルを入れ、細切りの鷹の爪を入れ、辛さを出してアンチョビーフィレをやさしくつぶしてから、さきほどのパンを加える。ゆであげたスパゲッティと材料を合わせて、パセリのみじん切りを加えてあえる。
 「タラマ」ギリシャのたらこディップは、パンを使います。食パンは耳をとって、水に入れてふやかしてから水気を切っておく。たらこはほぐして、オリーブオイル、レモン絞り汁と合わせておく。玉ねぎはみじん切りにして、パン、たらこと合わせ、塩を加えてからフードプロセッサーにかけてなめらかに仕上げる。トーストにのせて、生野菜のディップとしてもおいしい。
 「えびすり身の揚げパン」はタイ風のおつまみ。食パンサンドウィッチ用薄切りは1枚を×点に三角に切る。えぴは殻からはずして包丁でたたき、鶏ひきにく少々を加え、ここへ長ねぎ、にんにくみじん切り、卵白、ナンプラー少々を加えて合わせてぺ一スト状にし白ゴマをふり、三角に切った食パンにしっかりと塗り、180℃くらいに熟した油でカリッと場げ、油を切ってから器に移し、香菜(シャンツァイ)を添える。
 All sorrows are less with bread.
 「パンがあれば悲しみもやわらぐ」
 きょうもおいしくまいりましょう。

(食文家)

参考文献  
ことぱで探る食の文化誌  内林政夫 八坂書房
食の文化史 ジャック・バロー/山内昶訳 筑摩書房
フランスことわざ名言辞典 渡辺高明・田中貞夫 白水社
世界の料理・ドイツ料理 タイムライフ


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。