小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「やきそば」ニッポンの味

ひらの あさか

「ソース焼きそば」あらわる
 ウスターソースや中濃ソースを、蒸した中華めんにまぶした現代の「ソース焼きそば」が出現したとされるのは、第二次世界大戦直後の昭和20年代なかば頃のこと。食糧難のこの時期、ヤミ市で始まったようです。
 いたみやすいを蒸すことで、長期保存が可能で、しかも短時間で調理ができ、これにたっぷりのキャベツを加えることによってのかさを増やし、これに、ソースをたっぷりとかけた焼きそばには、肉の姿はなかったが、人びとのおなかを満たし、売れ残ったことはなかったという。
 その後は、お好み焼きの店で、祭礼や縁日などの屋台の定番として、ソースの効いた焼きそばは、食べられています。


個性派焼きそば専門店で
 京都市内のとある横丁にその店はある。8人も入れば満席になるその店に入ると、いきなり目に入ってくるのが、シンプルなメニュー構成だ。そば1玉から、豚肉、桜海老、にんにく、天かす、卵などの名前が見える。初めてだと少し面喰うが、慣れれば至って簡単なこと。そば1玉には、スープにくぐらせたキャベツに、いかゲソ、ちくわなどがついてくるので、これに好みの具材をオーダーして焼きそばを焼いてもらうという仕組みだ。中華めんは白くまっすぐな太でボリュームがある。いつものオーダーは、に加えて、豚肉、にんにく、桜海老に卵。まず、天板で豚肉をのせてスープにくぐらせた、たっぷりのキャベツ、いかゲソ、ちくわをサラダ油で炒め、火が通ったところへ中華めんを加え、にんにくのたれをかけ、油をさらに加えて2つのコテでよく混ぜ合わせてから、甘口のソースをジュワッとかけると、あたり一面に細かいソースの霧が立ちこめる。こなれたところへ卵を落としてもらう。ウエルダン好きには、天板の上で焼いた目玉焼きを「後のせ」してもらうこともできる。また、甘口ソースの次に秘伝の辛口ソースをかけてもらう。これが通常の味つけで、仕上げに桜海老と紅しょうがをたっぷりのせてもらえば出来上がり。相の手にキムチを食べつつビール。そして、アツアツの焼きそばを頬ばる。卵レア好きは、とろける卵が焼けすぎないうちに、にまぶしてハフハフいただきます。日本広しといえども、焼きそばだけの個性ある店は、ここだけかもしれない。


甲子園名物といえば
 日本の夏の風物詩といってもいいような高校野球の行われる甲子園球場。数々ある食べものの中で、光る一品が「オムそば」。これは、太くてまっすぐな中華めんに、キャベツ、豚肉、ちくわなどの具を炒めてソースをかけた焼きそばに、クレープのように薄く焼いた卵を包んだもので、もちろん紅しょうがが添えられています。これを箸で卵を少しずつくずしながら、かつ、ソースの効いた焼きそばとともにいただきます。一緒に販売されているただの焼きそばより、ずっと人気のあるオムそばは、忘れてはならない甲子園名物といえるでしょう。


風雲児「ローメン」とは
 信州は伊那市の名物「ローメン」は、昭和30年代、まだ全家庭に冷蔵庫が普及していないこの時代に、生めんを日持ちさせるためにを蒸して用いた。ローメンの名は、肉を意味する「ロー」と、炒めるの「チャー」、の「メン」。元はマトンの肉を使い、キャベツを入れた豚骨スープベースの汁そばでしたが、現在は汁気のあるスープタイプのものと、焼きそばタイプのローメンがある。太めの中華めんに、豚肉とキャベツを加えて炒め、ソースをかけて仕上げたもので、今では中央高速のインターでも3食入りのものを手に入れることができる。


本家中国の「炒(チャオミエン)」
 中国料理の軽食「点心」のひとつ「炒」は、中華めんを具と一緒に炒めるもの。炒めた中華めんに、別に味つけをしてあんなどで具を仕上げてかけるもの。中華めんを揚げて、その上に炒めた具をのせるもの。大まかに3種類のタイプのものがあります。
 日本に入って、かなり多彩な味が広がりました。変わり焼きそば4種を紹介します。
 「五目かた焼きそば」中華めんは、高温で揚げる。白菜はそぎ切り、にんじんは短冊切り、いかゲソとあさりむき身は少量のお湯をくぐらせる。野菜は油で炒めて、ここへいかゲソ、あさりを加え、塩、酒、さきほど湯通しに使った煮汁を加え、水溶き片栗粉を入れて味を調えてから、揚げそばの上にとろみのついた具材をかける。
 「高菜と榨菜と豚細切り肉の焼きそば」高菜はみじん切り、榨菜は塩気をとって、みじん切り、豚肉は細切り、にんにくは好みで入れる。サラダ油、ごま油を熱し、高菜、榨菜、にんにく、豚肉を炒め、中華めんをほぐして入れ、酒、オイスターソース、塩を加えてさらに炒め、ごま油を仕上げにふって出来あがり。
 「鶏肉とブロッコリーの焼きそば」鶏むね肉はそぎ切り、ブロッコリーは食べやすい大きさに切って、かためにゆでる。椎茸、玉ねぎは細切り、鶏肉、玉ねぎ、椎茸、ブロッコリーの順に油で炒め、チキンブイオンでとったスープを加え、水溶き片栗粉を加える。別立てで油をひいた鍋に、蒸し中華めんを入れ、かきまわさずに両面を焼く。器にそばを盛りつけあんを加えた具材をかけ、をほぐしながらいただきます。
 「玉ねぎの辛口焼きそば」玉ねぎは薄切りにし、にんにくは薄い輪切り、鷹の爪は種をとって細切りにする。油を熱し、鷹の爪、スライスしたにんにくを揚げるような気持ちで火を通し、玉ねぎ、牛ひき肉を加え炒め、蒸し中華めんを加えてさらに炒め、オイスターソース、しょうゆ少々に酒を加えて仕上げる。器に盛りつけて、もみ海苔を上にちらす。好みで香菜を切って添えるとさらにおいしい。

(食文家)

参考文献    
ヤミ市幻のガイドブック 松平誠 ちくま新書
やきそば三国志    加藤文 文藝春秋


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。