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ケーキ・ケーキ・ケーキ

ひらの あさか


ケーキの名前

 ケーキの語源は、ラテン語のcoquereコルケからきている。英語では、ケーキ、ドイツ語では、kuchenクーヘン、フランス語では、gteauガトー、イタリア語では、dolceドルチェ、ポルトガル語では、boloボーロとなる。いずれも、洋生菓子をさすが、基本的に必要なのがケーキ生地、小麦粉、卵、バターなどの油気にベーキングパウダーを合わせたケーキ生地をオーブンで焼いたものです。


スポンジケーキの元祖は
 ラテン語のビスコトウム・パネム「二度焼きしたパン」を意味するこの言葉は、ひとつには、ビスケットの語源ですが、スペイン語のビスコチョ、フランス語のビスキュイ、それぞれ、ビスとコチョ、ビスとキュイは、二度焼いたものをさすことばで、ラスクのようなもの。生地は小麦粉に卵、砂糖を合わせ、バターを加えてビスケットができる。これの発展系のものが、スペインのビスコチョ。いやいやフランスのビスキュイ。イタリアは、ジェノバ発祥のジェノワーズ。みな元祖といわれていますが、はたして真相は?要するに発祥は、二度焼きのパン、すなわちビスケットの兄弟、姉妹が、ふっくらとふくらんでスポンジケーキと相なったというワケです。


アメリカ生まれ、日本育ち
 「ショートケーキ」はほかのどの国にも見当たらない、ショートケーキのルーツは、なんとアメリカ。その名は「ストロベリー・ショート・ケイク」厚くて少々かたいビスケット生地にたっぷりの生クリーム、いちごをのせ、またその上に同じビスケット生地をのせ、生クリーム、いちごをのせる。ケーキというより、やわらかめのビスケットに生クリーム、いちごを荒っぽくのせただけのワイルドなお菓子です。
 そのアメリカ生まれのショートケーキが日本に入ってくると、ホワホワやわらか、しっとりとしたスポンジケーキに、生クリームといちごを段々に重ねて、きれいに生クリームでまわりを飾り、てっぺんにいちごをのせた日本人好みのしっとりやわらかいショートケーキに変身したのであります。ショートケーキの名は、小振りのケーキ。スポンジケーキと生クリーム、いちごがあれば短時間にできる(ショートタイム)ところからなどの意味がある。アメリカ生まれの日本育ちのケーキです。


思い出のケーキ
 12月生まれの方なら誰でも経験されていることかと思いますが、誕生日とクリスマスのお祝いは、何故か一緒なのであります。ということは、プレゼントも当然一緒。子供心にも「何とも理不尽な」ものでした。しかし、それだけに忘れられないのが、その時のケーキであります。まず、昭和40年代には、「バウムクーヘン」を、波型のそぎ切りにして2~3つ。そこに生クリームを泡立てたホイップクリームをたっぷりとかけたもの。バウムクーヘンの「バウム」は木を表わし、「クーヘン」はお菓子を意味する。ドイツでは、祝いの菓子として親しまれている。
 その後、食べたケーキは「フランクフルタークランツ」スポンジ生地に、メレンゲとバタークリームをはさんで、淡雪のようなアーモンドシュガーがかかったもので、口の中ではらはらと溶けていく、それはぜいたくな味のケーキでありました。
 「ズコット」は、イタリア料理店のデザートで、その頃は「ドルチェ」なんて呼び方はしていませんでしたし、イタリアンレストランも数えるほどでした。イタリアを代表するこのお菓子は、トスカーナ地方で生まれました。その名は、神父さんがかぶる小さな帽子からきており、ドーム型のまあるい型をしている。薄く切ったスポンジケーキの中に、生クリームに果物をつめて、軽く凍らせたものを切り分けて、そこにグラッパを軽くふったのが、私流。それにしても子供の味ではなかったような。
 「ロールケーキ」は、イギリス発祥のもの。日本に、昔からあって人気のある「スイスロール」。薄くのばしたスポンジ生地にマーマレードか、いちごジャム、バタークリームをまんべんなく塗って、くるくるっと巻く。生地を同じくして、デコレーションしたものに「ブッシュ・ド・ノエル」本国フランスで、ビュッシュbucheといえば「薪」をさす。クリスマスの定番ケーキですが、出現はそんなに昔ではなかったような。日本発でいえば、スポンジ生地に、柚子風味のあんを巻き込んだ愛媛県は松山市の名物「六時屋タルト」に「一六タルト」。洋菓子のようで、なかなか和のテイストのおいしいお菓子です。


飾らないおいしさ
 イギリスの家庭の味「トライフル」。その名前は「つまらないもの」を意味することばです。簡単につくることができるからか、逆に簡単にできるからおいしいお菓子です。つくり方は、スポンジ生地またはカステラを一口大に切って、生クリームか、カスタードクリーム、数種類の果物を刻んで合わせて、香づけに、シェリー酒やグラン・マルニエなどを加え、冷やして生地に味がしみる頃にいただく。失敗のないデザートです。
 「モンブラン」はモンは山で、ブランは白。そう「白い山」を意味することば。フランスとイタリアの国境近くの最高峰モンブランからその名をいただいた。
 スポンジ生地の上に、栗の甘煮をうらごしたマロンクリーム、生クリームをひそませたモンブランは、細く絞ったクリームに白銀に見立てた粉砂糖が美しい。
 「オレンジ風味のシフォンケーキ」。薄力粉とベーキングパウダーをふるい、別立てで卵黄、グラニュー糖、サラダ油、水、マーマレード、しょうゆ少々を合わせ、ふるった粉と合わせる。さらに卵白にグラニュー糖を加えて泡立ててメレンゲをつくり、生地を合わせ、型に流し入れ、オーブンで焼く。かくし味のしょうゆとマーマレードの相性がいい。

(食文家)

参考文献
洋菓子はじめて物語 吉田菊次郎 平凡社
ケーキの世界 村山なおこ 集英社
コムギ粉料理探究事典 岡田哲 東京堂出版
ユーハイム・ホームページ http://www.juchheim.co.jp


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。