小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「ドーナッツ」と「揚げ菓子」

ひらの あさか


ドーナッなってるの?
 ドーナッツの名前は、生地を意味するドー(dought)ナッツ(nuts)くるみを合せたものといわれている。オランダの揚げ菓子に小麦粉生地を丸くまとめ、揚げてくるみをのせたものがあり、これがその後オランダに滞在のメイフラワー号の清教徒たちから、アメリカに伝えられたといわれている。あの穴の開いたリング形になったのは、アメリカに渡った頃、クルミが入手できなかったため、そのかわりに中心に穴を開け、油で揚げたという説と、船乗りのグレゴリーという人の発案。彼が子供の頃、母親の揚げるドーナッツの仕上がりが、どうも生っぽいので、中心に穴を開けてもらって、火を通りやすくし、これが、うまく揚ったので、それから生地のまん中に穴を開け、短時間で、しかもむらなく揚げ上がるというリング形ドーナッツが普及していくようになった。
 ドーナッツには、イーストでふくらませるイーストドーナッツや、膨張剤をつかってふくらませるケーキドーナッツ、シュー生地をつかうフレンチクルーラーのタイプがある。


まるで笑い顔のような
 沖縄を代表する揚げ菓子サーターアンダギー。サーターは砂糖を意味し、アンダギーは揚げものをさす。小麦粉と卵、砂糖、ベーキングパウダー、水、ラード、またはサラダ油を合わせて練り、手で丸め、油でゆっくりと揚げていくと、球形の片側が割れて花が咲いたような形になる。これとそっくりなのが、中国の揚げ菓子「開口笑(カイコウシャオ)」。つくり方は、サーターアンダギーとほぼ同じ。ルーツは、実は中国。開口笑は、その名の通り丸い形の片方は、見ようによっては笑った顔のように見える。台湾では「開口球」という。


各国のドーナッツ
 ポーランドの「ポンチキ」は、宗教行事のためのお菓子。小麦粉ベースのパン種に卵、牛乳を加え、かくし味がウォッカという生地で中身はジャム。揚げてから、砂糖を溶かしたシロップをからませる。
 ドイツの「クラプフェン」は、イースターやカーニヴァル、収穫祭などの特別な日に食べられていたお菓子で、家庭で大晦日につくるものには、翌年の運勢を小さな紙にひそませて、来年を占ったようです。
 ふわっとして、まるでケーキのようなクラプフェンには、あんずジャムやカスタードクリームをはさんで、生地を揚げ、仕上げにうっすらとした雪のような粉砂糖をふる。同じような形をしたドーナッツをポルトガル、ベルギーでは、「ベルリーナー(ベルリンのドーナッツ)」という名で売っているという。
 カザフの丸いドーナッツ「バウイルサク」小麦粉にイースト、牛乳、砂糖、塩少々を加えて練り、しばらくそのままにしておいてから、棒状にのばして小さく切って丸めて、植物油で揚げ、砂糖をかける。
 シリアの「アワマット」は、ラマダンの夜、聖なる日に食べる特別な揚げ菓子。生地は小麦粉にコーンスターチ、ドライイースト、砂糖に塩を用い、油で揚げ、バラの香りのするシロップをかける。
 ブルガリアの「トゥルンバ」は、小麦粉に水、塩を加えた生地を絞り出して揚げたギザギザ模様の細いドーナッツに、水と砂糖をほぼ同量に割ったドロリとしたシロップにくぐらせたもので相当甘い。
 これと同じ形をしたスペインの「チューロ」最近では、日本でも見かけるが、本国ではドーナッツ生地を星形に上がる口金で絞り、油で揚げるが、さらにこれをドロッとしたホットチョコレートに浸しつついただく。コーヒーに砂糖を入れて、たっぷり甘味を効かせてという食べ方も好まれるそうな。いずれにしても、たっぷりとカロリーの高い食べ物です。


カラッと揚げ菓子
 イタリアの「ガラーニ」は、カーニバルのお菓子。小麦粉にベーキングパウダー、卵、砂糖を練ったものを、細長くリボン状にして揚げ、砂糖をまぶす。
 韓国の「ヤックァ」は、伝統の揚げ菓子。小麦粉に、ごま油、生姜汁、はちみつを合せて練り、揚げたもの。その名の通り薬菓は体にいいということで、大人から子供まで好まれるお茶うけです。
 オーストリアの「シュネーバレン」は、小麦粉にベーキングパウダー、砂糖、卵黄、ラム酒、バター、バニラエッセンスを加えて練り、そのままラップにくるんで1時間おく。平らにのして、帯状に切り目を入れ、くるりと巻いてまとめ、丸くなるようにこし器を使って生地を揚げ、粉砂糖をふりかける。
 ホットケーキミックスでつくる「アメリカンドッグ」は、手軽にできるおやつ。ホットケーキミックス、卵、水、植物油を加え、やわらかめの生地をつくる。ソーセージに割りばしを通して、生地をたっぷりとつけ、すぐに油で揚げる。油を切って好みでケチャップやマスタードをつけて食べる。


南蛮料理にあった揚げ菓子
 ポルトガルから日本(江戸)に伝わった南蛮菓子の中に「ヒリョウズ」と「コスクラン」がある。「ヒリョウズ」は「飛竜頭」として今でも関西で呼ばれ、関東では「がんもどき」と呼ばれて、お菓子とは違った形になったが、本家ポルトガルでは、「神の子」を意味するヒリョウズは、クリスマスに食べるお菓子で、小麦粉に水、卵を加え練った生地は一晩ねかせて、うすく手で広げて、油で揚げて、砂糖をかけたドーナッツ状のお菓子。
 いっぽう、「コスクラン」は、日本には現存していない模様。ポルトガルでは、カーニバルやクリスマスに家庭でつくる揚げ菓子。小麦粉に、水、卵、ラード、オレンジの絞り汁、砂糖、シナモンをよくこね、生地をねかせ、打ち粉をし、めん棒でのばし、三角にパイカッターで切り、揚げたパリッとした感触のもの。シナモンシュガーをかけて仕上げる。

(食文家)

参考文献
「ヨーロッパお菓子紀行」 相原恭子 NHK出版
「南蛮スペイン・ポルトガル料理のふしぎ探検」 荒巻美代 日本テレビ


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。