小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

スコーンとマフィン

ひらの あさか

午後のお茶会とは
 イギリス人にとって「ティー」とは、ただ単に紅茶を意味することばではなく、食事につながることばとして使われています。
 アフタヌーンティーは、1840年代イギリスのベッドフォード公爵夫人であったアンナによってはじめられた習慣です。
 当時の上流階級の食生活は、午前9時から11時くらいにいただくコールドミートにステーキ、トーストに紅茶とデザートといった朝食。午後1時半から2時くらいの軽い昼食。そして、8時から9時という遅い時刻の夕食までの間の空腹を満たしてくれるのが午後3時から4時の「午後のお茶会」すなわち、アフタヌーンティーだったのです。
 アフタヌーンティーは、紅茶を飲みながらティーサンドと呼ばれるキュウリ、ハム、卵、チーズを挟んだひとくちサイズのサンドイッチに、スコーンやクッキー、小さなケーキやフルーツがケーキスタンドで用意され、おしゃべりや音楽を楽しみながらいただくという優雅なものでした。


スコーンの由来
 スコーンは、イギリスのスコットランド地方で生まれたパン菓子で、粗挽きの大麦粉を使って型抜きをせずそのまま焼いたバンノック[bannock]というお菓子の系統を引く、ビスケットの一種でしたが、19世紀半ばにベイキングパウダーやオーブンの普及によって、現在の形に近づいていきました。
 基本的な作り方は、小麦粉、ベイキングパウダー、塩、砂糖、バター、牛乳をベースにした生地をこね、抜き型で丸く抜き、オーブンで焼いたものです。オーブンのない時代は、グリドル[griddle]と呼ばれる厚手の平らな鉄板を用いて、生地の両面を焼いたといいます。このグリドルは、オーブンのない時代には、平たいパンを焼くには欠かせない道具でした。
 スコーンの名前の由来は、イギリスはスコットランドのバースというところにあるスコーン城の歴代国王の戴冠式(たいかんしき)に使用された椅子の土台にあたる石が「The Stone of Scone運命の石」と呼ばれ、その名にあやかってつけられたそうです。
 王の玉座を連想させる形のスコーンは、石を思わせる形に焼き上げられることが多いようです。その神聖な形からナイフは使わず、縦に割らずに手で横半分に切って食べるのがマナーだといわれています。スコーンには型抜きをしないで大きいままを焼いたものもあるので、このタイプはナイフで食べやすい大きさに切って食べます。
 アフタヌーンティーに欠かせないスコーンには、赤いジャムとともにクロテッドクリームが添えられます。このクロテッドクリームは[clotted]凝固したクリームという意味です。イギリスの酪農地帯であるデボンシャー地方の特産で、乳脂肪の高い牛乳に低温の熱を加えて冷まし、上に固まって層になっているクリームをすくいとったものです。乳脂肪は、クロテッドクリームが約60%、バターが約80%、生クリームが約45%で、バターと生クリームの中間くらいです。濃厚なのに、口の中で溶けやすく、意外と爽やかな味わいをもつものです。スコーンやマフィンにつけて食べるのが主ですが、ケーキ作りでバターのように使ったり、料理用のソースなどで生クリームのかわりに使うこともあります。


イギリス生まれのアメリカ育ち
 もともとイギリスで生まれたイングリッシュマフィンは、ティータイムのおやつとして親しまれた歴史あるパンでしたが、現在の主流はアメリカ。アメリカンスタイルのマフィンは、小麦粉にベイキングパウダー、バター、牛乳、砂糖、塩を加えた生地にハチミツやチョコレートなどを混ぜたり、ナッツやドライフルーツ、チーズなどを加えて、紙のカップに生地を絞って入れ、オーブンで焼いた手作りのできるお菓子的要素の強いパンとして親しまれています。


イングリッシュマフィンを使って
 「イングリッシュマフィンサラダ」サニーレタス、ベビーリーフはあらかじめ洗って水気をよく切る。キュウリは小口切り、ミニトマトはヘタをとって半分に切る。イングリッシュマフィンは、オーブントースターでよく焼いて発酵バターを塗って食べやすい大きさに切る。材料を合わせて、パルメザンチーズ、レモン果汁、ブラックペパー、ガーリックなどが含まれているちょっと濃厚なシーザーサラダドレッシングをかけてよくかき混ぜ、マフィンがあつあつのうちにいただく。
 「ねぎとベーコン入りスクランブルエッグサンド」長ねぎは小口切り、ベーコンは細切り、ボウルに卵を割り、ここにだし汁を少々加えかき混ぜ、次いで長ねぎ、ベーコン、塩少々を加え合わせる。フライパンにサラダオイルをひいて、材料を流し入れてかき混ぜて固まらない程度で火からおろす。イングリッシュマフィンは、半分に割ってトーストしてクリームチーズを塗り、スクランブルエッグを挟んで食べる。ねぎがお嫌いならば、クセのないあさつきをお使いください。
 「アプリコットジャムサンド」イングリッシュマフィンは、半分に割ってトーストする。
 熱いうちにサワークリームをたっぷりと塗って、アプリコットジャムをのせて割ったマフィンを合わせる。サワークリームとアプリコットジャムの微妙な酸味がたまらない。

(食文家)

参考文献
アフタヌーン・ティーの楽しみ
英国紅茶の文化誌
出口保夫 丸善株式会社
イギリス菓子のクラシックレシピから  長谷川恭子  柴田書店
おいしいパンの事典   成美堂出版
イギリスのお話は、おいしい。   白泉社
東京ガス 食の生活110番のホームページ
http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku110/index.html  




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