小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「農山漁村の郷土料理百選」の小麦粉料理(1)

ひらの あさか

99点中24点が小麦粉料理
 昨年12月に農林水産省が、各地に伝わるふるさとの味の中から「農山漁村の郷土料理百選」を決定しました。
 郷土料理百選といわれていましたが、選出された料理は、実際99点で残りの一つは各自の味を選んでほしいという審査員の願いだったようです。その輝く99点の中にうれしいことに小麦粉を使った料理が、なんと24点も含まれていました。今回は、青森から山梨の小麦粉料理を紹介します。


東北地方の小麦粉料理
 まず青森は「せんべい汁」。昆布などでとっただし汁の中に、野菜とともに南部せんべいを割り入れて、しょうゆで味を調えた汁もので鍋としても、汁としても食べられている料理です。八戸を中心に県南から岩手県北で食べられており、現在のような「せんべい汁」が食べられるようになったのは、明治30年代頃からだといわれています。
 岩手は「わんこそば」と「ひっつみ」。わんこそばの「わんこ」とは、岩手の方言で「お椀」のことをいいます。その起源は、岩手では宴会の最後にそばを振るまう「お立ちそば」という風習があり、冠婚葬祭など宴会で人数が多い場合、いっぺんに人数分のそばを煮上げることができない、またそばがのびてしまうのをふせぐために、お椀にそばを小分けして、おかわりして食べてもらうという形が生まれ、これが「わんこそば」のはじまりだといわれています。
 「引っ摘む」という意味の方言「ひっつみ」は、小麦粉に水を加えて練り耳たぶくらいのやわらかさにしてねかせておく。だし汁に魚や鶏肉、野菜をたっぷり入れ、しょうゆや味噌で味を整え、ここにねかせた小麦粉生地をちぎって入れて煮る。「ひっつみ」は、地域によって「つみいれ」「とってなげ」などと呼ばれている「すいとん」の仲間です。
 秋田は「稲庭うどん」。300年以上の歴史をもつ秋田を代表する手づくりの乾めんです。秋田藩の名品として、各藩への贈答品に使われていたといわれています。その製法はそうめんに似ていますが、ゆで上がりが早くコシが強く、のどごしがよく、胃袋にやさしい。ゆで上げて冷水にとり、つゆに薬味を添えて食べる。温めんにしてもおいしい。


関東地方の小麦粉料理
 栃木の「ちたけそば」。ちたけとは「夏きのこ」の一種で、もともとは、きのこをさくと乳白色の汁が出てくることから「乳たけ」と呼ばれるようになったようです。この「ちたけ」は、風味がいいことから、これをだしに使ってつゆをつくり、ゆでためんにつけていただきます。また「ちたけ」となすの乱切りを油で炒め、つゆにうどんを加えた「ちたけうどん」は、「ちたけ」となすの相性ぴったりです。
 群馬の「おっきりこみ」。しょうゆや味噌をベースの汁に野菜をたっぷり入れて煮込み、手打ちの太うどんをここに直に加え煮る。溶け出したとろみが、独特の味を出しています。
 埼玉は「冷汁うどん」と「いがまんじゅう」。「冷汁うどん」は、夏場の食欲のない時には格別のうどん。ごまはよく炒ってからすり鉢でよくする。この中に味噌を少しずつ加えてさらにすり合わせ、せん切りにしたきゅうりやみょうが、大葉などを加えてよく混ぜ合わせて時間を置く。ゆで上げたうどんは水でしめて、食べる直前に先ほどの練り味噌に氷水を加えのばし、ここにうどんを入れてつるっと食べる。
 「いがまんじゅう」は、お祝いごとには欠かせないもので、その名の通り形が栗の「いが」のように、小麦粉でつくられたまんじゅうのまわりを赤飯で覆ったもので、ハレの日に、赤飯とまんじゅうを一挙にまとめてつくってしまうという知恵から生まれたもの、また子供の病気よけのためにつくられたものともいわれています。
 神奈川の「へらへらだんご」「かんこ焼き」。「へらへらだんご」は、小麦粉と上新粉少々を水を加えて練ってだんご状にしてゆでて、あんこを絡めたものです。波を打ったような形から「へらへらだんご」と呼ばれているようです。
 「かんこ焼き」は、その形が雅楽で使われる太鼓の一種である「鞨鼓(かっこ)」に似ていることからその名があります。小麦粉生地に山菜、きのこなど季節の野菜を味噌などで味をつけてはさみ、太鼓状に形づくって焼いたもので「おやき」の仲間です。


中部地方の小麦粉料理
 山梨は「ほうとう」と「吉田うどん」です。
 「ほうとう」は、知らない人のない山梨の郷土食で、その昔、武田信玄が好んで食べたといわれる陣中食です。とくに「かぼちゃのほうとう」は、味噌仕立ての汁に直煮した平打ちめんとかぼちゃが煮溶けて、独特のとろみを出しています。ほかに「あづきのほうとう」があります。
 「吉田うどん」は、大きく分けて4種類あります。シンプルな「かけうどん」、馬肉を甘辛く煮て加えた「肉うどん」、冷たいめんに冷たい汁をかけた「冷やしうどん」、温めたつけ汁に冷たいめんをつけて食べる「つけめん」があります。いずれも煮キャベツが具として添えられています。

  
(食文家)
参考文献

農林水産省「農山漁村の郷土料理百選」
http://www.rdpc.or.jp/kyoudoryouri100/
日本の食生活全集(社)農山漁村文化協会
八戸せんべい汁研究所
http://www.senbei‐jiru.com


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