小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「農山漁村の郷土料理百選」の小麦粉料理(2)

ひらの あさか

 前回に続き「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれた長野から香川まで、小麦粉料理を紹介します。


中部地方の小麦粉料理
 長野からは、おなじみの「信州そば」と「おやき」。寒冷な気候と土壌が、良質のそばを育んでいる信州は、そば処としても有名です。
 しっかりとした食感を味わうなら、そば粉100%で打つ「十割そば」、いまや主流の「二八そば」そば粉とつなぎの割合がそば粉8割に対し、小麦粉2割を配合したもので、つるっとしたのどごしが食べやすい。その昔、戸隠そばの割合は、そば粉7割、小麦粉3割というものもあったそうな。
 「信州そば」の薬味には、特産の安曇野「わさび」をはじめ、辛味大根「戸隠大根」「ねずみ大根」「山口大根」ほかにもいくつかの地物大根が、そばの味を引き立てています。
 「おやき」のルーツは、いろり端で生まれた「へいくべおやき」。両面を焼いてからいろりの灰の中で蒸し焼きにしたものです。
 ふつうのおやきは、小麦粉に水を加えてゆっくりと練る。好みで生地に油を加え、耳たぶくらいのやわらかさになったら、生地をねかせる。手のひらに生地をのせ、のばして具を包んで形を整え、蒸してから、さらに生地の両面をこんがりと焼きます。代表的な具としては、季節にもよりますが、野沢菜を刻んで炒め、ごまをまぶしたもの、かぼちゃや切り干し大根の煮物、なすの味噌炒め、小豆あんなどがあります。
 きしめんと並んで愛知の名物といえば「味噌煮込みうどん」。土鍋にかつおベースのだし汁に合わせ味噌、八丁味噌、本みりん、清酒を合わせたものを溶いて温め、沸騰する手前でここに太い生うどんを入れ煮込む。鶏もも肉のそぎ切り、長ねぎの斜め切り、椎茸、油揚げの短冊切り、かまぼこの薄切りを入れてさらに煮込み、卵を割り入れ、土鍋のふたをして火を止める。本場名古屋では、土鍋のふたにうどんをうつしてアツアツのうちにいただきます。
 三重からは「伊勢うどん」。その昔、お伊勢参りの参詣者が足を運んだのが、街道筋にあったうどん屋で「伊勢うどん」の評判は参拝者のみやげ話から広まっていったという。太めのうどんは、ゆっくり時間をかけてゆでる。だしは昆布にかつおとさばの混合節の厚削りを用い、この地域独特のたまりしょうゆ、本みりん、砂糖少々を合わせて温めたたまり汁を、ゆであげて水気を切ったうどんにかけ、青ねぎをちらしてよくまぶしつついただく。一見まっ黒で辛そうに見えるたまり汁ですが、やわらかいうどんとよくなじんで、ほんのり甘い。


近畿地方の小麦粉料理
 奈良は「三輪そうめん」。その歴史は古く、奈良時代に中国より伝来して以来、三輪の里では、肥沃な土地と三輪山から流れ出る川の水を利用して、小麦の栽培が行われ、小麦粉を原料にした「そうめん」が作られるようになった。 江戸時代の書物にも「大和三輪素麺、名物なり、細きこと糸のごとく、白きこと雪のごとし、ゆでてふとらず余国より出ずる素麺のおよぶ所にあらず」といわれるほど「三輪そうめん」の品質は高く評価され、広く知られていた。「にゅうめん」そうめんは、さっとゆでて冷水に放ち、よく洗い水気を切る。だし汁に酒、本みりん、うすくちしょうゆを加えてひと煮立ちさせ、ゆであがったそうめんを器によそい、つゆをかけ、青ねぎの小口切り、切りごま、みょうがの細切りを添える。


中国地方の小麦粉料理
 島根「出雲そば」の特徴は、そばの甘皮を一緒に挽くことによって、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素、うまみを作る成分が豊富に含まれています。色が黒く、コシが強く、独特の風味をもっています。代表的なのが「割子そば」で、朱塗りの丸い器はちょっと小ぶり、ゆであげたそばは冷水に放ち、さっと洗ってぬめりをとる。小ぶりな器三段にそばを盛りつけ、濃いめのつゆと薬味には、もみじおろし、刻みねぎ、のりなどを添えていただきます。もうひとつ「釜揚げそば」は、まずどんぶりは温めておく、ゆであげたそばをどんぶりに移して、そば湯をはる。そこへそばつゆをかけ、薬味をのせればできあがり。


四国地方の小麦粉料理
 香川の「讃岐うどん」は、うどんの材料に事欠かない。瀬戸内の温暖な気候に育まれ「良質な小麦」が収穫され、古くから行われている「塩」づくり、うどんに欠かせないだしに使われる「いりこ」、小豆島の「しょうゆ」と、四拍子も揃っているところから、讃岐でうどんが定着するようになりました。
 ゆであがったうどんに、あつあつのだしつゆをかけ、薬味のねぎ、おろししょうが、ごまをかけて食べる「かけ」またの名を「素うどん」。ゆでてから冷水に放ち、水気をよく切って器に盛りつけ、生醤油をかけて、おろししょうが、ごまを添える「生醤油うどん」。卵を落としてよくかきまぜるという食べ方もある。ゆであげたうどんを水でしめた後、どんぶりに熱い湯をはってしめたうどんを入れ、薬味を加えただしつゆにつけながらいただく「湯だめ」など、食べ方も語り尽くせないほどさまざまあります。

(食文家)
参考文献

農林水産省「農山漁村の郷土料理百選」
http://www.rdpc.or.jp/kyoudoryouri100/
日本の食生活全集/健康食うどん
       (社)農山漁村文化協会
    
知られざる 出雲そば
まつえ・まちづくり塾 出雲そば通団
http://www.city.matsue.shimane.jp/kankou/izumo_soba/


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。