小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「農山漁村の郷土料理百選」の小麦粉料理(3)

ひらの あさか

前回に続き「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれた九州から沖縄まで、小麦粉料理を紹介します。

九州地方の小麦粉料理
 熊本からは、おなじみの「からしれんこん」と「いきなりだんんご」。
 「からしれんこん」が世に登場するのは、今からざっと300年以上前のこと。肥後は熊本の禅僧玄宅和尚が、病弱だった藩主細川忠利公にすすめた「れんこん」を使った料理が「からしれんこん」でした。
 作り方は、酢を加えた熱湯でれんこんをかためにゆで、水にとって冷まし、乾燥させてから、穴の部分にからし味噌をしっかり詰める。続いて小麦粉、ターメリック、水を混ぜ合わせた衣をつけて、油で揚げる。揚げあがったら、輪切りにしていただく。こんな話もあります。「からしれんこん」は、輪切りにすると切り口が、熊本の細川藩の家紋(九曜紋)と似ていたこともあって、下々が食べられるものではなく、一般に広まっていったのは明治になってからだといわれています。口に含んだ途端、れんこんの歯ごたえと、鼻からつんと抜けるからしの味がたまりません。
 「いきなりだんご」いきなりとは、地元の方言「簡単」という意味や、「不精」という意味もあるといいます。不精な人でも作れるといわれていますが、忙しい時でも時間をかけずに作って食べられる簡単なおやつです。
 作り方は、いたってシンプル。小麦粉に塩と水を加えて、耳たぶくらいのやわらかさにこねてねかせます。さつまいもは、皮をむいて食べやすい大きさの輪切りにして、ねかせた小麦粉生地をのばしておまんじゅうのように包み、セイロで蒸しあげる。現在では、さつまいもの上に小豆あんをのせて包んだものが主流になっているようです。
 大分からは「ごまだしうどん」と「手延べだんご汁」。ごまだしとは、地元でとれる白身魚のエソを焼いて、皮や骨を取り除いてからすりつぶし、炒ったごまをすってエソと合わせ、しょうゆ、酒、本みりんなどを加えてのばしたペースト状のものです。ゆでたうどんに、ごまだしをのせてお湯を注げば「ごまだしうどん」の出来あがりです。お好みでかまぼこ、小口切りにしたねぎを添えます。
 「手延べだんご汁」は、地元では「だご汁」の愛称で親しまれています。小麦粉に塩を少々と水を加えて、耳たぶくらいのやわらかさになるまでこねて、親指ほどの大きさにちぎってだんご状にし、かたく絞った濡れふきんをかけて生地を30分ほどねかせます。いりこでとっただし汁に、もどした干ししいたけはせん切り、ごぼうはささがき、にんじんは短冊切り、里芋は輪切りにして煮る。野菜に火が通ったら、だんご状の小麦粉生地の両端をひっぱってのばして加え、ひと煮立ちさせ、味噌を加えて味を整え、器によそってから小口切りのねぎを添えます。野菜は手元にあるものや季節の野菜を使ってどうぞ。


沖縄の小麦粉料理
 沖縄は「沖縄そば」。そばといっても、そば粉は一切使わず、生地は小麦粉にかんすいを加えて練り、平たく製麺したものです。スープは、かつおぶしベースの和風だしに豚骨などを用いて、しょうゆを加えたものです。ゆであげためんをスープに加え、具材にはうす切りのかまぼこ、豚のあばら肉(ソーキ)をのせ、紅しょうが、青ねぎの小口切りをのせたものが最もポピュラーな「ソーキそば」です。

百選以外の人気小麦粉料理
 今回百選以外にも、各地の「人気料理」というジャンルがありました。その中から九州長崎の小麦粉料理「ちゃんぽん」と「皿うどん」を紹介します。
 まずは「ちゃんぽん」。その名の由来は、諸説あります。中国語の『吃飯(しゃぽん)』は、ご飯を食べるという意味ですが、このことばがなまったもの。また、『混ぜる』を意味するポルトガル語の『チャンポン』。たくさんの具材を混ぜて入れていることからもうなずけるネーミングです。
 時は明治30年代。中国福建省から長崎に渡ってきた陳平順が、中国人留学生のために、安くて栄養のあるものを食べさせようと、福建省のめん料理をベースにした野菜、肉などが入ったボリュームたっぷりの料理を考案したのが「ちゃんぽん」の始まりだといわれています。作り方は、豚肉、鶏肉、えび、いか、貝(あさりなど)、キャベツ、たけのこ、にんじん、玉ねぎ、もやし、きくらげ、かまぼこ、ちくわなど数種の具材をラードでさっと炒めて、塩で味を整え、鶏ガラ、とんこつでとった濃いめのスープ(塩味)をたっぷり加え、小麦粉仕立ての独特のめんは別にゆでてからここに加え、軽く煮込んだら出来あがりです。
 「皿うどん」は、同じように数種の具材を用いて炒めて、スープを加え、塩、うすくちしょうゆ、こしょうなどで味を整えた後、水溶き片栗粉でとろみをつけ、糸のような細めんを揚げたものに具材をかけたもの。ゆでた太めんに具材をのせたもの、からめたものなどがあります。ご当地では、野暮といわれそうですが、パリパリの細めんを使った「皿うどん」に酢とからしをたっぷり加えて、まぜまぜしながらいただくのがおいしい。
 「ちゃんぽん」に「皿うどん」、中国(チャイナ)+日本(ニッポン)を合わせて融合させた味、ともいえるのではないでしょうか。
(食文家)
参考文献

日本の食生活全集
伝えて「ゆきたい「家庭の郷土料理」第2集 全国友の会編
農林水産省「農山漁村の郷土料理百選」
  http://www.rdpc.or.jp/kyoudoryouri100/
「小麦粉の郷土料理」日清製粉グループ本社
  こむぎ粉くらぶ全国粉料理MAP 九州地方
  http://www.nisshin.com/life/komugiko_club/map/kyushu.html

(社)農山漁村文化協会
婦人之友社


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。