小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

クラッカーとその仲間

ひらの あさか

スウェーデンの「クネッケ」
 立食パーティーなどで日本でもおなじみの「ビュッフェ」「バイキング」スタイル。発祥の地はスウェーデンで、その名は「スモーガスボード」。もともとは「パンとバターの台」を意味し、スウェーデン語で「オープンサンドイッチ(smorgas)」と「テーブル(bord)」を合わせたことばです。伝統的な食べ方は、お皿の数が多ければ多いほどマナーがいいといわれています。各人がたくさん種類の料理を少しずつ、自由に味わっていくというものです。
 「スモーガスボードはニシンから」といわれるようにニシンの酢漬けはスウェーデン名物ですが、これにはクラッカーのようなクリスプ・ブレッド「クネッケ」が欠かせません。全粒粉やライ麦、大麦を使ったものなどたくさんの種類があり、丸いものを何等分かに切り分けたものから、四角いもの、中には真ん中に穴のあいたもの(昔は中央に棒を通して保存していた)などがあります。
 クネッケのトッピングには「サーモンとチーズ」クネッケにクリームチーズをのせ、スモークサーモン、レモンを小さく切ったもの、ディルをのせる。「サーディンの簡単マリネ」オイルサーディン、スライスオニオン、パセリのみじん切りにワインビネガーをふり合せておき、軽くオリーブオイルをぬって焼いたパプリカ(赤)をクネッケの上にのせ、汁気を落としたサーディンとオニオンをのせる。
 「レバーペーストとオリーブ」クネッケの上に市販のレバーペーストをぬり、ブラックオリーブを刻んでのせる。
 その昔、昭和40年代に日本で売られていたライ麦全粒粉を使った「クネッケブロート」の最初の印象は、まるで「うすいボール紙」のようでした。まだ、ナチュラルチーズもあまり輸入されていない時代でしたので、上にのせるものといったら、プロセスチーズ、スモークサーモンやキャビアでした。到底、子供の食べるものではなかったのですが、見た目以上に素朴でおいしいクラッカーでした。


イタリアの「グリッシーニ」
 17世紀にイタリアのピエモンテ州トリノで生れた「グリッシーニ」。トリノ地方を治めていたサヴォイア家の跡取りのヴィットーリオ・アメデオ2世が、幼少期に病弱だったため、心配した母が宮廷の医師に相談して、食生活の改善を試みました。お抱えのパン職人に、小麦粉生地を発酵させた消化がよく、食べやすいパンを作らせました。そこで生まれたのが「グリッシーニ」でした。
 この「グリッシーニ」の評判は、たちまち貴族にも知れ渡り、トリノに隣接するフランスまで届いて、かの有名な皇帝ナポレオンは「トリノの小さいバトン」と呼んで、わざわざ取り寄せて召し上がっていたそうです。
 強力粉、ドライイースト、塩、オリーブオイルを混ぜた生地を発酵させ、棒状にのばして焼いた「グリッシーニ」。イタリアの居酒屋やレストランではよく見かけますが、かごの中に入っていて、ワインを飲みながら、料理を待つ時にはぴったりのクラッカーのような感触のスナックです。ご存じのように生ハムを巻いてアンティパストにしたり、パスタと一緒に食べたりします。


フランスの「カナッペ」
 フランス語で「背もたれのある長いす、ソファー」を 意味する「カナッペ」はバゲット(フランスパン)をうす く切ったものや、クラッカーなどに、チーズや野菜など をのせた軽食のひとつです。のせる材料は水分の少 ないものなら何でも。ローストビーフ、蒸し鶏、ハム、 パテ、フォアグラなどの肉類、スモークサーモン、オイルサーディン、イクラ、キャビア、ゆでエビなどの魚介類、カマンベールチーズ、ブルーチーズなどのナ チュラルチーズ、これらの材料にスライスオニオンや トマト、きゅうりなどの野菜類を合わせたり、ゆで卵をのせたりします。パーティーなどでお酒のお供に、前菜としても好まれています。


アメリカの「クラッカー」
 アメリカの「ソーダクラッカー」は、19世紀頃から人々に親しまれていました。小麦粉ベースの生地をイースト発酵させて焼いて、塩味をつけたシンプルなもので、材料をトッピングしてカナッペにしたり、スープやクラムチャウダーなどに砕いて浮かべたりして食べられています。
 また、日本でもおなじみの丸い形をしたクラッカー「リッツ」は、70年くらい前にアメリカで生まれたクラッカーです。小麦粉生地に植物性油脂、砂糖、食塩を加えて発酵させて焼いたものです。クリーミーなディップをのせたり、好みの具材をのせるだけでホームパーティーメニューのできあがり。
 カナッペのレシピ「まぐろのタルタル」刺し身用のまぐろは包丁で細かくたたき、にんにくのすりおろしとオリーブオイル、しょうゆと合わせる。大葉を半分に切ってクラッカーにのせ、まぐろのタルタルをのせ、小口切りした万能ねぎを上にのせる。「アボカドディップとえび」むきえび(小)は背わたをとってゆで、水気をとる。アボカドは、半分に切って皮をむき、さいの目に切り、レモンの絞り汁をふりかけてからつぶす。玉ねぎのみじん切りは水にさらして、水気をきってアボカドと合わせ、塩、コショウ、マヨネーズ、あればアンチョビペーストを入れて混ぜる。「バナナチョコ」バナナは輪切りにして白ワインをふっておく、クラッカーの上にバナナをのせ、チョコレートソースをかける。

(食文家)
参考文献

コムギ粉料理探究事典
各国大使館発 世界の食卓  ヨーロッパ編
ヤマザキナビスコ(株) ホームページ

岡田 哲

http://www.yamazaki-nabisco.co.jp/
東京堂出版
家の光協会


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。