小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

スパゲッティが」食べたい

ひらの あさか

「カルボナーラ」君の名は
 「ナポリタン」「ミートソース」と並んで人気のスパゲッティといえば「カルボナーラ」。その名の由来になったのは「炭焼き職人(Carbonari)」。長いこと山にこもる炭焼き職人が、保存のきく乾燥パスタと塩漬け肉と卵を利用してつくったところから、その名があるといわれていたり、仕上げにかける粗挽き黒こしょうが、炭の粉のように見えることから呼ばれるようになったり、カリカリに焼いたベーコンを炭にたとえたなど、いくつかの説があるようです。
 つくり方は、卵をよく溶いた中に、おろしたパルメザンチーズに塩、黒こしょうを加えてソースをつくる。スパゲッティをゆでると同時にベーコンの塊を1cm角に切り、フライパンに油をひかずにカリッとなるまで炒める。ここに少々スパゲッティのゆで汁を加える。ゆで上がったスパゲッティは湯をきり、ベーコンと合わせ、次いでソースを加え、火を弱くして全体をよくからめ、器に移して粗挽き黒こしょうをふる。ソースに生クリームを入れたもの、具材に玉ねぎ、にんにくのみじん切りを加えてあるものもあります。


「ナポリタン」 VS 「イタリアン」
 関東圏でいうトマトケチャップ、トマトソースベーススパゲッティは「ナポリタン」。
 ゆでた太スパゲッティに、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム(缶詰)、ソーセージまたはハムを炒めたものに、トマトケチャップをさっと煮詰めたものをまぶしたものですが、これが愛知、岐阜から西になるとかなり少数派ですが「イタリアン」と呼ばれるケースが多い。
 京都の喫茶店でいただいた「イタリアン」は、銀製の蓋つきの食器に入っていて、玉ねぎ、マッシュルーム、ボンレスハムがたっぷりと入ったもので、太いスパゲッティには、トマトソースが鮮やかな色で、からまっていました。酸味と甘みのバランスがほどよい、オトナの朝ごはんでした。かたわらには黒麦酒を置いて。しかし、朝からお店に出る「イタリアン」は、かなりクセになるスパゲッティなのです。


「鉄板焼きスパ」に「あんかけスパ」
 名古屋発の「鉄板焼きスパゲッティ」は炒めた「イタリアン」が鉄板の上にのせられてそのあとに、溶いた卵をふちから円を描くように全体に流し入れる。スパゲッティがこげるのを防いで、なおかつやわらかい卵部分をまぜまぜしながらいただけるというすぐれものです。
 東京でも食べられるようになった「あんかけスパゲッティ」これも名古屋発。何しろ量が多い、おじさんのパラダイス新橋にあるのもうなづけるというものです。
 人気メニューは「ミラカン」。かなりよくばりなメニューで、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ハムにベーコン、赤ウインナーの入った「ミラネーズ」と、野菜ベースの具材の入った「カントリー」が合体したもので、「どっちのメニューも食べたい」というわがままなお客さんの要望にこたえてできたメニューなのです。
 太スパゲッティはゆでた後、ソースとの絡みがよくなるようにラードで炒めて、具材と合わせ、塩、こしょうで味を整え、お皿に移し、スパイシーなあんかけソースをお皿の周辺に円を描くようにかける。このスパイシーソースは、にんにく、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどの野菜を炒めてから、水を加えて材料がやわらかくなるまで煮て、裏ごしして、塩、こしょうを加え、味を整えて一晩ねかせ、牛挽肉、トマトペースト、トマトピューレを加えてさらに煮込み、黒こしょうを効かせたソースに、水溶き片栗粉を加えてとろみをつけるという手間のかかったものです。黒こしょうのかわりに唐辛子を用いる場合もあります。
 お店によっては、ソースの辛さの弱いものから強いものまで選択でき、さらにトッピングとして、目玉焼き、半熟卵、から揚げ、カツ、コロッケ、ハンバーグなどもあり、おじさん好みのハイカロリーなスパゲッティとなっています。


謎の「インディアン」
 関西のある洋食店でのこと、通しことばで「インディアン一丁!」というのを聞いたことがあります。このインディアン、アメリカの先住民「インディアン」ではなく、じつはカレーのことだったのです。「カレーといえばインド」という発想から、「インドの」を意味する「インディアン」の名が生れました。
 ところかわって、名古屋の喫茶店発のメニュー「インディアンスパゲッティ」。カレー味のスパゲッティのことです。太いソフトスパゲッティにカレーがまぶしてあったり、それが鉄板の上にのっていたりします。さらに炒めたスパゲッティの上にカレーがのっていてそれをまぜまぜしていただくといったさまざまなスタイルがあります。
 思えば昭和の頃、給食で出たソフトスパゲッティに、カレーソースをまぶしていたのもこの「インディアン」に近かったように思いますが「インディアン」の名ではありませんでした。


おそうざいスパ
 最近のヒットは「おそうざいスパ」。小松菜はざくに切って、にんにくはうす切り、刺身用帆立貝は食べやすい大きさに切る。ベーコンは1cm幅に切る。スパゲッティをゆで、フライパンにオリーブオイルをひいて具材を炒め、缶詰のツナブロックを軽くほぐして入れ、塩、こしょう、アンチョビペーストを入れ味を整え、ゆで上がったスパゲッティを加えてオリーブオイルをかけて全体をよくあえる。好みで七味、パルメザンチーズをかける。

(食文家)
参考文献

「鉄板スパ」のルーツを探れ!
「赤いスパゲティを何と呼びますか?」
 食べ物日本地図  食べ物新日本奇行

中日新聞 2008/10/20

日本経済新聞


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。