小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

昭和の小麦粉おやつ
                       ひらの あさか


アイスクリームの横に
 その昔、デパートのお好み食堂でいただくアイスクリームは、カップ形の銀食器に丸く形を整えたバニラアイスクリーム、そしてその横には、最近はめっきり見かけなくなったプレーンウエハースが添えられていました。
 このプレーンウエハースの役割りは、冷たいアイスクリームが歯にしみたり、お腹に刺激を与えないためアイスクリームと一緒に食べることで中和させるはたらきが、またアイスクリームの冷たさで味の感覚がわからなくなってしまった舌を、ウエハースを食べることで感覚を元にもどしてアイスクリームをおいしく食べられるようにという効果もあったようです。実際、昭和40年代頃にうすいウエハースにアイスクリームをのせて食べていた記憶があります。


ウエハースは、日本では大正6年に森永製菓が発売したといわれています。下って昭和30年代頃に食べられていたウエハースは、消化がよいということで、病人や子どものおやつに用いられていました。何も挟まないプレーンウエハースをはじめ、2枚のウエハースの間にクリームを挟んだバニラウエハースなどがありました。つくり方は、小麦粉、砂糖、牛乳、卵黄、ベーキングパウダー、食塩などに水を加えて生地をつくり、焼き型に流し込んでうすい板状に焼いたものです。


 今日になって見かけるウエハースは、お菓子というより鉄やカルシウムを強化したものや全粒粉を使った栄養機能食品だったり、「食玩(玩具つき食品)」と呼ばれている人気アニメのキャラクターのカードが入った袋の中にチョコレートを挟んだウエハースが入った人気菓子や、わかりやすいところでは、ご存じキットカット。何層かに重ねたウエハースにクリームを挟み、チョコレートでコーティングしたものです。


 フルタ製菓の「セコイヤチョコレート」は、サクサクウエハースにクリームを挟み、チョコレートをコーティングしたチョコレート菓子です。形は北アメリカで世界有数の樹高を誇るメタセコイヤの木のように子どもが大きくすくすくと育つようにという願いからその名がつけられたといいます。現在でもセコイヤチョコレートをコンビニエンスストアなどで見かけますが、思わず手に取ってしまうほど郷愁を誘う一品です。


ウエハースのかなり親戚
 上野凮月堂の名物お菓子「ゴーフル」の名前は、フランス語で「蜂の巣」を意味する言葉。世に登場したのは、昭和初期のことです。小麦粉に卵白、バター、砂糖などを練り合わせた生地を鉄板に挟んでうすく焼くお菓子。直径15cmくらいの丸いうす焼き生地の間にバニラ、いちご、チョコレートの3種のクリームを挟んだゴーフルは、パリッとうすくて軽い口溶けの生地とやさしい味のクリームがうまく合ったやさしい味わいのお菓子です。
 昭和40年代かなり上等な贈り物菓子で、ゴーフル1枚がかなりごちそうなおやつだったことを記憶しています。


 北海道銘菓千秋庵の「山親爺」は、昭和5年(1930年)に生まれたうす焼きせんべい。
小麦粉にバターと牛乳と卵を加えた生地をうすく焼いた小麦粉せんべいです。水をいっさい加えていないのが、特長とか。ミルクたっぷりの紅茶を飲みつつ、いただくのが格別です。山親爺の入った黒い缶は、山親爺を食べた後にほうじ茶を入れたり、保存用の容器になっていました。懐かしい昭和の情景です。


知る人ぞ知る小麦粉お菓子
 今でも元気に残っているお菓子に「フィンガーチョコレート」があります。昭和36年(1961年)頃から、カバヤ食品から発売されているチョコレートスナックは、軽くつまめる大きさの小麦粉ベースの、それこそ指のように細いクラッカーに、チョコレートをコーティングされたものです。チョコプリッツが出る遥か前のヒット商品でした。


 木村屋総本店の「たまごパン」は、小麦粉にたまごをたっぷり使ったボーロ状の焼き菓子。
 小腹が空いた時によく食べたおやつです。真ん中に切れ目があることから、おしりパンと呼んでいた記憶があります。同じく木村屋総本店の「切りあん」小麦粉ベースの和菓子でいえば栗まんじゅうのようなまんじゅう生地にこしあんを巻き込んで、ひと口サイズに切って焼いた和テイストの焼菓子です。


 千鳥饅頭総本舗の「チロリアン」は、昭和37年(1962年)発売の洋風巻きせんべい。小麦粉、牛乳、バター、卵、砂糖などを合わせた生地をうすく筒状に焼いたロールクッキーにバニラ、コーヒー、いちごクリームを入れたもので、サクッと焼き上げた生地の軽い食感が斬新でした。


 下って、昭和45年(1970年)発売のグリコ「コロン」は、コロコロした形を表現するのに、コロン(円柱)と命名。小麦粉ベース生地をサクサクッとしたワッフル状の筒型に焼き、市販の箱型お菓子とは思えないほどやわらかい口どけのクリームが入っています。
 今では、ご当地ものなどレアなコロンを見かけるとついつい手にとってしまいます。


 もうひとつ、アイスクリームの横にあってウエハースと同じ役割りをはたしていたのが「ラングドシャ」。フランス語で「猫の舌」を意味するうすいクッキーです。室温にもどして柔らかくしたバターを練り、同量の砂糖と合わせ、小麦粉、卵白をしっかりと泡立てた生地をつくり、天板に細長い棒状に並べてオーブンで焼き上げたものです。サクッとした食感と、軽くて口の中で溶けるのが特徴です。同じタイプのクッキーに、北海道の銘菓「白い恋人」があります。四角いラングドシャタイプのクッキーの間にチョコレートを挟んだものです。
 
  (食文家)
参考文献 「まだある。」食品・おやつ編          大空出版


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。