小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

小麦粉生地をスープに浮かべて
                       ひらの あさか


「ダンプリング」とは

 ダンプリング(dumpling)は、小麦粉をこねた生地をだんご状に丸めてゆで、スープやシチューに浮かべて食べるものです。欧州やアメリカにみられますが、形態も地域によって、だんご状のものと、小麦粉生地をのばして切ったり、手でちぎったりするものなどさまざまです。
 dumpとは「ぐちゃぐちゃに(混ぜる)」「どさっと(投げる)」などの意味があります。
 ここから発想できるのは、飛躍しすぎの感はありますが、日本の郷土料理「とっちゃなげ」「ひっつみ」「はっと」また「すいとん」や「そばがき」がその親戚筋にあたるのではないかと考えられませんか。


アメリカの「ダンプリング」
 アメリカ南部の家庭料理「ダンプリング」は、日本の「はっと」に近い形態のものです。


「チキンのダンプリング」
 鶏もも肉は、ひと口大に切って、セロリや玉ねぎ、にんじんの輪切りと合わせて、たっぷりの分量の水を加えて強火で煮込んで、塩とコショウで味を調える。ダンプリング生地は、小麦粉に塩、牛乳を合わせてこね、しっとりしたら丸めて約1時間ほどラップをして常温でねかせる。ねかせた小麦粉生地は、打ち粉をしてからめん棒のばし、食べやすい大きさに切り揃えて、少しずつスープに入れて火が通ったところで、器に移す。ダンプリングは、食べる分だけをサッと煮込むのがポイントです。


中国の「面片」と「片児湯」
 面片(メンピェン)は、例えるならばワンタンの皮のような薄さの「ひっつみ」に近い食べ物です。ボウルに小麦粉、水を加えて箸でよく混ぜる。水が粉になじみ、ポロポロと小さくかたまりができたら、手でこねていき、しっとりしてきたら丸めてぬれぶきんを上にのせて30分程生地をねかせる。打ち粉をしてからめん棒で生地を薄くのばす。鍋にサラダ油をひいて細切りにした長ねぎを加えて炒めてから、水、市販の液状鶏ガラスープを煮立たせ、しょうゆで味を調える。小麦粉生地をのばしながらちぎって入れる。最後に溶き卵を加え、さっと火を通して器に移し、好みでラー油をかける。


 片児湯(ピャルタン)は、ほぼ面片に近い生地ですが、ベンチタイムを省いてさっとつくる。鍋に水、市販の液状鶏ガラスープを煮立たせ、塩で味を調える。フライパンにごま油をひいて、豚肉肩ロースの細切り、高菜漬けを炒め、紹興酒、しょうゆで味をつける。ボウルに小麦粉、水を加えて箸でよく混ぜる。打ち粉をふった台にのせて手でよくのばす。耳たぶくらいの柔らかさになったら、めん棒で円形にのばして包丁で長方形に切ってからさらに手のばし、沸騰したお湯で3分程ゆでる。事前につくっておいたスープに、ゆで上がったばかりの片児湯を浮かべ、炒めた具をのせる。


日本のひっつみ、みみ
 岩手、青森にみられる「ひっつみ」は、その呼び名の通り、水でこねた小麦粉生地を食べやすい大きさに引っ摘んで、汁の中に生地を直接投げ入れて、具材と一緒に煮込んだものです。汁のベースは地域によって、しょうゆ、味噌などの味つけがあり、具材はおもにごぼう、大根、にんじんにねぎなどを用い、汁物が九分くらいでき上がったところにひっつみを食べる分だけ投入して、火を通してすぐにいただくのがおいしさの秘訣です。生地を直煮にすることで、汁にほどよいとろみがついて味わい深い仕上がりになります。
 そのおいしさゆえに、食べ過ぎてしまうところから、殿様から「御法度(ごはっと)」つまり禁令が出てしまうほどだった「はっと汁」は、だし汁に大ぶりに切った里芋、大根、にんじん、青菜をいれ、味噌で味を調える。ここへ小麦粉を水でこねてからのばして切り揃えた生地を直に入れて煮込む。


 栃木、山梨を中心にみられる「みみ」は、その形が農具の蓑(み)の形ににているから、また鬼の耳のような形状をしているところからその名があるなど諸説がありますが、鬼の耳説には、正月三が日にみみを食べれば、その1年間を無病息災で過ごせるとか、耳を食べることでよその悪口が聞こえなくなり、まわりと円満にいくという説もあります。だし汁に大根、にんじん、ごぼう、かぼちゃなどたっぷりと野菜を入れて煮込み、しょうゆか、味噌を加えて味を調えて、水でこねた小麦粉生地をめん棒でのばして四角に切って、指で生地をひねって耳のような形にしてから、汁にみみを入れて煮込む。


岩手の「まめぶ」は、その名の通り、水でこねた小麦粉生地を豆のように丸めたものです。形以外にも「まめまめしく、健康に」という願いも込められていて、お祝いなどのハレのごちそうには欠かせないものです。昆布や煮干しのだし汁にごぼう、にんじん、干ししめじなどの野菜と、焼き豆腐、油揚げ、かんぴょうなどを煮込み、しょうゆで味を調え、小麦粉生地にはっとや、ひっつみなどとは違い、中にくるみや黒砂糖を入れて小さく丸めて包んでから煮てゆきます。生地が浮かび上がったらできあがりです。食べてみれば、くるみの香ばしさと、黒砂糖の甘みが口に広がります。「まめぶを食べないと年が越せない」といわれるほど、地元で愛されている食べ物なのです。

 
  (食文家)
参考文献

日清製粉グループホームページ

「全国粉料理MAP」


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。