小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

昭和の焼き菓子
                       ひらの あさか
 今回は昭和を代表し、現在まで愛され続けているビスケットの仲間を紹介します。



じつは大正からあった名物菓子

 ハードビスケットは、しっかりとした歯ごたえがあり、ガス抜きのための針穴があいているのが特徴です。
 グルテンの比較的多い中力粉を使用して砂糖や油脂を抑えて、水分を多めににして時間をかけて練ると、コシの強い生地ができます。この生地を薄く焼き上げます。すると割るときめ細やかなパリッとした歯ざわりのビスケットに仕上がります。


 ハードビスケットの女王「マリー」。
その名前は、かのマリーアントワネット妃に由来しているそうで、ビスケットのデザインにも家紋を表わしているという由緒正しいビスケットなのです。


 「マリー」が誕生したのは、驚くことに今から90年前の1923年(大正12年)。森永製菓が国内向けとして、初めて発売した16種類のビスケットが入った贈答用の詰め合わせの中に「マリー」は入っていたのでした。
 その頃、まだ高級品だったビスケットは一般の人の口に入るものではありませんでしたが、それから3年後の1926年(大正15年)に多くの人にビスケットを食べてもらえるようにとつくられたのが「マリー」でした。
 下って戦時下には、軍納製品になったり、その後、原材料が手に入らずに、生産が止まるということもありましたが、戦後「マリー」は再び復活して、昭和から現在に至るまで人々に愛されるビスケットとして生き続けています。




ソフトビスケットの仲間
 ソフトビスケットは、グルテンの少ない薄力粉を用い、砂糖や油脂を多く、水分を少なめにして、短時間で練って生地を焼き上げます。柔らかく、サクサクした歯ざわりで、クッキーなどもこの仲間に入ります。
 原料の配合によって、かたさはさまざま。成型によっていろいろな形があります。伸ばした生地をカッターで抜くもの、彫刻した型にかための生地を詰めたものなどの成型法があります。


 森永製菓の「チョイス」は、戦前の1938年からありますが、戦時下は「マリー」同様に生産をストップしますが、1952年待望の復活をとげます。何といってもおすすめなのが、牛乳と一緒に食べること「チョイス」を牛乳にしみ込ませていただくのが、私の昭和の定番でした。これをお砂糖抜きのミルクティで食べるのもおすすめです。2010年にはコンパクトなひと口サイズのチョコレートコーティングされたチョコビスケットとして新たに発売されました。


 懐かしの「ココナッツサブレ」は、1965年(昭和40年)から日清シスコが発売しているロングセラー。原料に小麦粉、砂糖、ショートニング、植物油脂、ココナッツを使って練り上げ、できた生地を薄く伸ばして何層かに折り重ねて、さらにミリ単位の薄さに伸ばして、形抜きした生地の表面に砂糖をかけて、オーブンで焼きます。ココナッツの独特の香りとサクサクッとした歯ざわりが心地よい。




昭和の三大パイといえば
 「パイ」は小麦粉生地の間にバターやマーガリンなどの油脂を入れ、生地と油脂が交互になるように幾層かに折りたたんで、伸ばして成型し、焼いたものです。食品成分表的にいえば「パフパイ」とよばれている焼き菓子です。
 独断的昭和の三大パイとあえていってしまえば「源氏パイ」「ホームパイ」「うなぎパイ」があります。


 カンパンなどでおなじみの三立製菓の「源氏パイ」が生まれたのは、1965年(昭和40年)。その翌年の大河ドラマ「源義経」にあやかろうとつけられたネーミングだったといいます。その頃、洋風菓子のパイに「源氏」とつけたという発想も独創的で、とてもインパクトのある名前で、子どもの間でも人気のパイでした。かたくておいしい外側の枠の部分を最初にガリガリと食べてから、内側の柔らかサクッとしたパイ部分をいただいたものです。しかし、その食べ方ではよくあることですが、ポロポロとこぼしてよく叱られたものです。


 浜松の春華堂「うなぎパイ」は、1961年(昭和36年)に生まれました。浜名湖名産のうなぎのエキス、にんにくが生地に練り込まれているその名も「夜のお菓子・うなぎパイ」。
 子ども心に、隠微な響きを持つお菓子でした。新幹線も開通とともに関東地区へもメジャー進出しますが、その頃おみやげでいただいたものを子どもはひとり半分ずつ、大切に食べた記憶があります。


 不二家の「ホームパイ」が生まれたのは、1968年(昭和43年)。ホームサイズのパイだと思っていましたが、ホームメイドなパイだったのです。現在の大きさより子どもの頃の記憶ではもう少し大きいものがセロファンに2枚包まれていたように記憶しています。


 そして、三大パイ以外に忘れてならないのが、銀座ウエストの「リーフパイ」。現在でも東京みやげの代表格ですが、昭和の時代にはそう簡単に食べられないハレの洋菓子でした。
 小麦粉とバターを使用し、256層にも折りたたみ、木の葉の形に整形して焼き、上部には細かいザラメをちりばめています。パイはさっくり、ザラメの歯ざわりが、何ともオトナの味がしたものです。

 

 
  (食文家)
参考文献

(一社)全国ビスケット協会ホームページ

まだある。大百科 お菓子編 初見健一        大空出版


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