小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「小麦粉ごはん」韓国編
                       ひらの あさか


雨の日には「チヂミ」を

 「なぜ雨の日にチヂミを焼くの?」それはいろいろな説があるようですが、そのひとつは、チヂミを焼くときに出る油のはぜるパチパチという音と、雨粒が地上に落ちてくる音が似ているという説。とかく気分がふさぎがちになりやすい雨の日に、アツアツ焼きたての料理を体が求めているという説などがあります。たっぷりの油を使って焼き上げるチヂミは、そんな雨の日の気分を晴らすボリューム感のある料理なのです。買い物に出たくない雨の降る日に、家で小麦粉生地とありあわせの材料を使って、チヂミを焼くという習慣は韓国では昔からあったようです。


「チヂミ」の仲間
 日本でもおなじみの「チヂミ」は、韓国では「ジョン(煎)」や「ブッチムゲ」という呼び方が一般的です。
 その名称は、プッチンダ(焼く)という言葉から派生した「プッチゲ」「プッチムゲ」から、地域によって「マップッチ」「チヂムゲ」「チヂミ」などと呼び名も異なるようです。いずれも「平たく伸ばして焼いたもの」を意味する日本でいえば、お好み焼きの仲間にあたる食べ物です。
 「ピンジャトッ」もチヂミの仲間ですが、生地には緑豆を用います。ふっくら厚みのあるお好み焼き状の食べ物です。
 ピンジャトッはその昔、祭祀の膳に用いられた食べ物で、油で焼いた肉の下に積み重ねて供えられたり、焼いた肉のかさを増やすために敷いたり、余分な油を吸い取るための台としてつくられたようです。
 後にボリュームがあるために、貧しい人のための食べ物として用いられ、富む人が肉を食べ、下敷きに使われたピンジャトッは、貧しい人々にふるまわれたのでした。その名があらわすように「貧者餅(ピンジャトッ)」貧しい人の食べ物と呼ばれるようになったとか。


チヂミのつくり方
 「にらチヂミ」
小麦粉、水、卵の生地は柔らかめに溶き、にらは2㎝くらいに切って生地と合わせ、フライパンにごま油をひいて生地を薄く流して、両面をよく焼く。


 「あさりと野菜のチヂミ」
にんじん、、ねぎは細切りに、あさりのむき身(缶詰)は汁気をきり、少し汁を残して水で割り、小麦粉、卵とごま油少々を加えて合わせて生地をつくり、具材を合わせてフライパンでごま油をひいて両面野菜に火が通るように焼く。


 「キムチチヂミ」
白菜キムチ、青ねぎは細かく刻む。小麦粉、水、卵の生地は柔らかめに溶き、材料と合わせておき、フライパンにごま油をひいて生地を薄く流して、両面をよく焼く。いずれもたれはしょうゆ、酢、ごま油、ラー油、ごま、みじん切りにしたねぎ、コチュジャンなどを好みで合わせてつくる。焼いたチヂミを食べやすい大きさに切って、たれにつけて食べる。


まるでピカタのような「ジョン」
 ひと口大に切り揃えた野菜、魚貝、肉などの食材に、小麦粉をまぶして、卵にくぐらせたころもを薄くまとわせ焼いたジョンは、素材のおいしさを閉じ込めた料理で、旧正月や法事などの料理として親しまれています。


 「豆腐のジョン」
木綿豆腐は薄く切って塩を少々ふっておき、水気をよくふいて小麦粉をまぶしてから溶き卵をつけ、フライパンにサラダ油をひいて弱めの中火で両面を焼き、酢じょうゆをつけて食べる。


 「帆立とえびのジョン」
帆立貝柱は半分に切る。えびは尾と一節を残して殻をむいて背開きにして背わたを取る。両方ともに水気をきってから小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせてからフライパンにごま油をひいて両面を焼き、粗熱を取ってから、ねぎのみじん切りを加えた酢じょうゆをつけて食べる。


 「豚ひき肉のジョン」
しょうが、にんにくはすりおろしておく。ねぎはみじん切りにし、豚ひき肉、ねぎ、しょうが、にんにくを合わせて白ごま、しょうゆ、ごま油を加えて軽く練り、ひと口大の平らな円形にして、小麦粉を薄くまぶし後に、溶き卵にくぐらせ、ごま油をひいたフライパンで両面を焼いて器に移して、糸唐辛子をのせて、酢醤油、好みでコチュジャンを合わせたたれをつけて食べる。


まるでクレープのような
 韓国の伝統料理「九節板(クジョルパン)」。水気のある九節板と乾いた九節板の2種類があります。
 九節板は料理の名ですが、仕切りのある器の呼び名でもあります。
 水気のある九節板は、八角形に仕切られた器に具を入れ、小麦粉を水で溶いた生地を薄く焼いたチョンピン(煎餅)で具を巻いて食べる料理です。元は宮廷料理で、現在は高級料理としてお祝いや特別な席で食べられています。具には薄焼き卵、きゅうり、炒めた牛肉、野菜のナムル、海藻類などを細かく切って、クレープのような小麦粉生地で巻き、つけだれをつけて食べます。
 乾いた九節板は、水気のある九節板と同様の器に木の実や伝統菓子を盛りつけたもので、おもに乾き物を盛りつけたもので、おつまみとして食べられています。


 
  (食文家)
参考文献
韓国料理文化史  李盛雨著  平凡社
  鄭大聲 佐々木直子訳
春夏秋冬韓国ごはん  李映林  文化出版局


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。