小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

フリッターとピカタ
                       ひらの あさか
 
「フリッター」ってなに?

 フリッターとは、肉、魚介、野菜から果物まで、素材に衣をつけて揚げた物です。
 英語ではフリッター(fritter)、イタリア語ではフリット(fritto)、フランス語ではベニエ(beignet)といいます。


 さて「衣をつけて揚げた物」を意味するフライやフリッターなどの違いは、どこにあるのでしょうか。それは、平たくいうと衣の中身が違うのです。
 ご存じのようにフライは、肉や魚介などの素材に小麦粉、溶き卵、パン粉の順につけて油で揚げた物をいいます。洋食でおなじみのとんかつやメンチかつ、えびフライやいかリングなどのフライは昔からなじみ深い物です。
 対してフリッターは素材に、小麦粉、卵黄、油、牛乳、塩、そして卵白を固く泡立てたメレンゲを加えた衣をつけて揚げた物です。
 このメレンゲを加えることによって、表面はカリカリっとした、中はふわふわっとした食感に上がります。フリッターに使われる代表的な素材は、白身魚、えび、貝類、鶏肉、ハムやソーセージ、チーズ、野菜ではブロッコリーやカリフラワー、芽キャベツなどがあります。
 
 最近は生地にメレンゲを使わずに、ビールや炭酸水、ベーキングパウダーなどを使ってふんわり食感だけを出しているものもあります。
 りんごや果物を入れたフリッターには、衣の生地に砂糖や香料を加えて低温で揚げていくものもあり、フランスのベニエなどは、衣に使う生地だけを使って揚げたドーナツ状の物もあります。


「ポルム」と「長崎天ぷら」

 ポルトガルのフリート(frito)は、揚げ物全般を指すことばですが、衣に味をつけて、どろっとした生地のポルム(polme)という揚げ物があります。
 白身魚や野菜などを材料とし、卵、水、小麦粉に塩を加えて混ぜた衣をつけ、少量の油で揚げた物です。
 このポルムの生地に砂糖を加えて、味つけをしたものが「長崎てんぷら」のルーツだともいわれています。普通てんぷらは、魚介類や野菜などの材料に、衣に味をつけずに揚げて、天つゆや塩などを添えますが「長崎てんぷら」は、あらかじめ衣に味がついているので、冷めてもおいしく、おそうざいとしても親しまれているようです。


 おつまみに「小えびのフリッター」
えびは水に塩少々を加えて洗い、殻と背わたを取り、キッチンペーパーで水気を取ってから、酒、塩、こしょう、片栗粉で味をつけてもむ。卵白に塩を加えて角が立つくらいに泡立てる。ここに小麦粉、片栗粉を加えて合わせ、サラダ油も加え、混ぜ合わせる。下味をつけた小えびに衣をつけて、くっつかない程度に間をおき、低温でふっくらと揚げる。油をよくきってから、好みでこしよう塩、抹茶塩をつけて食べる。


「りんごのフリッター」
りんごは皮をむいて、好みの厚さのくし形切りに。ボウルにバター、砂糖を加え、泡立て器で混ぜ、卵を少量ずつ加えて泡立て、水を入れてのばし、小麦粉とベーキングパウダーをふるったものと合わせて混ぜる。りんごに衣をつけて、揚げ油でじっくりと揚げます。好みで粉砂糖、シナモンをふっても。同じ生地で、バナナの輪切りを使った「バナナフリッター」に仕上げても。


「ピカタ」じつはイタリアが発祥

 
日本でも最近人気の「ピカタ」。イタリアのロンバルディア地方の料理フリットゥーラ・ピッカータ(Frittura piccata)がその元祖だといわれています。今では、イタリアよりむしろそれ以外の国で知名度が高いとか。確かにミラノに出かけた時には、その姿を見かけなかったような気がします。


 本家イタリアでは、フリットゥーラ・ピッカータの「フリットゥーラ」は、揚げるというより、バターで焼くを意味しています。
 同じように、仔牛肉などをたたいて薄くのばした切り身に、小麦粉をまぶし、揚げずにバターソテーした料理をスカロッピーナ(Scaloppina)と呼んでいます。レモンや白ワインで風味をつけた1品料理ですが、ご当地では、フリットゥーラ・ピッカータより、むしろスカロッピーナという呼び名の方が通りがよいのかもしれません。


 一方、日本で親しまれているピカタは、材料に、塩、こしょうなど下味をつけてから小麦粉をつけ、溶き卵にパルミジャーノチーズなどをよく絡ませて、ソテーしたものが代表的です。豚ヒレ肉、鶏むね肉、鶏ささ身などの肉類、たらやかじきまぐろなどの魚類、ズッキーニやゴーヤなどの野菜ピカタと材料も豊富です。


「鶏むね肉の和風ピカタ」
鶏むね肉は食べやすい大きさのそぎ切りにして、市販のめんつゆを絡ませてから、小麦粉をまぶす。溶き卵にパルミジャーノチーズまたは粉チーズ、青のりを混ぜて、鶏肉に絡ませ、フライパンにサラダ油をひいて、両面を焼き、卵液を再び絡ませて両面を焼く。


「かじきのカレー風味ピカタ」
かじきまぐろは食べやすい大きさに切り、塩、こしょうに、すりおろしたにんにく、カレー粉を絡ませて、小麦粉をまぶす。溶き卵に粉チーズ、パセリのみじん切りを混ぜて、かじきに絡ませ、フライパンにオリーブオイルをひいて、両面を焼き、卵液を再び絡ませて両面をふっくらと焼いて仕上げる。クレソン、きゅうりの斜め細切り、ベビーリーフなどを合わせて好みのドレッシングで和えたサラダなどを添える。
 
  (食文家)
参考文献
南蛮料理のルーツを求めて             片寄眞木子    平凡社 


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。