小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

「うどん」今昔物語
                       ひらの あさか
 
「助六」に登場したうどん

 歌舞伎十八番の「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」門兵衛と福山のかつぎの場でうどんが登場します。


 吉原三浦屋で門兵衛が些細なことで騒動を引き起こす。そこへうどん屋「福山」のかつぎ(出前持ち)が、大きな出前箱を担いで通りかかり、運悪く門兵衛と衝突してしまい、いい争いが起こる。出前持ちは、威勢のいい啖呵を切ってはみるが、門兵衛も負けていない、出前持ちを斬るといい出す。
 ここで喧嘩の仲裁に入ったのが助六。早くうどん屋を通してあげないと、うどんが延びてしまうではないかと門兵衛をたしなめるが、門兵衛は道を通さない。そこで助六がうどんを買い取り、すぐさま「一杯あがれ」といってうどんを門兵衛の頭にかけてしまう。瞬時のことで門兵衛は頭を割られたと勘違いし、うどんを流血と思い、こんなに血が出たと大騒ぎとなる。


 江戸といえば「そば」を思い浮かべますが、ここではうどんが登場します。その頃うどんの薬味には梅、こしょうが定番だったようで、浄瑠璃にも「本妻の悋気(りんき)とうどんにこせうはお定まり」と、ある物には欠かせないという意味のたとえとして「うどんにこしょう」をあらわしています。


風邪のひき始めにうどんを

 中国の古い医学書「傷寒論(しょうかんろん)」に「消化のよい熱い汁物と薬を飲めば薬力が上がる」というような記述があります。
 まだ薬事法などがない時代に、関西のうどん屋には、うどんとあわせて「頓服(風邪薬)」が売られていた時期があったそうです。
 うどん食べて思いきり体を温めてから、風邪薬を飲むと汗がいっぱい出てきて、一晩で風邪が抜けてくれたそうです。「あんかけうどん」にしょうがをたっぷりのせて食べただけでも相当汗だくになりそうですが。何とも理にかなった組み合わせです。


うどん「各地の味」

 関西で「肉うどん」といえば、肉はやはり牛肉です。かつおと昆布ベースのだしにしょうゆ、酒、みりんなどを加えたつゆに牛肉の薄切りを合わせて、うどんにかけて刻んだ青ねぎをたっぷりのせる。この肉うどんからうどんを抜き、卵を落とす「肉吸い」は大阪発祥のソウルフードです。
 滋賀の「のっぺいうどん」の具は、関東圏でいえば「おかめうどん」によく似ています。
 太いうどん、具にはかまぼこ、湯葉、伊達巻きに彩りのよい飾り麩、三つ葉、干ししいたけ煮などがのり、かつおと昆布ベースのしょうゆ味のつゆに葛または片栗粉などでとろみをつけ、おろししょうがをのせます。具が隠れそうになるくらいのあんが、しょうがと合わさってからだがとても温まります。
 群馬の「おっきりこみ」は、塩を加えずにつくった小麦粉生地を太めに切り揃えて、大根、里芋、にんじんなど根菜類としいたけ、ねぎを食べやすい大きさに切って、だし汁で煮て、具材に火が通ったらしょうゆやみりんを加え、切り揃えためんを直煮にする。味はしょゆ、みそなどさまざまです。めんを直煮にすることによって、独特のとろみが出ておいしい。


うどん「今どきの味」

 
「台湾風まぜうどん」

まずは、肉そぼろをつくる。フライパンにごま油を熱して、すりおろしたにんにく、豆板醤を加えて香りを出す。ここへ豚ひき肉を加えて炒め、火が通ったら、オイスターソース、酒、みりん、鶏ガラスープを加えて味を調える。冷凍うどんとにらは1㎝くらいに切ってから電子レンジで別々に加熱して、うどん、にら、肉そぼろ、かつお粉、卵黄をのせ、好みでラー油をかけてよくまぜながら食べる。


「カルボナーラ風うどん」
カルボナーラもどきの和えめんです。玉ねぎとにんにくはみじん切り、ベーコンは細切りに。フライパンにオリーブオイルを熱して、にんにくと玉ねぎ、ベーコンの順に炒めて、豆乳、卵を加えて、塩を入れて味を調え、電子レンジで温めた冷凍うどんを加え、さっと和えてパルミジャーノチーズまたは粉チーズ、粗びきこしょうをふる。


「稲庭からすみうどん」
からすみはおろし金などで細かくすりおろす。稲庭うどんは時間通りにゆでて水でもみ洗いして水気をよくきってから、オリーブオイル、からすみと和えてしょうゆ少々を加えて仕上げる。


野菜たっぷり「タンメン風うどん」
キャベツ、白菜、にんじん、長ねぎは食べやすい大きさに切り、鍋にごま油を熱して切った野菜、豚こま切れ肉、もやしを加えて炒める。鶏ガラスープを煮立てて酒を加え、冷凍うどんを入れさっと煮て炒めた具と合わせる。器に移して、おろししょうが、白ごまをふり、好みでこしょうをかける。
 
 
「親子うどん」
親子丼のうどん版です。かつお、昆布ベースのだし汁に酒、みりん、うすくちしょうゆを加えたつゆを煮立て、鶏もも肉は食べやすい大きさに切って入れ、火を通してから、電子レンジでいったん加熱したうどんを加えて煮込み、たっぷりの青ねぎの斜め切りを入れてさっと煮て、溶いた卵に水溶き片栗粉を入れてふわっとつゆにのせるようにして加えて火を止め、温めたどんぶりにうどんを移す。
  (食文家)
参考文献
芝居の食卓          渡辺 保  柴田書店


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。