小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

インド、アジアのパン
                       ひらの あさか
 
 西アジアでは、およそ1万年くらい前から、小麦、大麦をはじめとする穀物と羊や山羊などの家畜を飼う習慣とが結びついた農耕が確立していました。人々の主食は、小麦粉と水を混ぜて塩を加え、加熱する無発酵パンからはじまり、チャパティ、ナン、そしてアラブのパンと豊かです。


平焼きパン「チャパティ」

 古代からのパン「平焼きパン」は、インドやパキスタンなどに受け継がれ、発酵をしないパン、チャパティとして、インドに伝わっています。
 チャパティは、小麦の全粒粉をふるいにかけて、水を加えてよくこね、生地をねかせてから、丸めてめん棒で薄く、そして円形にのばして、タワーと呼ばれる鉄板で両面を茶色い焼き色がつくまで均等に仕上げていきます。
 

「チキンコルマ」
 鶏もも肉は食べやすい大きさに切る。玉ねぎ、カシューナッツはみじん切りに。フライパンにバターを溶かし、カルダモン、玉ねぎ、おろしにんにく、おろししょうがを入れて、玉ねぎがあめ色になるまで炒め、鶏肉を加えてさらに炒める。ヨーグルト、ガラムマサラ、ローリエ、塩を加えてよくかき混ぜて、カシューナッツを入れ、強火にして煮込む。チャパティにチキンコルマを挟んで食べる。


インドの「ナン」
 ナンは、今では日本のスーパーでも簡単に買うことができます。ナンを出すインドの料理店も増えて、店で焼くナンを当たり前のように食べられるようになりました。
 おなじみのナンは、平たく長い楕円形で、表面がぷくぷく膨らんでいるものが多い。中央アジア、西アジアでは、丸い形をしたものが多くみられます。
 材料には小麦粉と塩、水、酵母を使い、ところのよっては、生地に少量の砂糖、スパイス類を混ぜ込むこともあります。発酵させた生地を、長く引っ張るように手でのばして、タンドールと呼ばれる独特の形をした窯の内側にナンの生地をはりつけて焼き、焼き上がったところへ、水牛、山羊の乳からつくるぎーという油を塗って仕上げます。
 ナンは、インドの料理店ではカレーとともに供されることが多く、キーマカレーや野菜カレーをナンの上にのせて、カレーを包み込むように手で食べます。


「なすとひき肉のカレー」
 玉ねぎ、なすはみじん切りにして、フライパンに油を熱し、玉ねぎのみじん切りをあめ色になるまで炒め、次いでなすを加えてさらにに炒め、牛ひき肉を加えてそぼろ状になるまで炒める。ここにココナッツミルクを加えて煮込み、カレー粉と好みでコリアンダーなどの香りの強いスパイスを加えて、水気がなくなるまで煮込む。


 最近では、ナンの上に何と、具材をのせたまるで「ピザ」のような「ナンピザ」に人気があるようです。
 焼き上げたナンの上にサラダと生ハムをのせた「生ハムのせナン」
 ナンの上にルッコラや好みでベビーリーフ、生ハムなどをのせ、バジルソースをかけ、パルミジャーノチーズをふる。ナンに「なすとひき肉のカレー」をのせて、ピザ用の溶けるチーズをのせて焼いた物もおすすめです。


アラブのパン「フブズ」

 アラビア語でパンを意味するフブズは、小麦粉と水に塩を混ぜ、こねて円く平らにのばして、釜で焼いたもので、直径30㎝近くあるものですが、焼きたては中央部分が風船のように膨らんでいますが、空気が収縮すると2枚重ねのようになります。
 かつてアラブ遊牧民の間では「われわれは一緒にフブスと塩をたべた」ということばがあったそうで「フブスと塩」は、力を貸すといったことに例えられ、一緒に食事をするということは、相手との親近感、連帯感がうまれ、さしづめ日本でいうところの「同じ釜のめしを食う」のような意味をあらわしていたようです。
 フブスは、やはり焼きたてが一番ですが、最初はビニール袋などで保湿して食べ切りたいところですが、固くなったものは、さらに焼いて食べるとか、油で揚げて細かくしてクルトンのようにスープの浮き身にしたり、野菜サラダに加えたり、煮込み料理に加えたりします。それでも食べきれない場合は、家畜の餌にするとか。


ポケットパン「ピタパン」

 ピタパン(pita bread)は、平たく円い形をしたパンでアラブをはじめ、北アフリカでも見られるパンです。小麦粉に水と塩、砂糖、イーストを加えて発酵させ、焼き上げたもので、中央が空洞のポケット状になるため、英語ではポケットパン(pocket bread)とも呼ばれています。半円状に切って、中にひよこ豆のペースト、野菜や肉などの具材を挟んで食べます。
 ピタの歴史は古く、数千年にわたって、主食として食べられていて、現在に続いています。一説には、ピタパンはイタリアのピザのルーツともいわれています。薄く、応用性に富んだ生地。うなずけるところがあります。


「てり焼きチキンとアボガドのピタパンサンド」
 鶏肉はしょうゆ、みりんに漬けてグリルで両面を焼く、アボガド、トマトの賽の目切りは、市販のぽんず、オリーブオイル、粒マスタードで和えて、ピタパンにグリーンカールを敷いて鶏肉、野菜を挟んで食べる。
  (食文家)

参考資料     
世界の食文化10 アラブ  農文協  黒木英充 
 


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