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中華麺と肉みそ麺
                       ひらの あさか

「担担麺」君の名は

 暑い時期、汗だくになっても食べたいのが「担担麺(たんたんめん)」。中国の四川省が発祥といわれる「担担麺」は、豚ひき肉を香味野菜と炒めて、ラー油、花椒の粉または花椒油、しょうゆをベースに辛味を効かせ、ザーサイの細切りなどをのせた麺料理です。


 その名「担担」は、成都方言で「天秤棒(てんびんぼう)」を意味し、その昔、天秤棒に調理道具や器、調味料などをぶらさげ、担いで売り歩いたところからその名がついたといわれています。もちろん、担いで売り歩いていたので、現在、日本の町場で見るようなスープがたっぷり張ってあるスタイルではなく、調味料、具材を合わせて和える「汁なし担担麺」が主流だったようです。
 

 日本に「担担麺」が普及したのは、四川省出身の料理人陳建民さんが、その頃、まだラー油や花椒の辛さになじみのなかった日本人のためにつくったものが広まっていったといわれています。辛さを際立たさないように、ラー油にごまのペースト芝麻醤(チーマージャン)の風味を効かせたベースをつくり、スープと合わせて中華麺を加え、スープに絡ませて、具材には、豚ひき肉を炒めた肉そぼろにゆでたチンゲン菜または、ほうれん草、もやしなどを添え、刻んだ長ねぎ、または白髪ねぎを薬味として用いたりします。


 東京新橋にあった「焼売太楼」。ここの「担担麺」の肉そぼろは、ひと味違っていて、肉そぼろにレアな白レバーを細かく刻んだもの、芝麻醤、ラー油とが一体となっていて、通常見られるようなスープに、細い中華麺が入り、チンゲン菜が2枚、刻みねぎが添えられていました。レアな肉そぼろがスープに溶け込まないように、そっと崩しながら食べるのが至福のおいしさでした。


中華乾麺の元祖

 昭和28年(1953)年からつくられている都一の「中華そば」の原料は、小麦粉、食塩、かんすいのみ。四角い縮れ麺が透明な袋に入っていて臙脂(えんじ)色の地に筆文字で「中華そば」と書かれています。発売から今に至るまで、パッケージのイメージは変わらずです。
 油で揚げていない麺は、どんな中華の麺料理にもぴったり。今ほど生中華麺はもとより、冷蔵技術が発達していない時代からある価値ある中華麺です。よくしょうゆベースのつゆにゆでた中華そば、肉屋で買ってきた焼き豚、メンマ、ゆでほうれん草、ちょっと豪華にゆで卵をのせて食べたものです。


肉みそ麺「ジャージャー麺」

 中国の「炸醤麺(ジャージャー麺)」は、粗びきの豚ひき肉、たけのこ、しいたけを細かく刻んだものに、豆みそ、豆鼓醤で炒めてつくる「炸醤」という肉みそを、ゆでた中華麺の上にのせ、好みの野菜を添えたものです。味はどちらかといえば、甘くなく、しょっぱい味の部類に入ります。

 

 日本で「ジャージャー麺」といえば、肉みその味のベースは、甜麺醤などの甘いみそに好みでピリ辛要素もありますが、どちらかといえば、甘みそ味です。ゆでた中華麺ににんにく、しょうがなどを豚ひき肉と炒め、甜麺醤、豆みそ、砂糖などを合わせた肉みそと、きゅうりの細切り、白髪ねぎをのせて、思いきり混ぜながら食べるといったイメージです。
 

韓国の「チャジャン麺」

 中国の「炸醤麺」をルーツとする肉みそ麺に「チャジャン麺」があります。「チュンジャン(春醤)」という甘みの強い黒みそを使用し、肉みその色も濃い。玉ねぎのみじん切りを炒めて、豚ひき肉を加え、さらに炒めてチュンジャンを加えて、仕上げに片栗粉でとろみをつけたものです。ゆであげたうどん状の小麦粉麺に肉みそをのせて、きゅうりの細切りを添えて、好みに合わせて唐辛子の粉をたっぷりとかけて食べる。


盛岡の「じゃじゃ麺」
 中華麺ではないですが、中国「炸醤麺」に近い味つけの肉みそ麺に盛岡の「じゃじゃ麺」があります。
 「じゃじゃ麺」は漢字にすると「炒醤麺」。「炒醤」とは、字のごとく「みそを炒める」という意味になります。
 見た目は「ジャージャー麺」に似ていますが、どちらかというと味は辛めです。
 肉みそは、ねぎの粗みじん切り、豚ひき肉などを豆みそとよく炒めます。ゆであげた平打ちの小麦粉麺にこの肉みそをかけて、きゅうりの細切りをのせる。


 また、食べ方も様々あり、酢をかけたりおろしにんにく、おろししょうが、ラー油を加えたりして、自分ならではの味つけにして、ゆでた麺をよく混ぜながら食べます。
 そして、食べ終えたら、別だてで生卵を注文し、卵を溶いて、そこに麺のゆで汁を店の人に注いでもらい、塩やこしょうなどで味を調えると「鶏蛋湯」チータンタン=チータン(卵スープ)が飲めるという、ひとつのお皿で2度おいしい、常連にとっては、これを飲まずして「じゃじゃ麺」を食べ終えるということにはならないとまでいわれたりします。


  (食文家)

 


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