小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉のある風景

忘れられない焼き菓子
                       ひらの あさか
 今回は昭和を代表し、今でも愛され続けている焼き菓子を紹介します。


ヨックモックの「シガール」

 「ヨックモック」とは、スウェーデンの首都ストックホルムから北へ、森と湖に囲まれた小さな町JOKK MOKK(ヨックモック)。自然の厳しさに囲まれるこの地には、いつも食卓にホームメイドのお菓子があるという。手づくりのお菓子こそが自分たちのめざすお菓子づくりの原点だと感じ、名前も日本人に分かりやすいように「YOKUMOKU=ヨックモック」と社名をヨックモックと名づけたといいます。

 「葉巻」を意味する“Cigae”が生まれたのは1969年のこと。小麦粉にこれでもかというほどバターを使い、砂糖、卵、小麦粉を合わせ、焼き上げた、ラングドシャ―タイプのクッキーです。
 ラングドシャ―とは、フランス語で「猫の舌」を意味するもので、ごくごく薄くつくられた生地は、バターの比率が高いことで非常に壊れやすいものでしたが、紙のように薄く焼き上げられた生地を葉巻状に巻くことにより、生地が重なり合うことで、独特のサクッとした食感と、軽くて口の中でほろっと溶けるのが特徴です。リッチなバターの香りにつつまれたシガールは、今でもオシャレなクッキーとして人気です。
 

本高砂屋の「エコルセ」

 本高砂屋は、明治10年に神戸市で『紅花堂』の屋号で「瓦せんべい」をつくったところから始まり、戦後昭和20年に『本高砂屋』となりました。そして、昭和45年に生まれたのが「エコルセ」。また昭和50年には「マンデルチーゲル」を発売しました。

 「エコルセ」とは、フランス語で「樹の皮」を意味する「エコルス」の造語で、小麦粉、砂糖、ショートニング、水、脱脂粉乳、卵、食塩などを用いた生地をごく薄く焼いて、三角、短冊、丸型に成形しています。ちなみに丸型は、螺旋状に生地を焼き、内側にミルクとホワイトチョコレートを加えたものです。
 薄くてシンプルな構造をしていますが、ほかには真似のできない、まるで空気のような軽い生地の食感が魅力です。

 もうひとつ「マンデルチーゲル」は、ドイツ語の「マンデル」はアーモンドのことで、「チーゲル」は瓦を意味します。両方の言葉を合わせると「アーモンドの瓦」ということになります。メインのアーモンドに、砂糖、卵、小麦粉を加えて限界まで薄くのばした生地を繊細な焼き加減で仕上げたものです。
 スライスアーモンドの香ばしい味、食感が小気味よい、洋風薄焼きせんべいのようなお菓子です。


小川軒の「レイズン・ウィッチ」

 オトナの味わい「レイズン・ウィッチ」。生地には、小麦粉に濃厚なバターとバニラを加え長方形に焼き上げたクッキー生地を用い、そのクッキー生地2枚の間には、ふっくらとしたレーズンを洋酒に漬け込み、クリームと合わせたものを挟んでいます。
 深い味わいレーズンと、クリーム、サクサクとした心地よいクッキー生地の上には香ばしいアーモンドの薄切りがのっていて絶妙な食感です。


泉屋の「クッキー」

 浮輪マークのクッキーの缶は、裁縫箱に使っていた記憶があります。どこの家にもひとつはあったのではないかと。
 昭和2年の京都で創業した泉屋。その当時伊助、園子夫妻は商売でクッキーを焼くつもりはなく、実費だけをもらい、代わりにクッキーを焼いてあげるというものでした。

 浮輪の形をしたクッキー「リングダーツ」は、代表的な泉屋のクッキーです。小麦粉ベースの生地に細かく切ったゼリーがのったもので、伊助亡きあと、残された家族がどんな荒波に遭っても沈むことのない「浮輪」は、「人の和(輪)」をも表し、母である園子3人の息子を表わす4色のゼリー状の飾りをのせることで、どんな困難の中にあっても“人の輪”でのり切って行こうという思いを託したものでもありました。またクリスチャンだった園子は、クッキーを焼くことは社会奉仕のひとつだと考えていたようです。

 
ブルボンの「ルマンド」
 ブルボンの前身『最上屋』の創業は大正13年、新潟県柏崎市に生まれた和菓子の店でした。その後『北日本食品工業』を経て『ブルボン』に。
 洋風菓子らしい高級感のある名前を模索していたなか、その昔インスタントコーヒーを扱っていた時、その原料の生豆の種類ブルボン種を輸入していたところから、ブランド名にブルボンを使用。その後社名とブランド名を統一したといいます。
 昭和49年に発売の「ルマンド」は、小麦粉ベースの薄いクレープ状の生地を、幾重にも重ね、甘さをかなり抑えたココアクリームでやさしくコーティングしたもので、サクサクと軽やかな歯ざわりが独特です。

 昭和40年発売の「ホワイトロリータ」の名前の由来は、小麦粉ベースのクッキー生地をロータリー式マシンで製造するというのが、発想の原点だったとか。生地をロータリー式回転マシンでねじったクッキー生地を焼いてサックリとしたソフトクッキーに仕上げ、甘さを抑えたミルク風味のホワイトクリームでコーティングしています。


  (食文家)

 


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