小麦・小麦粉に係る話題

第115回 小麦粉のある風景

郷愁の街中華
                             ひらの あさか
「街中華の王道」といえば
 今静かなブームで注目されている街中華。 ボリュームがあって、お財布にもやさしい、そんな街の中華屋さんのことです。
 「街中華の王道」といえば「タンギョウ」。 タンメン、ギョウザが店にあるというのが私の指標ですが、最近ギョウザはあってもタンメンを扱っている店がかなり少ないのが悩みの種です。
 「タンメン」は、ゆで上げた中華麺の上にキャベツ、にんじん、玉ねぎ、もやし、にら、きくらげ、豚肉少々をさっと炒めて、鶏ガラスープをベースにした塩味のスープをかけたもので、ラーメン類の中では、最もシンプルであっさりしたもので野菜たっぷりというのが、たまらない。


ご当地ラーメン5選
 各地には、その地域にぴったり合ったご当地ラーメンがあります。 その中からごく一部を紹介します。
「札幌ラーメン」
戦後、屋台から始まったとされ、とんこつベースのスープに、濃厚なみそのうま味を生かし、このスープにうまく絡むように太い縮れ麺を用い、キャベツ、玉ねぎを炒めてのせ、チャーシューや刻みねぎ、メンマといった定番のラーメンや、さらに北海道産のバターやコーンがのっているものもあります。 スープの上にバターをのせるのは、スープが冷めるのを防ぐという効果もあるようです。

「喜多方ラーメン」
 福島を代表するラーメンのスープは濃厚で、煮干しなどの魚介と、とんこつのスープを別々に取り、しょうゆベースの澄んだスープを使い、麺は太めの縮れ麺を用います。 このほかにさっぱり風味の塩味、こってりみそ味などがあります。

「サンマーメン」
 神奈川発のご当地ラーメンです。 この名前を見て「えっ、ラーメンにさんまがはいっているの?」と思った人もいるかもしれませんが、さんまは入っていません。 サンマーメンは「生馬麺」と書き、「生馬」とは、活きのよい具材を意味しています。 豚肉、ターツァイ、もやしと3種の新鮮な具材を使ったことから、サンマーメンといわれるようになったとか。 細めの麺に、塩味かしょうゆ味のスープ、その上に、キャベツ、もやし、きくらげ、かまぼこ、豚肉の細切りを炒めてあんを絡ませたものをのせる。

「京都ラーメン」
 京都、滋賀に広まっている京都ラーメン。 京都といえば、あっさりうす味を想像してしまいがちですが、ところがどっこい、全国屈指の濃厚ラーメン地域なのです。 お店によっても違いはありますが、とんこつに野菜を加える濃厚スープをベースにしょうゆ味のどろっとしたスープ、麺はかんすいが少ないストレート麺を使い、背脂がのっていたりします。

「博多ラーメン」
 とんこつラーメン発祥の地、福岡のラーメンの代表格です。 とんこつをベースにした乳白色で濃厚なスープを用い、極細のストレート麺にこのスープを合わせて上に紅しょうがをのせ、ごまをかけるという、とってもシンプルなラーメンです。 また麺のみをおかわりする「替え玉」があること、麺のかたさを選べるのも博多ラーメンのならではの特徴です。


懐かしのラーメン店
 思い出に残る忘れられない東京のラーメン店があります。 ちょっと偏っているかもしれませんが「そんな店があったんだ」と思っていただけるとありがたいです。
 雑司ヶ谷にあった『宝軒』のラーメンは、小麦粉生地をテコの原理で何度も延ばして少し太めの幅に揃えた手延べの麺でした。 とくにこの麺を素揚げして、豚肉少々、玉ねぎ、にんじん、もやしなどを炒め合わせ、スープを加えてとろみをつけた「焼きそば」に、対抗するのは国産ワインのマルスワイン白の一升びん。 ワインを頼むと並々と注ぐと180mlは入るビールのグラスと一升びんの白ワインがどんと置かれて、飲んだ分を後に自己申告するというものでした。 必ずといっていいほど、頼む方はズルしていなかったように記憶しています。 体力があれば、ワインとともに素揚げしたワンタンの皮にスープに少々酸味を加えたあんをかけた「揚げワンタン」も最高でした。 しかし、焼きそばも揚げワンタンもボリュームが半端でなかったので、ひとりでおじゃました際には、焼きそばは麺少なめに、ワインを3杯ほど飲んだものでした。
 浅草すしや通り『あづま』のラーメンは、究極の細麺で、中でも愛してやまなかったのが「チャーシューメン」でした。 澄んだスープはしょうゆ味でラーメンは極細、上にはみじん切りのねぎ、大型のチャーシューが山を描くように3枚のっているというシンプルで美しいチャーシューメンでした。 これともう1つ人気だったのは「純レバ炒め」。 くさみの少ないレバーを甘辛く炒めたもので、ビールと一緒に頼む人が多く、ビールは自身で冷蔵庫から取り出して、栓を抜き、コップとともに運び、飲んでいたと記憶しています。
 音羽の『ちゃぶ屋』。 今は下北沢から海外まで展開している店ですが、その昔、音羽にも店がありました。 とんこつラーメンを芸術的な領域まで高めた繊細なラーメンで、通常のラーメンにアートなチャーシューがのっています。 トッピングで味玉を頼んでも千円はしなかったと記憶しています。 ヘヴィなとんこつが多く、食わず嫌いだった人に朗報なとんこつラーメンでした。 そして木製の引き出しを開けてお箸を取り出すという手法も業界ではあまり見ることのできないものでした。
                                (食文家)

*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。