小麦・小麦粉に係る話題

第120回 小麦粉のある風景

街そばと駅そば
                             ひらの あさか
そばの昔ばなし
 時は江戸「皇都午睡(こうとごすい)」という随筆本には「蕎麦に二種あり。カケ、モリと有り。 カケはぶつ掛け、モリは小青楼の猪口にだしをつぎ出すなり」とあります。 そばには、かけともりの2種類あって、かけそばはそばにつゆをかけて食べるもの。もりそばは、そば猪口(ちょこ)につゆを注ぎ、そばをつけて食べるものです。といったところでしょうか。
 今でいう「かけそば」は「ぶつかけそば」を略したもので、江戸時代には「ぶつかけそば切り」が正式な呼び名だったようです。 その頃、そばといえば、もりそばのことを指したようです。 後年「そば切り」=もりに汁をぶっかけて食べる「ぶつかけそば切り」が登場し、安永末期(1780年)頃に「カケ」という名称になったようです。
 また江戸川柳に「おそば二八おひねりは二六なり」そばの値段は十六文で、お賽銭は十二文ということをいっています。 この「二八蕎麦」の名のいわれは、いろいろありますが、ひとつはそば1杯の値段が十六文。 ここをしゃれっ気たっぷりの江戸っ子は二×八は十六ってな計算でそう呼んだとか。 またそばとつなぎの小麦粉の割り合い、小麦粉二に対して、そば粉八の配合という説がどうも強いらしいです。



街そばつれづれ
 「街そば」は筆者の造語ですが、「早い、安い、うまい」そば屋さんです。 何といっても繁華街や駅のそれこそ側にあって、駅そば同様に短時間でささっと食べられ、そばと同じメニューでうどんにチェンジできるというところがとても魅力的です。
 街そばの代表格といいたいのが「富士そば」。 1966年(昭和41年)に開業。 渋谷、新宿、そして池袋と、東京の繁華街に続々とオープンしていきました。
 おすすめしたいのは「肉富士」。 全店ではないかもしれませんが、豚バラ肉薄切り煮、わかめに温泉卵、そしてのりがのっていてお値段リーズナブルな530円。 映画を見る前、出先に向かう前のちょっとした時間の中でこれを食べるのが、定例となっております。 やはり、そばが出てくる早さとクオリティの高さがたまらなく、よく通っています。



駅そば大好き
 「駅そば」の定義はなかなか難しいですが、駅構内それこそホーム上、駅構内と改札口を出たすぐそばにあるもの、駅構内と外の真ん中に店があって、内外ともに提供している店など、さまざまな展開をしているお店があります。 最近は構内にあっても立ち食いではなく、いすが置かれているところも多くあります。
 その駅そば発祥の地といわれているのは、長野県軽井沢駅構内だといわれています。 明治30年代、軽井沢から横川間の鉄道が開通。 車両のつけ換えをするのが軽井沢駅で、時間がかかり、待ち時間を持て余すお客さんのために、駅のホームにそばと弁当を売る店ができたのが、その始まりだといわれています。
 駅そばでおいしかったのが、関西は京都。 京阪丹波橋の麺座で食べた「あぶりきつね」。 きつねといえば、三角ジューシーなお揚げさんがのっているきつねを思い出しますが、京都にあっては、ジューシーきつねより、ホンマは九条ねぎがたっぷりのって、刻んだお揚げがのっている「刻みきつね」に少数派かもしれませんが、軍配を上げたくなります。
 そして「あぶりきつね」は、表面をこんがり、それこそきつね色に焼いて四角く切ったお揚げと九条ねぎがのったとてもシンプルなおそばです。 もちろんうどん版もあります。 一味、山椒などをふって食べると格別です。



街そば、駅そば味くらべ
 西の都そばの「都スペシャル」は豪華3本立て。 えび天ぷら、しみしみお揚げ、卵がのってボリュームたっぷり。
 西のそばには「おぼろそば」が。 ちょっと飲み過ぎた朝にぴったりのおぼろ昆布のせのそばです。 澄んだつゆに朧のように昆布が浮き上がって美しい。
 東も西も人気のある「ちくわ天そば」ちくわに青のりを合わせたころもをまとわせ、カラッと揚げたいそべちくわを大胆にも2本のせて、ねぎをあしらった逸品。 ここに薄切りのかまぼこがのっていたりします。
 東で見かけた「桜えびと紅しょうが天そば」桜えびと紅しょうがの赤が冴える丸いかき揚げがのったそばです。 カリカリを食べるもよし、とろけ出したかき揚げをつゆとともにすするもよしのしみじみそばです。
 西の「けいらんそば」平たくいえば、卵とじのあんかけそばです。 この名は西独特のネーミングかと思います。 だしは、宗田がつお、さば、かつおぶし、昆布と味わい深い合わせだしを用いて、こいくちしょうゆと合わせます。 斜めに切った九条ねぎをつゆで煮立て、水溶き片栗粉でとろみをつけてから、溶き卵を加えてゆっくりとかきまわす。 まるで淡雪のような口当たりのそばです。
 東にあった「チャーシューそば」つゆをたっぷりはったかけそばの上に、まるで中華のチャーシュー麺のごとく、薄切りにしたチャーシューをちりばめて、刻んだねぎをたっぷりとのせます。 やはり七味唐辛子がよく合います。

                                (食文家)

参考文献
そば読本 中公文庫編集部編 中央公論社
駅そば読本 鈴木弘毅 交通新聞社


*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。