小麦・小麦粉に係る話題

小麦・小麦粉事情(海外編)


 「アメリカ人のための食事ガイドライン2005年版」について

「アメリカ人のための食事ガイドライン」の改訂版が公表された。肥満の増加を深刻な社会問題と捉え、エネルギー摂取量の管理、好ましい食品のバランス良い摂取、および運動量の増加を柱とした、技術情報が多い、具体的な内容の勧告になった。穀物の推奨摂取量が少し減って、全粒穀物を多く食べることが勧められており、今後、製粉や二次加工業界への影響が大きいと思われる。

ピラミッドではなく、技術情報を多く、具体的に
「アメリカ人のための食事ガイドライン」は5年ごとに改訂されてきた。今回は、合衆国農務省と合衆国保健・福祉省の長官が任命した「食事ガイドライン諮問委員会」によって新しい科学情報が分析され、それをベースにして作成した改訂案が2003年9月に公表された。その後、各方面から出された意見を参考にして修正が加えられ、1月12日に2005年版として両省から公表された。
これまでの版は一般大衆向けの性格が強く、ピラミッドなどで分りやすく示していたが、今回の改訂版では、対象の重点を政策立案者、栄養教育者、栄養士、ヘルスケア従事者などに置き、技術情報を多く含む、具体的な内容にしている。

1日に2.4〜4.8キロメートルのウォーキング

 アメリカでは、内容が悪い食事と運動不足が、エネルギーのアンバランスを生じ、肥満を増加させており、心臓血管病、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症、ある種のがんの原因になっている。今回の勧告では、慢性疾患を予防し健康を増進するため、適度の運動をすることを勧め、過剰のエネルギーを摂取しないような賢い食品選択に役立つ指針を提供した。
 勧告は前文と70頁の本文および附表で構成されており、主要部分は9章に分けられている。それらを列挙すると、カロリー必要量内での十分な栄養素、体重管理、運動、食べてほしい食品グループ、脂肪、炭水化物、ナトリウムとカリウム、アルコール飲料、食品安全である。必要な栄養素は主に通常の食品から摂るべきで、不足する場合には強化食品や栄養補助食品の形で補うことも有効とした。会合での食事を計画したり、教材を作る際には、人種、考え方などによる好みの違いも十分に考慮する必要があると指摘した。
 性別、年齢別、および運動量別のカロリー必要量が【表1】のように示されている。運動量については、日常生活での軽い運動のほかに、1時間に4.8〜6.4キロメートルの速さで、1日に2.4〜4.8キロメートルのウォーキングに相当する運動をすることを勧め、それを「適度に活動的」、それ以上の運動をする人を「活動的」とした。体重70キログラムの人がクラブを担いで1時間ゴルフをすると330キロカロリー消費するなど、運動量とカロリー消費量の関係を具体的に示した。

【表1】性別・年齢別・運動量別推定カロリー必要量

(キロカロリー)
  運動量
性別 年齢 少ない 適度に活動的* 活動的*
子供 2〜3 1000 1,000〜1,400 1,000〜1,400
女性 4〜8 1200 1,400〜1,600 1,400〜1,800
9〜13 1600 1,600〜2,000 1,800〜2,200
14〜18 1800 2000 2400
19〜30 2000 2,000〜2,200 2400
31〜50 1800 2000 2200
51〜 1600 1800 2,000〜2,200
男性 4〜8 1400 1,400〜1,600 1,600〜2,000
9〜13 1800 1,800〜2,200 2,000〜2,600
14〜18 2200 2,400〜2,800 2,800〜3,200
19〜30 2400 2,600〜2,800 3000
31〜50 2200 2,400〜2,600 2,800〜3,000
51〜 2000 2,200〜2,400 2,400〜2,800
* 印は、定義は本文を参照されたい。

穀物の半分以上を全粒で食べる
勧告に従うための具体的な食事パターンの例として、「農務省の食事ガイド」と「高血圧予防のための食事プラン」が附表で示されている。【表2】は前者で、カロリー必要量を1,000から3,200キロカロリーまでの12段階に分け、摂取を推奨する食品の種類と量を示した。栄養素を多く含む食品を食べれば、カロリー必要量に達しなくても勧告の栄養素を摂取できるので、残りの自由裁量カロリー許容量の範囲内で、その他の食品や飲料を摂ることができる。
 単位はカップ、オンス、グラム、およびサービングの4通りを使用した。オンスは重量の単位で、28.35グラムである。サービングはその食品の標準的な量を示し、1サービングは穀物では1オンスで、パン1枚、小さいマフィン1個、即席シリアル1カップに相当する。果物や野菜では1/2カップ、牛乳では1カップである。
 食べてほしい食品グループとして、果物、野菜、および穀物を挙げた。2,000キロカロリーの場合、毎日、2カップの果物と2.5カップの野菜を食べるよう勧告し、1週間に数回、5つの野菜グループ(濃緑色、オレンジ色、野菜としてのマメ、でん粉質野菜、その他の野菜)のすべてを食べるべきだとした。
 1日の穀物摂取量については、2000年版に比べて、カロリー段階ごとに1〜2サービング減らし、最低の1,000キロカロリーでは3オンス、2,000キロカロリーの場合には6オンス、最高の3,200キロカロリーでは10オンスとした。また、穀物の半分は全粒製品を食べ、残りの半分はエンリッチした穀物製品、または全粒穀物製品を食べるように指導している点が、これまでのガイドラインと大きく異なる。全粒穀物の摂取を奨励する理由として、【表3】に示すように食物繊維、カルシウム、マグネシウム、カリウムが多く含まれていることを挙げ、アメリカで入手可能な全粒穀物を【表4】のように示した。

【表2】合衆国農務省の食品ガイド

(カロリーはキロカロリー)
カロリー     1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 2,400 2,600 2,800 3,000 3,200
果物 1C
(2srv)
1C
(2srv)
1.5C
(3srv)
1.5C
(3srv)
1.5C
(3srv)
2C
(4srv)
2C
(4srv)
2C
(4srv)
2C
(4srv)
2.5C
(5srv)
2.5C
(5srv)
2.5C
(5srv)
野菜

 濃緑色野菜
 オレンジ色野菜
 野菜としてのマメ
 でん粉質野菜
 その他の野菜
1C
(2srv)
1C/wk
0.5C/wk
0.5C/wk
1.5C/wk
4C/wk
1.5C
(3srv)
1.5C/wk
1C/wk
1C/wk
2.5C/wk
4.5C/wk
1.5C
(3srv)
1.5C/wk
1C/wk
1C/wk
2.5C/wk
4.5C/wk
2C
(4srv)
2C/wk
1.5C/wk
2.5C/wk
2.5C/wk
5.5C/wk
2.5C
(5srv)
3C/wk
2C/wk
3C/wk
3C/wk
6.5C/wk
2.5C
(5srv)
3C/wk
2C/wk
3C/wk
3C/wk
6.5C/wk
3C
(6srv)
3C/wk
2C/wk
3C/wk
6C/wk
7C/wk
3C
(6srv)
3C/wk
2C/wk
3C/wk
6C/wk
7C/wk
3.5C
(7srv)
3C/wk
2.5C/wk
3.5C/wk
7C/wk
8.5C/wk
3.5C
(7srv)
3C/wk
2.5C/wk
3.5C/wk
7C/wk
8.5C/wk
4C
(8srv)
3C/wk
2.5C/wk
3.5C/wk
9C/wk
10C/wk
4C
(8srv)
3C/wk
2.5C/wk
3.5C/wk
9C/wk
10C/wk
穀物
 全粒穀物
 他の穀物
3oz
1.5
1.5
4oz
2
2
5oz
2.5
2.5
5oz
3
3
6oz
3
3
6oz
3
3
7oz
3.5
3.5
8oz
4
4
9oz
4.5
4.5
10oz
5
5
10oz
5
5
10oz
5
5
低脂肪肉・豆 2oz 3oz 4oz 5oz 5oz 5.5oz 6oz 6.5oz 6.5oz 7oz 7oz 7oz
牛乳 2C 2C 2C 3C 3C 3C 3C 3C 3C 3C 3C 3C
15g 17g 17g 22g 24g 27g 29g 31g 34g 36g 44g 51g
自由裁量
カロリー量
165 171 171 132 195 267 290 362 410 426 512 648

1. 重量の表示:1オンス(oz)相当(1サービング、srv)穀物とは、調理した米、パスタ、調理したシリアルなら1/2カップ、乾燥パスタと米は1オンス、パンは1枚、小さいマフィン1個(1オンス)、即席シリアルフレークは1カップに相当する。
1カップ(2サービング)の果物、野菜とはカット生又は調理した果物又は野菜なら1カップ、果物又は野菜ジュースは1カップ、葉ものサラダは2カップ。
肉と豆1オンス相当とは、脂身が少ない肉、鳥肉、又は魚なら1オンス、卵は1個、調理した乾燥豆又は豆腐は1/4カップ、ピーナッツバターは大さじ1杯、ナッツや種子は1/2オンス。
1カップ(1サービング)の牛乳とは、牛乳又はヨーグルトなら1カップ、ナチュラルチーズは1.5オンス、プロセスチーズは2オンス。
2. 野菜の種類:濃緑色野菜はブロッコリ、ホウレンソウ、タチチシャ、コラード、カブ、マスタードの葉など。
オレンジ色野菜はニンジン、サツマイモ、冬カボチャ、カボチャなど。
野菜としてのマメは、ピントビーン、インゲンマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、豆腐など。
でん粉質野菜はジャガイモ、トウモロコシ、グリーンピースなど。
その他の野菜はトマト、トマトジュース、レタス、インゲン、タマネギなど。
3. 自由裁量カロリー量とは、上の食品を勧告量食べた場合に計算上余るカロリーで、この数値の範囲内で健康に良い食品を組合わせて食べることができる。

【表3】小麦全粒粉とエンリッチし漂白した多用途白小麦粉の比較

  小麦全粒粉100g エンリッチし漂白した
多用途白小麦粉100g
カロリー kcal 339.0 364.0
食物繊維 g 12.2 2.7
カルシウム mg 34.0 15.0
マグネシウム mg 138.0 22.0
カリウム mg 405.0 107.0
葉酸 μg 44.0 291.0
チアミン mg 0.5 0.8
リボフラビン mg 0.2 0.5
ナイアシン mg 6.4 5.9
mg 3.9 4.6

【表4】アメリカで入手可能な全粒穀物

全粒小麦
全粒エンバク・オートミール
全粒トウモロコシ
ポップコーン
玄米
全粒ライ麦
全粒大麦
ワイルドライス
ソバ
ライ小麦
バルガー(砕いた小麦)
キビ
キノア
モロコシ

(現在の消費量順。この他にもある)

これらの他に、2〜8歳の子供は1日に2カップの無脂肪または低脂肪牛乳か、それに相当する乳製品を、9歳以上の子供は3カップ食べるよう勧告した。
保健・福祉省が作ったと思われる「高血圧予防のための食事プラン」は1,600、2,000、2,600、3,100キロカロリーの4段階について、8グループの食品の推奨摂取量を示した。食品グループ別に1サービングの量と食品例が示されているが、穀物以外についてはサービング数のみを【表5】に抜粋した。【表2】の農務省の食品ガイドに比べて、穀物摂取量が1〜3サービング多い。


脂肪の摂取も抑えるなど、食生活への注意いろいろ
 飽和脂肪酸の摂取量はカロリーの10%未満、コレステロールは1日に300ミリグラム未満にし、トランス脂肪酸の摂取はできるだけ少なくする。全脂肪摂取量はカロリーの20〜35%に保ち、脂肪の多くを魚、ナッツ、植物油のような多価不飽和およびモノ不飽和脂肪酸を多く含む食品から摂るべきだとした。肉、鳥肉、完熟白インゲンマメ、牛乳、および乳製品を食べる場合には、赤身のもの、低脂肪や無脂肪のものを選ぶよう勧めた。
 繊維が多い果物、野菜、全粒穀物を食べる回数を増し、砂糖やカロリーになる甘味料が少ない食品や飲料を選ぶようにする。口中を衛生的に保ち、砂糖とでん粉を含む食品や飲料を食べる回数を減らして、虫歯の予防に努める。ナトリウムは1日に2,300ミリグラム(茶さじ1杯の塩)以下とし、塩が少ない食品を選び、果物や野菜のようなカリウムが多い食品を食べることを勧めた。
 アルコール飲料は賢く、適度に飲むべきで、女性は1日に1ドリンク、男性は1日に2ドリンクまでに抑え、飲む量を自己管理できない人、妊娠または授乳中の女性、子供、青年、アルコールと反応する薬物療法中の人はアルコールを飲むべきではないと勧告した。

【表5】高血圧予防のための食事プラン(穀物以外はサービング数のみ抜粋)

食品グループ カロリー必要量
(キロカロリー)
1サービングとは 食品の例 重要性
1,600 2,000 2,600 3,100

穀物
(サービング)
6 7〜8 10〜11 12〜13 パン1枚
ドライシリアル1オンス
調理した米、パスタ、
又はシリアル1/2カップ

全粒小麦パン
イングリッシュマフィン
ピタパン、ベーグル
シリアル、グリッツ
オートミール
クラッカー
無塩プレッツェル
ポップコーン


エネルギーと
繊維の主要源
野菜 3〜4 4〜5 5〜6 6      
果物 4 4〜5 5〜6 6      
低脂肪・無脂肪酪農製品 2〜3 2〜3 3 3〜4      
肉・鳥肉・魚 1〜2 2以下 2 2〜3      
ナッツ・種子・豆類 3〜4 4〜5 1 1      
油脂 2/週 2〜3/週 3 4      
甘味 0 5/週 2 2      

 微生物由来の病気を避けるために、手、食品表面、果物、野菜をきれいにするが、肉や魚は洗ってはいけない。買い物、調理、保存中には生、調理ずみ、および即席食品を分け、微生物を殺せる安全な温度まで加熱して食べるよう注意を促した。

(財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)

*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。