小麦・小麦粉に係る話題

小麦・小麦粉事情(海外編)


 「2015-2020年版 アメリカ人のための食事ガイドライン」について

「標記が公表された。合衆国では慢性病の増加が深刻な社会問題だが、健康な食事パターンと規則的な身体活動によって健康を達成、維持し、慢性病リスクを低減できるとして、適切なカロリーレベルで多種類の食品グループから健康に良いものを選んで食べることを勧める内容である。飽和脂肪、加える糖、およびナトリウムを含む食品の摂取量を減らすよう求める一方で、穀物を健康な食事パターンを構成する重要な食品と位置づけており、製粉や二次加工業界も歓迎の意向である。本改訂版はアメリカ人の食生活改善に貢献し、アメリカの食品業界に様々な影響を与えるだけでなく、多くの国で食事指針の改訂や作成の参考にされると思われ、食品消費動向にも少なからぬ影響を与えると考えられる。」



★科学情報に基づく具体的な啓蒙・指導書の性格を持つ
 「アメリカ人のための食事ガイドライン」は1980年以降5年ごとに改訂されており、今回のは第8版である。合衆国農務省と保健福祉省の両長官が任命した「食事ガイドライン諮問委員会」が本件に関連する最新の科学技術情報を分析し、それらをベースにして作成した改訂案が2015年春に公開された。その後、各方面から出された意見を参考にしてこれに修正が加えられ、2016 年1月7日に「2015 - 2020 Dietary Guidelines for Americans」として両省から正式に公表された。
 国民一般と栄養関係者への啓蒙・指導書であると共に、国の栄養プログラムへの科学的および政策的ベースを提供する性格を持っている。これまでの版は食品グループや栄養素のような個々の食事構成要素に重点を置いていたが、それらが組み合わさって食事パターンを形成し、その構成要素が相互作用して健康に累積的に作用する可能性があるとして、今回の版では食事パターンを中心にし、それらを構成する食品と栄養素特性を注目した。



★カロリーバランスを維持し、健康な食事パターンに従うことが基本

 人生の各段階、すなわち年齢に応じた適切なカロリーバランスを維持することが、適切な体重維持に必須である。特に、体重過多や肥満の人は、食品や飲料からのカロリーをこれまでより減らす必要がある。ガイドラインでは性別、年齢別、および運動量別の推定カロリー必要量を示し、多くの人が陥っているカロリー摂取過多に警告を発した[表1]。
 また、今回は食事パターンを重視するということで、アメリカ人の多様な食事スタイルの中から代表的と思われる3つ(合衆国タイプ、地中海タイプ、および菜食主義者)の食事スタイルを選び、それぞれについて合衆国農務省が作成した健康な食事パターンを示した[表2]。これらでは、[表1]に示したカロリー必要量別に、健康な食事パターンを構成する食品グループと食品それぞれについて、推奨摂取量をカップまたはオンス相当量(油はグラム)で記した。一方、健康な食事パターンを構成する食品以外のもの(摂取を制限する食品など)については、それらを摂取する場合の合計カロリー量の上限を示し、その範囲内での摂取を求めている。なお、情報があまりにも多いので、[表2]では、地中海タイプおよび菜食主義者の食事スタイルについては代表的なカロリー必要量である2,000キロカロリーの場合のみを記載した。
 また、性別、年齢別、および推奨カロリー量別の主要栄養素、ミネラル、およびビタミンの摂取量の目標値を[表3]のように示しており、食事パターンに従って食品や飲料の種類を選び、量を決める際に参考にすることを求めている。
 さらに、カリウム、カルシウム、ビタミンD、および食物繊維については、どの食品にどの程度含まれているかを示した。その中で、栄養強化即席シリアルをカルシウムとビタミンD源になる食品の1つに挙げ、食物繊維源になる食品には各種のふすまを原料にした即席シリアル、調理したブルグア、調理した小麦全粒粉スパゲティ、小麦全粒粉パラタパンなどが含まれている。

【表1】性別・年齢別・運動量別推定カロリー必要量

(キロカロリー)
年齢 男性(運動量*別) 女性(運動量*別)
少ない 適度に活動的 活動的 少ない 適度に活動的 活動的
1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000
1,000 1,400 1,400 1,200 1,200 1,400
1,200 1,400 1,600 1,200 1,400 1,400
1,200 1,400 1,600 1,200 1,400 1,600
1,400 1,600 1,800 1,200 1,400 1,600
1,400 1,600 1,800 1,200 1,600 1,800
1,400 1,600 2,000 1,400 1,600 1,800
1,600 1,800 2,000 1,400 1,600 1,800
10 1,600 1,800 2,200 1,400 1,800 2,000
11 1,800 2,000 2,200 1,400 1,800 2,000
12 1,800 2,200 2,400 1,600 2,000 2,200
13 2,000 2,200 2,600 1,600 2,000 2,200
14 2,000 2,400 2,800 1,800 2,000 2,400
15 2,200 2,600 3,000 1,800 2,000 2,400
16 2,400 2,800 3,200 1,800 2,000 2,400
17 2,400 2,800 3,200 1,800 2,000 2,400
18 2,400 2,800 3,200 1,800 2,000 2,400
19〜20 2,600 2,800 3,000 2,000 2,000 2,400
21〜25 2,400 2,800 3,000 2,000 2,000 2,400
26〜30 2,400 2,600 3,000 1,800 2,000 2,400
31〜35 2,400 2,600 3,000 1,800 2,000 2,200
36〜40 2,400 2,600 2,800 1,800 2,000 2,200
41〜45 2,200 2,600 2,800 1,800 2,000 2,200
46〜50 2,200 2,400 2,800 1,800 2,000 2,200
51〜55 2,200 2,400 2,800 1,600 1,800 2,200
56〜60 2,200 2,400 2,600 1,600 1,800 2,200
61〜65 2,000 2,400 2,600 1,600 1,800 2,000
66〜70 2,000 2,200 2,600 1,600 1,800 2,000
71〜75 2,000 2,200 2,600 1,600 1,800 2,000
76以上 2,000 2,200 2,400 1,600 1,800 2,000

*運動量の定義は[表4]を参照されたい


【表2】健康な合衆国スタイル食事パターン:カロリー別食品推奨量
食事スタイル 合衆国 地中海 菜食者
食品グループと個々の食品 キロカロリー        
1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 2,000 2,000
野菜(c-eq)
濃緑色野菜(c-eq/wk)
赤・オレンジ色野菜(c-eq/wk)
野菜としてのマメ(c-eq/wk)
でん粉質野菜(c-eq/wk)
その他の野菜(c-eq/wk)
1
0.5
2.5
0.5
2
1.5
1.5
1
3
0.5
3.5
2.5
1.5
1
3
0.5
3.5
2.5
2
1.5
4
1
4
3.5
2.5
1.5
5.5
1.5
5
4
2.5
1.5
5.5
1.5
5
4
3
2
6
2
6
5
2.5
1.5
5.5
1.5
5
4
2.5
1.5
5.5
3
5
4
果物(c-eq) 1 1 1.5 1.5 1.5 2 2 2.5 2
穀物(oz-eq)
全粒穀物(oz-eq/day)
精製穀物(oz-eq/day)
3
1.5
1.5
4
2
2
5
2.5
2.5
5
3
2
6
3
3
6
3
3
7
3.5
3.5
6
3以上
3以上
6.5
3.5以上
3以上
乳製品(c-eq) 2 2.5 2.5 3 3 3 3 2 3
蛋白質食品(oz-eq)
海産物(oz-eq/wk)
肉・家禽・卵(oz-eq/wk)
ナッツ・種子・大豆製品(oz-eq/wk)
2
3
10
2
3
4
14
2
4
6
19
3
5
8
23
4
5
8
23
4
5.5
8
26
5
6
9
28
5
6.5
15
26
4
3.5

3(卵)
14
油(g) 15 17 17 22 24 27 29 27 27
他の食品からのカロリー
上限(kcal)全カロリー中の%
137
(15) 
121
(8)
121
(8)
121
(8)
161
(9)
258
(14)
 
266
(13)
260
(13)
300
(15)

・食品グループ別の量は、1日当たりのカップ(c)又はオンス(oz)相当量、油はグラム(g)で示した。
 また、野菜と蛋白質食品別の量は1週当たりの相当量で示し、穀物中の全粒穀物は最低摂取量である。
・野菜と果物の1カップ(c)相当量とは、1カップの生又は調理した野菜又は果物、1カップの野菜又は果物ジュース、2カップの葉物緑色サラダ、
 1/2カップの乾燥野菜又は果物。
・穀物の1オンス(oz)相当量とは、1/2カップの調理した米、パスタ又はシリアル、1オンスの乾燥パスタまたは米、
 中ぐらい1枚(1オンス)のスライス食パン、1オンスの即席シリアル(約1カップのシリアルフレーク)。
・乳製品の1カップ(c)相当量とは、1カップの牛乳、ヨーグルト、又は強化豆乳、1/2オンスの天然チーズ(チェダーなど)又は2オンスの加工チーズ。
・蛋白質食品の1オンス(oz)相当量とは、1オンスの脂肪がない肉、鶏肉、又は海産食品、卵1個、1/4カップの調理した豆類又は豆腐、
 1テーブルスプーンのピーナツバター、1/2オンスのナッツ又は種子。
・地中海スタイルと菜食者の健康な食事パターンでは、2,000キロカロリーの場合だけを選んで掲げた。


★健康な食事パターンを達成、維持するための5つの重要な指針
 健康な食事パターンになるように、個人はこれまでの食品や飲料の選び方を見直し、必要があれば変える必要があり社会もそのことを支援する役割を持つ。ここで示された食事パターンは厳格な処方箋ではなく、個人、教養、および慣習などによる好みにマッチし、その人の予算に適合するように食品や飲料を楽しみながら選ぶことを基本にし、順応性のある枠組みになっている。食事パターンに関して、次の5つの重要な指針が示されている。
@生涯、健康な食事パターンを続けなさい
 健康に良い多くの種類の食品と飲料から選ぶことが重要である。健康な体重を達成、維持し、栄養素妥当性に合致しており、慢性病リスクの低減に役立つように、適切なカロリーレベルで健康な食事パターンを構成する食品や飲料から選び、それを生涯続ける。
A種類、栄養密度、および量を重視しなさい
 個人それぞれのカロリー限界内で必要な栄養ニーズに合わせるために、健康に良い全ての食品グループ間と食品グループ内から推奨される量の栄養素密度が高い多種類の食品を選ぶ。
B加える糖や飽和脂肪からのカロリーを制限し、ナトリウム摂取を減らしなさい
 加える糖、飽和脂肪、およびナトリウムが少ない食事パターンにする。これらが多く含まれる食品や飲料を食べる場合には、後記の制限基準に従う共 に、それらの合計が健康な食事パターンに適合する量まで減らす。
C健康に良い食品と飲料の選択に替えなさい
 健康的でない食品や飲料を選択していた場合には、それらに替えて、健康に良い全ての食品グループ間と食品グループ内から栄養素密度が高い食品と飲料を選ぶ。教養と好みを上手に活かすことによって、移し替えとそれの維持が容易になる。
D全ての人の健康な食事パターンを支援しなさい
 個人と社会は、全国の様々な環境で全ての人が健康な食事パーンの食事内容になるのを支援する役割を持つ。

【表3】食事基準摂取量と食事ガイドライン勧告に基づく年齢別・性別栄養目標

栄養素 目標量 性別 子供  男 性   女 性
年齢 1〜3 4〜8 9〜13 14〜18 19〜30 31〜50 51以上 4〜8 9〜13 14〜18 19〜30 31〜50 51以上
(kcal)
目標の
出典a
1,000
1,400
1,600
1,800
2,000
2,800
3,200
2,400
2,600
3,000
2,200
2,000
1,200
1,600
1,800
2,000
1,800
1,600





蛋白質 g RDA 13 19 34 52 56 56 56 19 34 46 46 46 46
蛋白質 kcalの% AMDR 5〜20 10〜30 10〜30 10〜30 10〜35 10〜35 10〜35 10〜30 10〜30 10〜30 10〜35 10〜35 10〜35
炭水化物 g RDA 130 130 130 130 130 130 130 130 130 130 130 130 130
炭水化物 kcalの% AMDR 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65 45〜65
加えた糖
kcalの% DGA <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10
全脂肪 kcalの% AMDR 30〜40 25〜35 25〜35 25〜35 20〜35 20〜35 20〜35 25〜35 25〜35 25〜35 20〜35 20〜35 20〜35
飽和脂肪 kcalの% DGA <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10 <10
リノール酸
g AI  7 10 10 11 12 12 11 10 12 16 17 17 14
リノレン酸 g AI 0.7 0.9 1.2 1.6 1.6 1.6 1.6 0.9 1 1.1 1.1 1.1 1.1




      
カルシウム mg RDA 700 1,000 1,300  1,300 1,000 1,000 1,000b 1,000  1,300 1,300 1,000 1,000 1,200
mg RDA 7 10 8 8 8 8 8 10 8 15 18 18 8
マグネシウム  mg RDA 80 130 240 410 400 420 420 130 240 360 310 320 320
リン mg RDA 460 500 1,250 1,250 1,250 700 700 500 1,250 1,250 700 700 700
カリウム  mg AI 3,000 3,800 4,500 4,700 4,700 4,700 4,700 3,800 4,500 4,700 4,700 4,700 4,700
ナトリウム mg UL 1,500 1,900 2,200 2,300 2,300 2,300 2,300 1,900 2,200 2,300 2,300 2,300 2,300
亜鉛 mg RDA 3 5 8 11 11 11 11 5 8 9 8 8 8
mcg RDA 340 440 700 890 900 900 900 440 700 890 900 900 900
マンガン  mg AI 1.2 1.5 1.9 2,2 2.3 2.3 2.3 1.5 1.6 1.6 1.8 1.8 1.8
セレン  mcg RDA 20 30 40 55 55 55 55 30 40 55 55 55 55




    
ビタミンA mg RAE RDA 300 400 600 900 900 900  900 400 600 700 700 700 700
ビタミンE mg AT RDA 6 7 11 15 15 15  15 7 11 15 15 15 15
ビタミンD  IU RDA 600 600 600 600 600 600  600c 600 600 600 600 600 600c
ビタミンC  mg RDA 15 25 45 75 90 90  90 25 45 65 75 75 75
チアミン  mg RDA 0.5 0.6 0.9 1.2 1.2 1.2  1.2 0.6 0.9 1 1.1 1.1 1.1
リボフラビン  mg RDA 0.5 0.6 0.9 1.3 1.3 1.3  1.3 0.6 0.9 1 1.1 1.1 1.1
ナイアシン  mg RDA 6 8 12 16 16 16  16 8 12 14 14 14 14
ビタミンB6  mg RDA 0.5 0.6 1 1.3 1.3 1.3  1.7 0.6 1 1.2 1.3 1.3 1.5
ビタミンB12  mcg RDA 0.9 1.2 1.8 2.4 2.4 2.4  2.4 1.2 1.8 2.4 2.4 2.4 2.4
コリン  mg AI 200 250 375 550 550 550  550 250 375 400 425 425 425
ビタミンK  mcg AI 30 55 60 75 120 120  120 55 60 75 90 90 90
葉酸  mcg DFE RDA 150 200 300 400 400 400  400 200 300 400 400 400 400

a:RDA=Recommended Dietary Allowance,AI=Adequate Intake,UL=Tolerable Upper Intake Level,
 AMDR=Acceptable Macronutrient Distribution Range,DGA=20015-2020 Dietary Guidelines recommended limit,
 14g繊維/1000kcal=繊維のAIの基礎
b: 71歳以上の男性のカルシウムRDAは1,200mg
c: 71歳以上の男性及び女性のビタミンD RDAは800IU


★健康な食事パターンを構成する食品とは
 その個人に合う適切なカロリーレベル内で多くの種類の食品と飲料を含む健康な食事パターンを摂取するのが基本だが、健康な食事パターンに含めることができる食品は次のものである。

@野菜。野菜の全ての副グループ(暗緑色、赤とオレンジ色、豆類、でんぷん質の、およびその他)から多種類のものを選ぶ。野菜には、生、ならびに生または調理済みで冷凍、缶詰、および乾燥品に加えて、野菜ジュースも含む。
A果物、特に果物全部。果物全部には生、缶詰、冷凍、および乾燥品を含む。100%フルーツジュースを含むが、50%ジュースの場合には1/2として摂取量を計算する。100%でない場合には砂糖が含まれていることが多いので、砂糖を加える食品の制限量に従うこと。
B穀物、少なくとも半分は全粒穀物(詳細は後述)
C牛乳、ヨーグルト、チーズ、および/または栄養強化大豆飲料を含む無脂肪又は低脂肪酪農製品。無脂肪および低脂肪(1%)酪農製品は全乳や通常のチーズのような脂肪を多く(2%)含む製品より脂肪が少なく(カロリーも低く、飽和脂肪とナトリウムも少ない)、カリウム、ビタミンAとビタミンDが多いが、その他の栄養成分は同じである。アーモンド、米、ココナツ、大豆などの植物が原料の「乳」と称して売られている製品はこの分類には含めない。
D海産食品、脂肪の少ない肉と家禽、卵、豆類、ならびにナッツ、種子、および大豆製品を含む多種類の蛋白質食品。これら蛋白質食品は蛋白質以外の重要な栄養素源でもある。肉には亜鉛が多く、家禽にはナイアシンが多い。肉、家禽、および海産食品は植物中の非ヘム鉄より生物利用効率が高いヘム鉄を含む。海産食品にはビタミンB12、ビタミンD、多価不飽和オメガ−3脂肪酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸が多い。卵にはコリンが多く、ナツツと種子はビタミンEを多く含む。大豆製品と豆類には銅、マンガン、鉄が多い。
E油。油は単一不飽和及び多価不飽和脂肪を多く含む脂肪で、室温で液体である。食品グループではないが、必須脂肪酸とビタミンEを多く含むので、健康な食事パターンを構成する食品の一つとして採り上げた。カノーラ、トウモロコシ、オリーブ、ピーナッツ、ベニバナ、大豆、ヒマワリなどから抽出した油だが、ココナツ油、パーム核油、およびヤシ油のような熱帯植物の油は成分が異なるのでこの食品グループには含めない。


★健康な食事パターンで摂取を制限すべきもの
 飽和脂肪とトランス脂肪、加える糖、ナトリウムを多く含む食品や飲料、および過多のアルコール摂取は健康に深く関わるので、摂取量を制限して、個人のカロリー限度内で健康な食事パターンを維持できる量に抑える。
@加える糖の消費量はカロリー換算で1日の全カロリーの10%未満に
A飽和脂肪の消費量はカロリー換算で1日の全カロリーの10%未満に
Bナトリウムの消費量は1日に2,300mg未満に
Cアルコールを飲む場合には、適度に飲むべきで、1日に女性は1ドリンクまで、男性は2ドリンクまで


★食品を安全に保つことも健康な食事にとって重要
 アメリカ人の6人に約1人が食品由来の病気にかかり、毎年、12.8万人が入院し、3千人が死亡している。食品は農場を出てから消費されるまでの間の加工や流通段階で多くの人が関与し、家庭でも保存や調理が行われる。それらの
全段階で4つの食品安全基本原則(清潔、分離、加熱加工、低温貯蔵)を守ることが、食品由来の病気の低減に有効である。
 細菌やウイルスは台所中に拡散し、手、まな板などの台所用品、調理台、再利用する買い物袋、および食品に付着する。生の動物食品(生の海産食品、肉、家禽、卵など)および菌を持つ人々からの微生物に食品が汚染されるのを防ぐため、手洗いが重要である。また、食品に付着する微生物や汚染を除去するため、食品の表面を洗うことも有効である。設備や器具を清潔に保つことも重要で、冷蔵庫や棚に保存されている古い食品を廃棄したり、器具の内外を常に清潔に保ちたい。
 購入時に生のものと他の食品を別の袋に入れ、生の食品は低温に保つようにして持ち帰り、できるだけ早くその食品にとって最も安全な温度で保存する。冷蔵庫に入れる時には生のものはすぐ食べられるものの下の棚に置く。再利用する買い物袋は頻繁に洗って清潔に保つ。まな板も生の海産食品、肉、および家禽用のものと他の食品用を分ける。常にきれいな皿を使い、生のものを乗せた皿に調理した食品を盛ることを絶対にしない。
 生の海産食品、肉、および家禽を加熱加工する場合の食品内部の推奨安全最低温度も食品別に示している。


★健康な食事パターンと並んで身体活動が重要
 全ての年齢のアメリカ人は健康を増進し、慢性病のリスクを低減するために、健康な食事ガイドラインの勧告に従うことと並行して、合衆国福祉保健省が作成した「アメリカ人のための身体活動ガイドライン」[表4]を満たすことを奨励している。アメリカ人は健康な体重を達成、維持する必要があるが、健康な食事と身体活動の組合せで、カロリーバランスと体重管理が可能だという。

【表4】アメリカ人のための身体運動ガイドライン
年齢 運動ガイドライン
6〜17歳
(子どもと
青春期)
毎日60分以上の身体活動をするべきである。
 ・有酸素運動:60分以上のほとんどは強度が適度a 又は激しいb 有酸素身体活動であるべきで、週に
  少なくとも3日激しい身体運動を含めたい。
 ・筋肉強化運動c:毎日60分以上の身体活動の一部として、週に少なくとも3日の筋肉強化活動を含め
  たい。
 ・骨強化運動d:毎日60分以上の身体活動の一部として、週に少なくとも3日の骨強化身体活動を含め
  たい。
 ・若者が年齢に応じた、楽しめ、多様性がある身体活動に参加するよう仕向けることが重要である。
18〜64歳
(成人)
 ・無活動状態を避けるべきである。やらないより少しでも身体活動をする方が良く、何らかの身体活動
  に参加する人は何らかの健康恩恵を得る。
 ・かなりの健康恩恵を得るには、少なくとも週に150分の強度が適度、又は週に75分の強度が激しい
  有酸素身体活動、又はそれに相当する強度が適度と激しい有酸素活動の組合せを行いたい。有酸
  素活動は少なくとも10分連続して複数回行い、できれば週を通して行いたい。
 ・より多くの健康恩恵を得るには、週に300分の適度の有酸素身体活動又はそれに相当する適度と激
  しい有酸素活動の組合せを行いたい。より多くの健康恩恵はこの量以上の身体活動を行うことで得
  られる。
・ 週に2日以上、全ての主な筋肉グループを含む筋肉強化活動も含めるべきである。 
65歳以上  ・成人のガイドラインに従うべきである。従えない場合には、能力と状態が許す範囲で身体活動をした
  い。
 ・転倒の危険がある場合は、バランスを維持、改善する体操をしたい。
 ・健康状態に応じた身体活動の努力レベルを決めたい。
 ・慢性病の人は自分の状態が身体活動を安全に行う能力に影響するかを知るべきである。 
 a: 適度な強度の身体活動:心拍数と呼吸をある程度増す有酸素活動。その人の能力に応じた尺度
   で、適度な強度の活動とは0〜10段階で通常5又は6である。段階領域での活発な歩行、ダンス、
   水泳、又は自転車乗りが例である。
 b: 激しい強度の身体活動:心拍数と呼吸を大いに増す有酸素活動。その人の能力に応じた尺度で、
   激しい強度の活動とは0〜10段階で通常7又は8である。ジョギング、シングルのテニス、連続往復
   する水泳、又は上り坂の自転車乗りが例である。
 c: 筋肉強化活動:骨格筋の強さ、力、持久力、及び量を増す運動を含む身体活動。強さのトレーニ
   ング、抵抗力トレーニング、及び筋肉の強さと持久力の運動を含む。
 d:骨強化活動:骨への衝撃又は緊張力を生ずる身体活動。骨の成長と強度を促進する。ランニング、
   縄跳び、及び重量挙げが例である。


★健康な食事パターンの構成要素としての穀物について

 「穀物」を健康な食事パターンを構成する重要な食品グループの1つに位置づけた。穀物をベースにした食品グループには、穀物単独の食品(米、オートミール、ポップコーンなど)と穀物を主原料として含む食品(パン、シリアル、クラッカー、パスタなど)が含まれる。さらに、穀物の半分以上を「全粒穀物」で摂取するよう勧告し、精製穀物、および特にクッキー、ケーキ、一部のスナック食品のような精製穀物が主原料で飽和脂肪、加える糖、ナトリウムを多く含む製品の摂取を制限している。
 全粒穀物(玄米、キノア、エンバクなど)とは胚乳、ふすま、および胚芽を含む穀粒全体である。精製穀物は全粒穀物と異なり、ふすまと胚芽を除くように穀粒が加工されており、食物繊維、鉄、その他の栄養素のかなりの部分が除かれている。2,000キロカロリーの健康な合衆国スタイル食事パターンでの推奨穀物量は1日に6オンス相当量である。
 全粒穀物は食物繊維、鉄、亜鉛、マンガン、葉酸塩、マグネシウム、銅、チアミン、ナイアシン、ビタミンB6、リン、セレン、リボフラビン、およびビタミンAのような栄養素源で、食物繊維含量は穀物の種類によって差がある。全粒穀物を食べる時には、葉酸を強化してある一部の即席朝食用シリアルのようなものも含めるようにしたい。合衆国では葉酸強化が胎児形成中の神経管欠陥発生減に成功しているので、妊娠または妊娠の可能性がある女性は特に配慮が必要である。
 アメリカでは、ほとんどの精製穀物に製造工程で鉄と4種のビタミンB(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、および葉酸)を加えて栄養強化してあり、精製穀物を食べる人はこのように栄養強化したものを選ぶべきである。クッキー、ケーキ、一部のスナック食品のような加える糖や飽和脂肪を多く含む穀物製品は摂取量を制限するべきだが、それらは健康な食事パターン内で量を制限して食べることができる。バター入りでなくプレーンなポップコーン、クロワッサンでなく食パン、ビスケットでなくイングリッシュマフィンのように、栄養素がより密な形の全粒および精製穀物製品を選ぶことも健康な食事パターンのための勧告に沿うことになる。
 5年前の2010年版に比ると、精製穀物の扱いが微妙に違う。前版では約80回も「精製穀物」という記述があり、その多くは過剰摂取を戒めるものだった。穀物食品財団の科学諮問委員会の議長でアリゾナ州立大学教授のGaesser博士によると、アメリカ人の多くは「精製」という言葉にマイナスのイメージを持つ。報道機関は白小麦粉をカロリーが空っぽのように言うことが多く、「精製穀物」という言葉は避けるべき食品である加える糖などと同じ扱いを受けやすいという。
 食事ガイドライン諮問委員会が公開した原稿でも前版までと同じ記述になっていたが、穀物産業連合体の「U.S. Grain Chain」から、この表現は科学的に不正確であり、軽蔑的な言葉の「精製穀物」とより記述的な言葉の「栄養強化穀物」は違うので、専門家も指摘しているように正確な記述にするべきだという意見が出され、それを様々な角度から検討した結果、今回のような扱いになった経緯がある。前述のように、合衆国ではほとんどの精製穀物が栄養強化されているので、これらの精製穀物を記述するのに「栄養強化穀物」という言葉が使われることが多い。これまでは精製穀物を固形脂肪、加える糖、および過度のアルコールと共に摂取を避けるべき食材と位置づけていたが、最新版ではかなり控えめな記述になったと言える。 


★穀物関連業界は穀物の位置づけを歓迎
上述のU.S. Grain Chainは、今回の改訂版が主要な指導的健康機関の勧告と一致する形で全粒穀物と栄養強化穀物の両方を重要と位置づけ、成人は1日に6オンス相当量摂取するよう勧告したことを歓迎している。この連合体のメンバーであるアメリカ・ベーカーズ協会(ABA)も食事中の穀物が全てのアメリカ人の健康を改善し、肥満と闘う上で重要な役割を果たすと強調している点を評価している。同じくU.S.Grain Chainのメンバーの穀物食品財団、全国パスタ協会、北米製粉協会(NAMA)、小麦食品協議会、および全国小麦生産者協会もそれぞれの立場で今回の食事ガイドライン改訂版での穀物の位置づけを歓迎している。
 北米製粉協会はU.S. Grain Chain、合衆国農務省および保健福祉省と共同で、消費者に全粒穀物と栄養強化穀物の健康恩恵に関するメッセージを発信していくことを考えている。全国パスタ協会は健康な食事パターンのモデルの1つとして地中海スタイル食が採り上げられ、その構成食品の1つにパスタが選ばれたことを歓迎し、パスタが野菜や豆類、脂肪が少なく心臓に負担をかけない魚や一不飽和油、抗酸化剤に富むトマトソースと蛋白質が濃縮されているチーズ、および家禽や脂肪の少ない赤身肉のような栄養密度が高い食品をパートナーとして食べることが多いので、健康で望ましい食事の理想的なベースになるという。

一般財団法人 製粉振興会 参与 農学博士  長尾 精一

*今までに、掲載したものは「メニューリスト」の「バックナンバー」の項目に入っていますので、ご覧ください。