小麦・小麦粉に係る話題

小麦粉・地域の食文化料理

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 ○ 上州の焼きまんじゅう   ―からっ風が生んだ庶民の味―



 上州では、焼きまんじゅうの香ばしい香りを知らない人はいない。上州は二毛作地帯として、小麦の生産量が多い。この小麦を原料として考えられたのが焼きまんじゅうである。
 「名物は、その土地の気候風土、人柄によって発生する」といわれるが、焼きまんじゅうはこの言葉にぴったりのものである。
 群馬県の平野部は、南以外の三方を山で囲まれているため気温差が大きく、降雨量が少ない。県都・前橋においては、全国の県庁所在地中で年間日照時間がもっとも長い。冬期に山々から吹き降ろす強い北風は乾燥していることから、からっ風と呼ばれている。このような乾燥し晴天に恵まれる土地柄が、良質な小麦を豊かに育て、粉もの王国を築いてきた。



 上州の粉ものの中でも独特なのが、焼きまんじゅうである。安政四年(1857)に原嶋屋総本家の一代目がつくりだしたといわれている。「小麦粉ともち米を原料に、どぶろくを種(発酵剤)としてまんじゅうをつくった。どぶろくを種にして発酵させたところが従来のものと違って珍しかった。しかし、ただの白いまんじゅうではおもしろみがないと考え、長い竹串にさし、味噌をつけて焼いて売り出した。」焼きまんじゅうは、このときがはじまりという。小麦粉をこねる水は地下水を使う。地下水を使うと口当たりのよい弾力性のある「すまんじゅう」ができる。すまんじゅうという名前のいわれには、三通りの解釈がある。まず、香りに酸味があり、酸っぱいので「すまんじゅう」。割ると中にすが入っているので「すまんじゅう」。また、あんこも何も入らないので「素まんじゅう」という意味があるといわれている。長い串にすまんじゅうをさし、たっぷりの味噌だれをつけて横食いする様子は、上州人と相性がよいようである。



    
     こんがりと焼けて辺り一面にはいい匂いが漂います。
   (写真は「GO! Isesaki」ホームページより)


 恒例の初市では焼き饅祭(やきまんさい)もあわせて行われ、大串の焼きまんじゅうと長串の焼きまんじゅうがつくられる。直径55センチもある巨大な大串まんじゅうが奉納され、吉文字の筆入れ後、箒のようなはけで味噌をぬって参拝者に焼きたてが振る舞われる。香ばしい食欲をそそる匂いがあたりに漂い、口のまわりを気にしながらほおばる子どもたちの姿が、祭りの気分をいやがうえにも盛り上げる。今年の6月には2008個ものまんじゅうを並べた長串焼きまんじゅうに挑戦するイベントもあり、群馬県人の心を沸き立たせるものとなっているようだ。
 子どもの頃に食べてよくなじんだ食べ物は忘れることがない。小麦の匂いのするまんじゅうとこげた味噌のあの素朴な味は、町なかで香ってきても、ふと食べたくなるものだ。なじみの店なのだろう、談笑しながら焼き上がるのを待つ姿を見かけることがある。ぶっきらぼうで豪快な焼きまんじゅうは、お世辞にも食べやすいとはいえないが、いつも笑顔とともに思い出されるものなのかもしれない。その土地で育った小麦から豊かな粉食の文化が生まれ、上州の人々によってはぐくまれ、それは今も健在である。

(群馬県製粉工業協同組合)