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小麦について

はじめに

 ここでは、小麦粉の原料となっている小麦について、国内産や外国産の生産や流通の状況、国の制度、食生活に占める状況などを整理していますので参考にしてください。
 まず最初に、製粉企業に引き渡されるまでの小麦の流れや制度について、国内産と外国産に分けて説明します。

1 小麦(国内産・外国産)の流通と制度について  <製粉企業に引き渡されるまで>

 小麦は、国内需要量の約9割を外国産小麦の輸入で賄っています。外国産小麦については、国内産小麦では量的又は質的に満たすことが出来ない需要分について、政府が国家貿易により、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった生産国から、商社を通じて計画的に輸入し、製粉企業などの実需者に売り渡しています。政府が大口の購入者となることで、より安定的に小麦を買い付けることが出来る制度となっています。
 このような小麦の制度は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」の一部改正により、平成19(2007)年4月1日から以下のように変わりました。
 すなわち、国内産小麦については、全量民間流通により取引されるようになり、外国産小麦については、それまでの輸入方式(一般輸入)に加えて売買同時契約(SBS)方式 が新たに導入されました。
 これらのことについて、以下の項目でもう少し詳しく説明します。

(1)国内産小麦の流通と制度

 国内産小麦については、この法律の一部改正により、政府無制限買入制度が廃止され、平成19(2007)年産からは、麦の政府買入が制度として無くなり、全量民間流通となっています。
 民間流通とは、政府を経由することなく、需要に応じた生産を計画的に促進するために、生産者及びその団体と製粉企業等の実需者が売買契約をして流通する取引方法です。
 具体的には、まず、播種前(つまり収穫の前年)に生産者団体から販売予定数量が提示され、実需者(製粉企業等)団体からは購入希望数量が提示されます。この情報に基づき、産地銘柄ごとに 、販売予定数量の約3~4割について入札(通常年2回)が行われ、残りの約6~7割については、入札で形成された価格を基本とした相対取引が行われています。この結果に基づき、生産者と実需者(製粉企業等)の間で、取引数量と取引価格について契約を結び、その契約に基づいて取引が行われます。 
 こうした入札の仕組みについては、生産者団体と実需者で構成する「民間流通連絡協議会」において協議・決定されています。
 また、入札の結果は、入札の実務を行っている(一社)全国米麦改良協会のサイト内(こちら)に公表されています。

          国内産小麦の民間流通の仕組み(契約と生産の流れ)
  出典:農林水産省資料より

(2)外国産小麦の流通と制度

 外国産小麦については、平成7(1995)年に、ウルグアイラウンド農業合意との関連で、食糧管理法に代わって「主要食糧の需給および価格の安定に関する法律」が施行され、小麦は「関税化」されましたが、政府以外の者が輸入する場合は、「関税相当量」を支払わなければならないため、実際の小麦の輸入システムは、それまでと大きな変化はありませんでした。
 しかし、この法律の一部改正により、平成19(2007)年4月1日からは、政府が輸入する食糧用の小麦については、それまでの一般の輸入方式に加え、一部の銘柄を対象として、既に米穀において導入されていた政府との売買同時契約(SBS)方式を導入することができるよう制度が加えられました。現在では、全ての国と銘柄について、この売買同時契約(SBS)方式での輸入が可能となっています。

 輸入小麦のほとんどは「一般輸入方式」によるものとなっているので、図1に、買付けから製粉企業に引き渡されるまでの大まかな流れを示してあります。備蓄については、「(4)外国産輸入小麦の備蓄制度」をご覧ください。
 また、図2は、「売買同時契約 (SBS)方式」の仕組みを示したものです。
 これら二つの方法の大きな違いは、「一般輸入方式」の場合では、政府との間の契約は、①輸入実務を担う商社と政府との契約と②輸入された小麦を購入する実需者と政府との契約の二つの契約が存在することになりますが、「売買同時契約(SBS)方式」の場合には、輸入商社と実需者が連名で政府と契約するので、政府との間の契約は一つになります。
 もう一つの大きな違いは、「一般輸入方式」の場合では、現在、アメリカ、カナダ、オーストラリアの3ヵ国・5銘柄が輸入されているのですが、「売買同時契約(SBS)方式」の場合には、どこの国からでも、どの銘柄でも輸入することが可能となっています。
 なお、SBSは、Simultaneous Buy and Sell の頭文字をとったものです。
 
  出典:農林水産省資料より
 
  出典:農林水産省資料より

(3)外国産小麦の政府売渡価格の制度

 また、外国産小麦の政府売渡価格は、この法律の一部改正により、今まで政府が年間固定の売渡価格を定める標準売渡価格制度が廃止され、過去の一定期間における輸入価格の平均値に、マークアップ(政府管理経費および国内産小麦の生産振興対策に割り当てる経費)を上乗せした価格で売り渡す「相場連動制」に移行しました。
 従って、小麦の国際穀物相場・海上運賃や為替レートなどの動向に連動して、売渡価格が変動することとなりましたが、買付価格の平均額を基準とすることで、小麦の国際相場に大きな変動があった場合でも、売渡価格への影響が緩和されることになります。
 現在、一般輸入方式で輸入されているのは、アメリカ産3銘柄とカナダ産、オーストラリア産それぞれ1銘柄の合計5銘柄となっており、その政府売渡価格は年2回(4月と10月)改定されています。

  ※ 5銘柄:アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW)
        アメリカ産ハード・レッド・ウィンター(HRW)
        アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)
        カナダ産・ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)
        オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW)

 最新の外国産小麦の政府売渡価格は、下記の(5)にある農林水産省のプレスリリースをご覧ください。(過去の政府売渡価格のプレスリリースは、農林水産省ホームページの こちら のページ内にある「輸入麦の売渡価格について」に掲載されています。)

(4)外国産輸入小麦の備蓄制度

 更に、平成22(2010)年10月からは、輸入麦の売り渡しをより効果的に運営する観点から、国が行っていた配船及び備蓄を民間に任せ、製粉企業への引き渡しも国の検収終了後直ちに引き渡すという「即時販売方式」が導入されました。
 具体的には、製粉企業が2.3か月分の外国産小麦の備蓄を行った場合には、国が1.8か月分の保管経費を助成しています。また、不測の事態が生じた場合には、国は、製粉企業に対して、備蓄している小麦の取り崩しの指示等を行います。

(5)最新の外国産小麦の政府売渡価格(農林水産省公表資料)

 農林水産省は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号)第42条 第2項」に基づき売り渡す輸入小麦の令和6年4月期の政府売渡価格を決定しました。

政府売渡価格の改定内容

 令和6年4月期(令和6年4月以降)の輸入小麦の政府売渡価格は、直近6か月間の平均買付価格を基に算定すると、5銘柄加重平均(税込価格)で67,810円/トン、0.6%の引下げとなります。
 なお、日米貿易協定及びTPP11協定に基づき、米国・カナダ・豪州産小麦については、マークアップの引下げが適用されています。
過去のバックナンバーは 農林水産省>麦の需給と価格について>輸入麦の売渡価格について に掲載されています。

              輸入小麦の政府売渡価格の推移(5銘柄加重平均)

2 小麦の消費について

 日本で1年間に消費される食糧用の小麦の量(飼料用を除く国内消費仕向量)は約580万トン程度で、短期的な変動はありますが、中期的には安定的に推移していました。しかしここ4~5年は減少傾向にあり、令和3年度はコロナ等の影響もあって、約554万トンになっています。
 これを国民1人当たりの小麦消費量でみると、年間約31~33kgで、総人口がやや減少に転じている中でも、近年は安定的に推移しています。(農林水産省食料需給表)
 下記のグラフは、米と小麦の1人1日当たりの供給純食料の推移を示したものです。コメの消費量(供給純食料)は、次第に減少してきましたが、小麦については横ばいで推移してきていることが分かります。
 同じ主食なのに、どうしてこのような違いが生じたのでしょうか。様々な要因があるといわれていますが、一つには、小麦は小麦粉という「粉」に加工されたうえで、さらにパン、ラーメンやうどん等のめん、お菓子、お好み焼きやたこ焼きといった食品に加工されますので、食生活の多様化という消費者のニーズにマッチされてきたことがあると考えられています。
  資料:農林水産省「食料需給表」

 また、わが国の小麦消費量のうち、国内の生産量は年によって変動しますが約15%で、残りは輸入でまかなわれています。つまり、カロリーベースでの食料自給率は16%程度となっています。(農林水産省食料需給表)
 国別の輸入割合は、年によって変動はありますが、アメリカが約43%、カナダが約38%、オーストラリア約19%となっています。(財務省貿易統計)

3 国産小麦の生産状況と課題

 ここでは、国内における小麦生産の作付け面積や生産量の状況や、生産にあたっての様々な課題、さらには、その課題解決に向けての技術開発などの動きを取りまとめました。
 なお、これらの国内生産に関する情報については、農林水産省が作成している「麦をめぐる最近の動向について」で、更に詳しい情報(生産費などの生産性、課題、新たな技術や品種など)が掲載されておりますので、こちらをご覧ください。

(1)国内の小麦生産の概況

 国内で生産されている小麦の作付面積は約22万haで、国内の耕地面積全体が年々減少している中でも、横ばいで推移しています。
 これを地域別にみてみますと、約6割を北海道が占めています(生産量でも6割強が北海道)。都府県では、地域別にみると、福岡県、佐賀県、熊本県を中心とした九州が17%、群馬県、埼玉県、茨城県を中心とした関東・東山が9%、愛知県、三重県を中心とした東海が8%となっています(令和4(2022)年産)。
 国産小麦は、北海道においては、畑作の輪作体系を支える基幹作物となっていますし、都府県においては、水田作の転作・裏作作物として、産地の作付体系を維持するための重要な品目となっています。

          国産小麦の作付け面積と収穫量の動向(北海道と都府県別)


          国産小麦の作付け面積に占める地域別の割合(令和4年産)

(2)国内の小麦生産をめぐる諸課題

 このように畑作地帯でも水田地帯でも重要な役割を担っている国産小麦ですが、生産面と利用面の両面で、様々な課題があります。
 最も大きな課題は、農業生産の宿命ではありますが、収穫期の降雨等、天候の影響により単収の年次変動が大きく、収量が安定しないということです。
 特に、都府県では、収穫時期が梅雨と重なるため、降雨の影響を受けやすくなっています。このことに加えて、上記でも言及したように、都府県においては、水田作の転作・裏作作物としての重要な品目となっていますから、水田の排水対策が進んでいるかどうかということの影響も受けてしまいます。
 また、国内産の小麦は外国産の小麦に比べて、年や地域によって収穫された小麦に含まれるタンパク含有量の振れが大きい、という品質面も課題となっています。先ほどの降雨の影響は、収穫量だけでなく、タンパク質の含有量が減少するという品質にも影響しています。
 これらの課題は、国産小麦を利用する製粉企業にとっては、製品となる小麦粉の品質や数量が安定しないという問題に直結しますので、小麦粉を利用するパンや製麺の事業者も含めて、関係業界全体の大きな課題となっています。

(3)課題の解決に向けた動き

 しかしながら、最近ではこれらの国内生産の課題の解決・改善に向けた取り組みが加速しています。
 一つには、令和元(2019)年の小麦の作付け面積の約2割を、平成20(2008)年以降に新たに開発された新品種が占めるなど、 近年、加工適正等に優れた優良な新品種が開発され、産地での導入・普及が進んでいることです。(平成19(2007)年に開発された「きたほなみ」の作付け面積割合42%を加えると、新たな品種の作付け割合は約6割に達します。)
 地域別には、北海道、関東、東海地方において品種転換が進んでいます。また、用途別では、パン・中華めん用の新品種の開発・導入が進み、作付け面積が飛躍的に増加しました。日本麺用の品種では、実需者が求める外国産(ASW)並みの品質を持つ品種も開発されています。
 こうした動きを受けて、例えばですが、福岡県では、平成20(2008)年にラーメン専用品種「ちくしW2号」を育成して、「ラー麦」というロゴマークを作成し、このロゴマークは、ラー麦を使用したラーメンだけに使えるようにして、地域ぐるみでブランド化に取り組んでいます。また、うどんで有名な香川県では、讃岐うどんに適した「さぬきの夢2000」、「さぬきの夢2009」を育成し、「さぬきうどん」のブランド化を推進しています。
 このような品種開発以外でも、農地の基盤整備を行い排水対策を進めたり、農地の集約化・団地化をしてコスト削減に取り組んだり、衛星情報やスマートフォンなどを活用するなどの技術も開発されてきています。 
 ただ、こうした新たな品種であっても技術であっても、天候の影響などには万能ではありませんので、年や地域による収穫量の変動やタンパク含有の振れが大きいといった課題は依然として残ってしまいます。このため、引き続き、行政・研究者・生産者・実需者が一緒になって、品種改良や生産技術等の開発とこれらの生産現場への普及といった努力が欠かせません(新しい品種や技術は生産者にとっても未知の部分がありますので、多くの生産者が新たな品種や技術に慣れるという普及の努力も重要です) 。
 更に詳しくお知りになりたい方は、農林水産省が作成している「麦をめぐる最近の動向について」をご覧ください。
              平成20年以降に育成された新品種の普及状況
  出典:農林水産省資料より

4 アメリカ、カナダ、オーストラリアの小麦事情

 ここでは、国内需要の約9割を占める外国産小麦のうち、特に輸入量が多いアメリカ、カナダ、オーストラリアの主な産地を紹介します。

(1)アメリカ

   出典:農林水産省作成資料
<参 考>
 現在、政府が一般輸入方式で買い入れているアメリカ産の銘柄は、1(5)にあるように、ウェスタン・ホワイト(WW)ハード・レッド・ウィンター(HRW)ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)の3銘柄となっており、アメリカの区分とやや異なっていますので、両者の関係を以下に整理してみましたので参考にしてください。
 なお、天候の影響を受けて小麦の品質が大きく変動するような場合には、若干の基準の修正が行われる場合があるほか、国内消費のし好の変化を受けて基準の見直しが行われたりしていますので、あくまでも近年の標準的な場合であるとご理解ください。

〇 ウェスタン・ホワイト(WW) 
  ソフトホワイト(SW)小麦にホワイトクラブ(WC)小麦を 10%以上混合したものを指しますが、日本が輸入しているのは、ホワイ
 トクラブ(WC)小麦を 20%以上混合した WW小麦であり、タンパク質の含有量は 10.5%以下のものです。より柔らかな食感となる
 ホワイトクラブ(WC)の含有率が高いものが菓子メーカーなどから求められているためです。
〇 ハード・レッド・ウィンター(HRW)
  日本が輸入しているのは、主としてモンタナ州等北部の産地のもので、タンパク質含有量 11.5%以上 ( セミハード、略称 SH)のものです。
〇 ダーク・ノーザン・スプリング(DNS) 
  日本が輸入しているのは、ハード・レッド・スプリング(HRS)のうち、硝子質粒が 75%以上の ダーク・ノーザン・スプリング 
 (略称DNS)のもの、或いは 同25%以上 75%未満の ノーザン・スプリング(略称NS)のもので、これらをダーク・ノーザン・スプリング(DNS)と日本では称しています。

 なお、日本向け小麦のほとんどが、PNW(パシフィック・ノースウェスト)と称される西海岸北部の港から輸出されています。また、米国東部で生産されているソフト・レッド・ウィンター(SRW)は、米国内では主に製菓用・飼料用ですが、日本はほとんど輸入していません。

(2)カナダ

(3)オーストラリア

5 世界の小麦生産と貿易について

 ここでは、世界の小麦の生産や貿易の状況について、農林水産政策研究所が公表している資料から抜粋して掲載していますので参考にしてください。
 更に詳しい情報をお知りになりたい方は、農林水産省サイトの「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」をご覧ください。下記のオリジナルの資料のほか、小麦の中長期的な生産や貿易の見通し、さらにはコメや大豆、トウモロコシなどの情報も併せて掲載されています。
                                                                  世界の小麦需給と貿易の動向


                    2002年の小麦貿易のフロー図



                    2021年の小麦貿易のフロー図
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